張平 (後趙)

張 平（ちょう へい）

張平は、五胡十六国時代に代郡出身の人物で、後趙に仕え、後に并州で独自の勢力を築きました。彼の生涯は、激動の時代を象徴するような、裏切りと寝返りの連続でした。

生涯

元々は後趙の石虎に仕え、その部将として頭角を現しました。後趙末期には并州刺史に任じられています。350年、前燕の趙榼が300家余りを率いて後趙から離反すると、張平は彼らを迎え入れました。351年には、冉閔が後趙を乱すと、前秦に降伏の使者を送り、苻健から大将軍・冀州牧に任じられます。しかし、352年に冉魏が滅亡すると、今度は前燕にも臣従し、并州刺史に任じられました。

356年、姚襄が平陽に到来すると、前秦の将としてこれを撃破。しかしその後、姚襄と講和し、兄弟の契りを結び兵を退きました。翌357年には東晋に降伏の使者を派遣し、并州刺史に任じられています。この頃、張平は新興・雁門・西河・太原・上党・上郡の地を支配下に置き、領有する砦は300を超え、胡人・漢人問わず10万戸余りを従え、官職を独断で任命するなど、その勢力は拡大の一途を辿りました。そして、前燕・前秦に対抗するため、自ら并州刺史を号しました。

357年10月、張平が秦との国境を荒らし回ると、苻堅は晋公苻柳を派遣して蒲坂の防衛を命じました。358年1月、前燕の馮鴦が上党に拠って張平に帰順しますが、すぐに離反。苻堅は自ら兵を率いて討伐に乗り出し、先鋒の鄧羌は騎兵5千を率いて汾水に進駐します。苻堅が銅壁まで軍を進めると、張平は全軍を挙げて迎撃に出ますが、養子の張蚝が鄧羌に生け捕られ、苻堅に降伏を願い出ました。苻堅はこれを受け入れ、張平を右将軍に任じ、配下の3千戸余りを長安に移住させました。

同年9月、前燕の司徒慕容評が并州に侵攻し張平を攻めると、并州の砦百余りが前燕に降伏。さらに、張平配下の将軍たちも次々と前燕に降伏しました。張平は3千の兵を伴って平陽へ逃走し、前燕に降伏を請うことになります。

361年9月、前燕の平陽を攻撃し、将軍段剛・韓苞を討ち取り、雁門を攻めて太守の単男を討伐するなど再び反旗を翻しますが、その後前秦から攻撃を受けたため、前燕に謝罪して救援を請いました。しかし、前燕は張平の度重なる裏切りを信用せず、救援を送らなかったため、張平は遂に敗れて殺されました。

子

養子の張蚝は、張平の死後も前秦に仕え、数々の武功を挙げ、晩年には朝廷の重職を歴任しました。

逸話

張平は、飛燕と名付けられた小さなロバのような犬を飼っていました。ある夜、飛燕が突然役所の屋根の上に昇り、張平のような声をあげたため、張平はこれを不吉に感じたといいます。この事件の後、張平は前燕や前秦に敗れ、勢力が衰退していったと伝えられています。

参考文献

『晋書』巻112・113
『資治通鑑』「晋紀」巻100 - 106
* 『十六国春秋』巻42

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