奮龍 (ミサイル)

奮龍（ふんりゅう）

奮龍は、第二次世界大戦末期、1944年（昭和19年）から1945年（昭和20年）にかけて大日本帝国海軍が開発していた地対空ミサイルです。アメリカ軍のB-29爆撃機に対抗する目的で開発が進められましたが、終戦により実用化には至りませんでした。

開発の経緯

1944年初頭、アメリカ軍の高度10,000mを飛行するB-29爆撃機に対抗するため、海軍艦政本部第四部の吉田技術少佐が地対空ミサイルの開発を発案しました。同年7月2日には、第四部首脳陣に対し「自動追尾噴進弾」の説明会が開催されました。

開発にあたり、当初は第一部（砲、火薬担当）の協力を得る予定でしたが、困難であったため、第四部は艦政本部の研究機関である海軍技術研究所に吉田少佐が通うことを許可し、本格的な開発が始まりました。

わずか10ヶ月後の1945年（昭和20年）4月25日には、高松宮宣仁親王臨席のもと、浅間山で特型噴進弾二型の最初の発射実験が行われました。この実験では無誘導で発射され、飛行特性の調査が行われました。2回目以降の実験では無線操縦装置が搭載され、二型は目視による無線操縦で左右旋回を繰り返した後、目標地点から20m離れた場所に着弾しました。命中には至らなかったものの、2回目の試験は成功とみなされました。

その後、十数基の試作弾が試験され、6月中旬には宣仁親王の裁可により、特型噴進弾四型に「奮龍」の愛称が与えられました。7月の試験でも無線操縦に沿って良好な機動性を示しましたが、速度が遅く左右に振動するという欠点が指摘されました。

四型は伊豆半島の施設で三菱と空技廠の技術者によって設計され、より先進的な誘導装置を備えていました。ロケットエンジンは、長崎兵器製作所で桜花に搭載する予定で開発され、不採用となった液体燃料ロケットエンジン「特呂二号原動機」を流用し、燃焼室を改良することで実用化の見通しを立てました。しかし、他の部品の完成を待つ間に終戦を迎え、8月16日に予定されていた四型の最初の発射実験（エンジンの地上試験という説もあります）は中止となりました。試作は打ち切られ、一切の資料は焼却処分されました。

設計

誘導装置の予備実験として「特型噴進弾二型」（奮龍二型）が製作され、本命である「特型噴進弾四型」（奮龍四型）の実用化を目指していました。

二型と四型の誘導装置の研究開発には、「テレビの父」と呼ばれる高柳健次郎と、日本放送協会（NHK）が関わっていました。この時のVHFによる誘導ビーコン送受信技術が、後のテレビジョン実用化へと繋がっています。また、後に日本電子を設立する風戸健二も開発に参加していました。

各型

奮龍一型

地対艦誘導弾である「特型噴進弾一型」(奮龍一型)が計画されました。誘導方式は手動指令照準線一致誘導方式で、弾頭は400kgでした。一式陸上攻撃機からの投下試験が実施されています。

奮龍二型

「特型噴進弾二型」(奮龍二型)は、ダブルベース火薬の固体燃料ロケットを使用し、全長2.4m、本体直径30cm、全重量370kg、最高速度845km/h、到達高度5,000mでした。風洞実験の結果、円筒形で中央にエレボンを備えた4枚の木製の主翼と、後部に4枚の安定翼を備えた機体形状が選定されました。80°の角度で発射され、エンジンの推力は2.4kNで3.5秒間作動しました。誘導装置は、弾頭の後部にジャイロスコープ2基とサーボ機構を搭載し、サーボモーターに連動する十字翼で飛行中の誤差を自動修正するようになっていました。

奮龍三型

「特型噴進弾三型」(奮龍三型)は、二型を基に液体燃料ロケットエンジンを備えた対空誘導弾として構想されましたが、実機は製造されませんでした。

奮龍四型

「特型噴進弾四型」(奮龍四型)は、80%過酸化水素と80%水化ヒドラジンとメタノールを推進剤に用いる推力15kNで120秒間作動する特呂二号原動機を備える液体燃料ロケットでした。全長4.0m、本体直径61cm、全重量1900kg、最高速度1,099km/h、到達高度は15,000mでした。誘導装置として、ビームライディングの一種であるTVM式誘導装置が搭載され、1,000MHz帯の5チャンネルが使用されました。4チャンネルはピッチ軸とロール軸の制御に、第5チャンネルは指令爆破に使用されました。四型も二型と同様に弾頭の後部にジャイロスコープ2基とサーボ機構を搭載し、エレボンを備えた2枚の主翼と2枚の安定翼はサーボモーターに連動して飛行中の誤差を自動修正するようになっていました。エンジンの推力が計算上不足していたため、45°の角度で発射し、空気力学的な効果で揚力を発生させる設計でした。

仕様

(原文に仕様に関する詳細な記述がないため、省略)