岩戸鉱山の詳細
岩戸
鉱山は、
鹿児島県枕崎市別府に位置する
金鉱山です。市街地中心部から東へ約5キロメートルの丘陵地にあり、春日
鉱山株式会社と有限会社宮内赤石鉱業所が共同で操業を行っています。この
鉱山は、南薩地域特有の地質構造を持つ高硫化型熱水性
金鉱床を採掘対象としています。
地質の特徴
岩戸
鉱山の鉱床は、南薩型
金鉱床として知られ、周辺の春日
鉱山や赤石
鉱山と類似の地質構造を持っています。
鉱山は標高130メートルから190メートル程度の丘陵地に位置し、基盤となるのは
ジュラ紀の
四万十層群(川辺層群)の
砂岩と
頁岩の互層です。この上に不整合に南薩層群と南薩中期火山岩類が重なっています。
南薩層群は主に輝石
安山岩の
溶岩と
火山砕屑岩から成り、岩戸
鉱山周辺では上部が地表に露出しています。一方、南薩中期火山岩類は輝石角閃石
安山岩、
凝灰角礫岩、
凝灰岩などで構成されています。同じ南薩型
金鉱床でも、岩戸
鉱山と春日
鉱山は南薩層群上部の火山岩に鉱床が胚胎するのに対し、赤石
鉱山はより新しい南薩中期火山岩類を母岩とする点が異なります。また、
枕崎市内の鹿篭
鉱山は、
四万十層群の
砂岩・
頁岩中に生成した含
金銀石英脈鉱床であり、これらの
鉱山とは異なる特徴を持っています。
さらに、この地域には約2万5千年前の阿多火砕流による溶結
凝灰岩が低地を埋めるように分布し、その上位にはシラスと呼ばれる軽石
凝灰岩が堆積しています。
鉱床の形成
岩戸
鉱山の鉱床は、熱水活動によって形成された塊状の岩
金銀珪化岩から成ります。鉱床を含む珪化岩体は、南北方向の断面がキノコのような形状をしており、東西方向に長く伸びた構造をしています。
鉱床の母岩は、
凝灰角礫岩や
凝灰岩などの火山砕屑物です。熱水変質を受けた中心部は珪化帯となり、
安山岩由来の珪化岩では輝石や斜長石の斑晶が、
凝灰角礫岩由来の珪化岩では礫や軽石が溶脱して空隙が形成されています。珪化帯を取り巻くように弱珪化帯があり、粘土鉱物を多く含んでいます。さらに外側には粘土化変質帯、プロピライト化帯が続きます。南薩型
金鉱床では、最初に熱水による珪化作用で空隙が形成され、その後、この空隙に
金や銀が鉱化作用によって沈殿し、鉱床が形成されました。この鉱化作用は、主に珪化帯に限られており、周辺の変質帯ではほとんど見られません。
岩戸
鉱山で産出される明礬石のカリウム-アルゴン法による年代測定では、470万年前±100万年前という結果が出ており、春日
鉱山よりも新しく、赤石
鉱山よりも古いとされています。この事実は、火山活動と鉱化作用が西から東へ移動したことを示唆しています。
歴史
岩戸
鉱山の歴史は、1932年(昭和7年)に宮内敬太郎氏が鉱業権を取得し、坑内掘りと
露天掘りによる採掘を開始したことから始まります。1938年(昭和13年)には日本鉱業と協力して含
金珪酸鉱を佐賀関製錬所に販売するようになりましたが、1943年(昭和18年)に
金鉱業整備令により帝国鉱業開発に設備を接収され、一時閉山となりました。
その後、1964年(昭和39年)に三井串木野
鉱山株式会社が探鉱を再開し、翌1965年(昭和40年)には、鉱業権者であった宮内敬久氏との間で租鉱権を設定して操業を開始しました。当初は露頭周辺を剥土して採掘する
露天掘りと坑道掘りを併用し、1978年(昭和53年)には年産約7万7000トン、平均
金品位4.4グラム/トン、平均銀品位7グラム/トンで採掘していました。産出された高品位の
金鉱石は、串木野
鉱山で製錬されました。
1994年(平成6年)からは、春日
鉱山に珪酸鉱を販売するようになり、2004年(平成16年)には、有限会社宮内赤石鉱業所が操業管理を行うようになりました。2008年(平成20年)以降は、有限会社宮内赤石鉱業所と春日
鉱山株式会社が共同鉱業権者となり、春日
鉱山株式会社が春日
鉱山と共に操業を管理しています。これ以前も岩戸
鉱山の産出鉱石は春日
鉱山が買鉱していましたが、操業管理の一貫化によってより安定的な操業が可能となりました。2011年(平成23年)時点で、両方の
鉱山を合わせて直轄21名、協力会社6 - 8名で操業しており、岩戸
鉱山は月産約9000トンを誇ります。
操業状況
現在の岩戸
鉱山では、
露天掘りによる採掘が行われています。クローラードリルで穴を掘り、アンホ爆薬またはエマルション爆薬を装填して
発破した後、ブレーカーで鉱石を小割し、
油圧ショベルで
ダンプカーに積み込みます。採掘された鉱石は春日
鉱山に運ばれ、原鉱ビンに投入されます。その後の作業は全て春日
鉱山で行われ、鉱石の破砕、船積み、出荷が行われます。
1938年(昭和13年)から2007年(平成19年)までの累計産出量は約260万トンで、
金の平均品位は1トンあたり3.7グラム、累計産
金量は約9.6トンと計算されています。2008年(平成20年)の資源量評価によると、岩戸
鉱山は今後20年以上の安定操業が可能であると評価されています。
岩戸
鉱山は、その歴史と地質的特徴、そして周辺
鉱山との連携により、安定的な操業を続けている
鉱山です。