志等美神社

伊勢神宮外宮摂末社と上社：志等美神社、大河内神社、打懸神社、そして上社の歴史と概要

三重県伊勢市辻久留にある志等美神社は、伊勢神宮豊受大神宮（外宮）の摂社として知られています。しかし、志等美神社の重要性は、単独の神社としての存在価値にとどまりません。本稿では、志等美神社に加え、同社地にある外宮摂社の大河内神社、外宮末社の打懸神社、そしてこれら三社を境内に包含する旧村社の上社についても詳細に解説します。

三社の特異性：神階と位置づけ

伊勢神宮に属する125社のうち、神階を有するのは志等美神社、大河内神社、打懸神社のわずか三社のみです。この事実は、これらの神社が伊勢神宮において特別な位置を占めていることを示唆しています。

概要：地理的配置と規模

これらの神社は、上社の宮域内、境内入り口の右手側に位置しています。宮域全体の面積は約700坪で、志等美神社、大河内神社、打懸神社の三社を合わせた面積は約406平方メートルです。志等美神社と大河内神社は同じ玉垣内に鎮座し、南向きに建てられた神明造の板葺の社殿を有しています。興味深いことに、三社には賽銭箱が設置されていません。

各神社の詳細

志等美神社: 外宮の摂社16社のうち第7位に位置づけられます。「蔀野井庭神社」という表記も文献に見られます。社名の由来については諸説ありますが、「しとむ」という動詞に由来し、「水に浸る」という意味を持つという説が有力です。

大河内神社: 志等美神社と同じ玉垣内に鎮座していますが、社殿は別です。外宮の摂社16社のうち第8位です。戦国時代には荒廃しましたが、その後上社の境内社である山神社となりました。社名の読み方は「おおこうち」が一般的ですが、古文書では異なる表記も見られます。

打懸神社: 外宮の末社8社のうち第4位です。戦国時代には荒廃し、上社の境内社である並社（旧称：八王子社）となりました。その際、打懸神社の祭神がそのまま並社の祭神となりました。

上社: 地域の氏神として、中島、辻久留、二俣、浦口の四地域を氏子としています。社宝としては獅子頭一頭と享保6年（1721年）寄進の太刀一振が伝わっています。境内には、稲荷神社、菅原道真を祀る上天神、伊勢津彦大神・伊勢津姫大神を祀る櫛玉宮などの社殿や、他の神社の遥拝所も存在します。1909年（明治42年）には、13の神社を合祀しています。

祭神

志等美神社、大河内神社、打懸神社の三社は、宮川による洪水から地域を守る堤防の守護神として祀られてきました。それぞれの祭神は以下の通りです。

志等美神社: 久久能智神（くくのちのかみ）―周囲の林野の神、堤防の神とも伝えられる。
大河内神社: 大山祗神（おおやまづみのかみ）―堤防の守護神。
* 打懸神社: 打懸明神（うちかけみょうじん）―「かけ」は懸税（かけちから、稲穂）を意味し、五穀豊穣の神、堤防の守護神でもある。

上社の祭神は、志等美神社・大河内神社の祭神である久久能智神・大山祗神に加え、埴安神・宇迦之御魂神を当初からの祭神とし、さらに宇迦之御魂神4座・菅原道真・天忍漁人命・誉田別命・不詳2座の9柱を合祀しています。

歴史

志等美神社、大河内神社の創建年代は不明ですが、少なくとも延暦23年（804年）の『止由気宮儀式帳』に記載されていることから、古代にはすでに祭祀が行われていたことがわかります。また、『類聚神祇本源』によると、大治3年（1128年）には、三社の神階が正五位から従四位に昇級したとされています。

戦国時代には荒廃しましたが、その後地元住民によって産土神として崇敬されるようになりました。近世には、社地の変遷や再建、改称などが複雑に絡み合いながら、現在の姿へと至っています。明治時代には近代社格制度に基づき郷社、村社へと昇格し、1883年（明治16年）には三社が現在の位置に復しました。

祭祀と祭事

志等美神社では巡回祭祀により、祈年祭、月次祭、神嘗祭、新嘗祭などが行われています。上社では、1月15日の御頭神事と7月15日の例祭が主な祭事です。

植物相と周辺環境

境内にはスギ、マキ、クスノキなどの高木や、サカキ、ネズミモチなどの低木が茂る豊かな自然環境が残されています。周辺には木材工場、公民館、郵便局などが立地しています。

交通アクセス

JR参宮線・近鉄山田線伊勢市駅、または近鉄山田線・同鳥羽線宇治山田駅から三重交通路線バスを利用し、「上ノ社」バス停下車すぐです。JR参宮線山田上口駅からは徒歩約12分です。自家用車の場合は、伊勢自動車道伊勢西ICから約8分です。ただし、付近に駐車場はありません。

もう一度検索