志村年子

志村年子（しむら としこ）

日本のメゾソプラノ歌手、オペラ歌手として知られる志村年子は、1942年1月1日に東京都で生まれました。その卓越した歌唱力と表現力は、国内外の舞台で高く評価されています。

経歴

音楽家としてのキャリアは、桐朋学園大学音楽学部卒業から始まりました。在学中は畑中良輔、畑中更予、佐々木成子といった著名な指導者に師事し、声楽の基礎を築きました。その後、ドイツのフランクフルト州立音楽大学に留学し、ゲルトルーデ・ピッツィンガー、オットー・ブラウンの指導を受けました。厳しいドイツの国家試験（コンサートエグザメン）に合格し、「最優秀賞」を得て卒業したことは、彼女の実力を証明するものでしょう。

ドイツ各地での演奏活動を経て、1971年に二期会公演のオッフェンバック『ホフマン物語』でオペラデビューを飾りました。アントニアの母の声という重要な役どころを演じ、オペラ歌手としての確固たる地位を確立しました。その後、ワーグナー、モーツァルト、ヴェルディなど、幅広いレパートリーを誇り、数多くのオペラ作品に出演しました。その出演数は、昭和音楽大学オペラ情報センターの記録だけでも41に及びます。

1995年には藤沢市民オペラでニコライ『ウィンザーの陽気な女房たち』ライヒ夫人を、1996年には水戸芸術館ACM劇場と東京室内歌劇場で原嘉壽子『さんせう太夫』瞽の老婆を、1999年には新国立劇場で原嘉壽子『罪と罰』母を演じるなど、現代作品にも積極的に取り組んでいます。

1977年にはNHK委嘱のラジオ合唱劇、三木稔『タロウ』で母ちゃん役を演じ、1989年には團伊玖磨オペラ『ちゃんちき』の渡欧公演に参加し、東欧4カ国で演唱しました。

コンサート活動も活発で、小澤征爾指揮の新日本フィルハーモニー交響楽団とベートーヴェン『第九』で共演したほか、名古屋ヘンデル協会では『メサイア』のソリストを務めました。また、エルンスト・ヘフリガーとの共演で、バッハの『マタイ受難曲』『ヨハネ受難曲』を歌い、その実力を示しました。新星日本交響楽団との共演も多く、『第九』やドヴォルザークの『スターバト・マーテル』など、数々の名曲を披露しました。東京コール・フリーデ演奏会での『第九』では、渡辺暁雄や三石精一といった著名な指揮者と共演しています。

リサイタル活動にも力を入れており、1970年のデビューリサイタルを皮切りに、1978年には毎日ゾリステンで「志村年子メゾソプラノ独唱会」を開催しました。また、夫である志村安英（東京音楽大学助教授）との共演による「志村年子が歌うブラームス」、「2人のマーラー」、歌曲コンサートなどの企画にも積極的に取り組みました。2000年には「水戸芸術館開館10周年記念事業シリーズ『日本の歌・この100年』」に参加し、日本の歌曲の発展に貢献しました。

後進の指導にも熱心で、渡辺理恵、山口万里子、山﨑淑子、中島麻紀子など、多くの門下生を育てています。1997年には「第2回梅の里音楽祭＆『日本の歌』スプリングセミナー '97」で講師を務め、後進の育成に尽力しました。

受賞歴

1977年度には、そのオペラにおける活躍が評価され、第5回ウィンナーワルド・オペラ賞（のちのジロー・オペラ賞）を受賞しました。

ディスコグラフィー

志村年子は、数多くのCDをリリースしており、その歌声は今もなお多くの音楽ファンに愛されています。

CD アルマ・マーラー 残された歌曲・日本の名歌 志村年子：メゾソプラノ 志村安英：ピアノ フォンテック
CD 2人のマーラー、グスタフとアルマの世界 孤独しかし自由 志村年子：メゾソプラノ 志村安英：ピアノ フォンテック
CD2枚組 イタリア歌曲集 ソプラノ：松本美和子 メゾソプラノ：志村年子 テノール：永田峰雄 ピアノ：谷池重紬子 監修：畑中良輔 フォンテック
CD7枚組 オリジナル盤による服部良一全集 オムニバス CD6 交響詩曲『ぐんま』アルトソロを担当 日本コロムビア
CD2枚組 山田一雄の芸術 －マーラー交響曲第2番『復活』中沢桂 志村年子 京都市立芸術大学音楽学部合唱団 ベリョースカ合唱団 京都市交響楽団 ビクターエンタテインメント
CD2枚組 日本のうた 90年の系譜 オムニバス ソニー・ミュージックレコーズ
CD 合唱名曲コレクション 大島ミチル 組曲『御誦』指揮：北村協一 AROUND SINGERS (1994) ピアノ：久邇之宜 Perc：海沼正利、榊原千菜 アルト：志村年子 東芝EMI
2CD付 独習と受験のための日本歌曲集(1) 範唱CD+伴奏CD 歌唱監修：畑中良輔 音楽之友社 ISBN 978-4276875333
* 2CD付 独習と受験のための日本歌曲集(2) 範唱CD+伴奏CD 歌唱監修：畑中良輔 音楽之友社 ISBN 978-4276875340

志村年子は、その長きにわたるキャリアを通して、日本の音楽界に多大な貢献をしてきました。彼女の歌声と音楽に対する情熱は、これからも多くの人々に感動を与え続けることでしょう。

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