忠房親王

源忠房（みなもとのただふさ）：鎌倉時代後期～南北朝時代の皇族・公卿

源忠房は、鎌倉時代後期から南北朝時代にかけて生きた人物で、皇族であり公卿でもありました。順徳天皇の曾孫にあたり、父は正三位の源彦仁です。最終的な官位は無品・弾正尹でした。

生涯

当初、源忠房は外伯父である二条兼基の猶子となりました。大覚寺統の後二条天皇の時代、正安3年（1301年）に元服し、正五位下・左近衛少将に任官。翌年には従三位・左近衛中将へと異例の昇進を遂げ、公卿の仲間入りを果たします。嘉元3年（1305年）には正三位、徳治元年（1306年）には権中納言に任ぜられるなど、後二条天皇の治世下で、摂関家の子弟に匹敵するほどの速さで昇進しました。

しかし、延慶元年（1308年）に養父である二条兼基が出家し、さらに後二条天皇が崩御、持明院統の花園天皇が即位すると、翌延慶2年（1309年）に官職を辞任しました。その後、正和5年（1316年）には従二位に昇っています。

文保2年（1318年）に後醍醐天皇が即位し、皇位が大覚寺統に戻ると、文保3年（1319年）に忠房は後宇多上皇の猶子となり、親王宣下を受けました。これにより、無品ながら弾正尹に任ぜられることとなります。

元亨4年（1324年）には後宇多法皇の崩御に伴い出家し、貞和3年（1347年）に63歳で薨去しました。

親王宣下とその影響

源忠房は臣籍出身でありながら親王宣下を受けたという点で特筆されます。この事実は、平成以降の皇位継承問題において、「臣籍から皇籍に入った先例」として、旧皇族復帰の根拠の一つとして注目を集めました。

天皇の猶子となることは、皇子に準じた扱いを受けることを意味します。皇室においてこの制度が用いられたのは、『職原鈔』に忠房親王が後宇多院の猶子となった旨が記されたのが始まりとされています。ただし、「猶子」という言葉自体は漢語であり、『礼記』にもその記述が見られます。

官歴

以下は『公卿補任』に基づく源忠房の官歴です。

正安3年（1301年）12月15日：正五位下、元服、禁色昇殿。12月18日：左近衛少将
正安4年（1302年）正月5日：従四位下。4月17日：従四位上。7月21日：従三位、左少将如元
嘉元3年（1305年）正月5日：正三位
徳治元年（1306年）9月2日：左近衛中将。12月22日：権中納言
延慶2年（1309年）2月19日：辞官
正和5年（1316年）10月23日：従二位
文保3年（1319年）2月18日：親王宣下（後宇多上皇猶子）、無品。9月20日：弾正尹
元亨4年（1324年）7月29日：出家
貞和3年（1347年）7月：薨去

系譜

父：源彦仁
母：二条良実の娘
妻：二条兼基の娘
妻：小倉実教の娘
男子：源彦良
生母不詳の子女
男子：周護
女子：全仁親王室
女子：富明王室

また、四辻宮尊雅王およびその子である四辻善成について、実は忠房親王の皇子であるという説も存在します。

参考文献

『公卿補任 第二篇』吉川弘文館、1982年
『尊卑分脈 第三篇』吉川弘文館、1987年
* 日本史史料研究会監修、赤坂恒明著『「王」と呼ばれた皇族』吉川弘文館、2019年

もう一度検索