宇敷赳夫

宇敷赳夫（うしき たけお）は、1891年（明治24年）に兵庫県で生まれた土木技術者です。台湾総督府の技師として、日本統治時代の台湾において、数多くの公共建築物の設計・建設に携わりました。彼の業績は、台湾の近代化に大きく貢献したと言えるでしょう。

生涯と経歴

宇敷赳夫は、兵庫県姫路市で生まれ、神戸市に本籍を置きました。兵庫県立第一神戸中学校（現在の兵庫県立神戸高等学校）を卒業後、名古屋高等工業学校（現在の名古屋工業大学）建築科に進学。1916年（大正5年）に卒業すると、同年8月に台湾総督府に雇われ、民政部土木局営繕課に勤務しました。その後、1917年（大正6年）には同局の技手となり、1923年（大正12年）には新竹州内務部土木課技手、営繕係長に昇進。同年、台湾総督府州技師となり、高等官七等、新竹州土木技師を兼任しました。以降、台南州内務部土木技師、総督府交通局技師などを歴任し、鉄道部改良課工事係、松山建築派出所主任、鉄道部工務課、鉄道部自動車課など、様々な部署でその才能を発揮しました。

1941年（昭和16年）には工業研究所技師、高等官二等に昇進しましたが、同日付で依願免官。総督府技師としての活動を終えました。

また、宇敷は技術者としてだけでなく、当時の民間組織である『台湾建築會』の常議員も務めており、井手薫など他の著名な建築家・技術者たちと共に活動していました。

受章と位階

宇敷は、その功績が認められ、多くの位階や勲章を受けています。位階としては、従七位から始まり、正七位、従六位、正六位、従五位、正五位と昇進し、最終的には従四位に叙せられました。勲章としては、勲六等瑞宝章、勲五等瑞宝章、勲五等双光旭日章を受章しています。また、紀元二千六百年祝典記念章も授与されています。

主な作品と設計思想

宇敷の設計した建築物は、関東大震災（1923年）や新竹台中地震（1935年）といった大地震の経験を踏まえ、耐震性を重視したものが多く、当時の設計思想の変化が反映されています。木造建築から鉄筋コンクリート造への移行期において、簡素でありながら機能的なデザインが特徴です。

彼の主な作品としては、以下のようなものが挙げられます。

1921年頃 - 嘉義郡役所右翼部（現存せず）
1925年 - 新竹州図書館（市定古蹟。現在は新竹市立図書館を経て新竹県立図書館）
1928年 - 北港公会堂（現存せず。戦後は中山堂を経て跡地は中華郵政北港郵局）
1933年 - 2代目嘉義駅（市定古蹟）
1933年 - 2代目二水駅（彰化県定古蹟申請中）
1934年 - 2代目新営駅（現存せず）
1935年 - 松山鉄道工場（2代目台北鉄道工場、戦後の台北機廠、国定古蹟）
1936年 - 2代目台南駅（国定古蹟）
1941年 - 3代目台北駅（現存せず）
1943年 - 専売局嘉義支局北社尾葉菸草再乾燥工場（市定歴史建築。戦後の嘉義菸葉廠）

これらの建築物は、当時の台湾の建築技術を象徴するものであり、現在でもその一部が歴史的遺産として保存されています。

震災復旧と鉄道関連施設

宇敷は、特に鉄道関連施設の再建に力を注ぎました。鉄道部工務課の小山三郎の指揮下で建築係長として、以下の駅舎の再建に携わったとされています。

2代目泰安旧駅（台中市市定古蹟）
銅鑼駅
* 造橋駅

これらの駅舎は、震災からの復興を象徴する建築物であり、宇敷の技術力が発揮された代表例と言えるでしょう。

まとめ

宇敷赳夫は、台湾の近代化に貢献した重要な技術者の一人です。彼の設計した建築物は、当時の社会情勢や技術革新を反映しており、台湾の歴史を語る上で欠かせない存在です。彼の業績は、今もなお多くの人々に影響を与え続けています。

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