携帯基地局

携帯基地局は、無線局の一種であり、携帯局との通信を目的として陸上に設置される移動しない無線局です。携帯電話とは直接的な関係はありません。

定義

総務省の電波法施行規則では、携帯基地局は「携帯局と通信を行うため陸上に開設する移動しない無線局」と定義されています。ここでいう「陸上」には、河川や湖沼などの水域も含まれます。また、携帯移動業務は「携帯局と携帯基地局との間、または携帯局相互間の無線通信業務」と定義されています。

概要

携帯基地局は、主に船舶や航空機に搭載される携帯局と通信を行います。陸上での利用が中心の無線機は陸上移動局として免許され、それとの通信を行うのが基地局です。携帯基地局は陸上局の一種であり、通信相手は原則として事業者の携帯局に限られます。通信内容も事業者の業務用途に限定され、海岸局や航空局の代わりとして、海上交通や航空交通の管制などの安全運行に関わる用途には使用できません。

そのため、船舶や航空機との通信が業務上必要な事業者に免許が与えられます。例えば、船舶・航空機の製造・修理業者、内航海運業者、ヘリコプターを運用する警察・消防、報道機関、電力会社などが挙げられます。

業務の性質上、海岸局や航空局、陸上通信網との接続のために、固定局や他の基地局と併設されることもあります。かつて使用されていたマリネットホンも携帯移動業務であり、その親局も携帯基地局でした。

免許・登録

外国籍の者には原則として免許は与えられませんが、電気通信業務を目的とする場合は例外的に開設が可能です。5GHz帯無線アクセスシステムの携帯基地局は登録局となります。一定の技術基準を満たす無線設備を使用する場合は、簡易な免許手続きが適用され、予備免許や落成検査が省略されます。

以前は、型式検定に合格した機器が簡易免許手続きの対象でしたが、現在は適合表示無線設備が用いられています。種別コードはFPで、免許の有効期間は5年ですが、当初の免許に限り5年以内の5月31日までとなります。

用途

携帯基地局は、国家行政用（警察、海上保安）、電気用（電力会社の送電線パトロール）、放送用など、多岐にわたる用途で利用されています。

局数

無線局登録状には局数は記載されません。

通信の相手方

携帯基地局が通信できる相手は、原則として同一免許人所属の携帯局です。ただし、一部例外として、官公庁やそれに準ずる団体、同一免許人所属の陸上移動局との通信が認められる場合があります。これは、携帯移動業務の無線局が原則として同一免許人内での通信に利用されるためです。ヘリテレシステムの受信設備が受信基地と呼ばれることがありますが、受信のみを目的とするものは無線局ではないため、携帯基地局には該当しません。

旧技術基準の機器の使用

無線設備規則の改正により、旧技術基準に基づく無線設備の免許は2017年11月30日まで、使用は2022年11月30日までとされました。対象となるのは2005年11月30日までに製造された機器、またはそれ以前に型式検定に合格した機器です。ただし、新型コロナウイルス感染症の影響により、使用期限は「当分の間」延期されています。検定合格機器は、設置が継続される限り有効であり、再免許も可能です。

運用

携帯基地局の運用は、無線局運用規則の規定に従います。

操作

携帯基地局の操作は、原則として第三級陸上特殊無線技士以上の資格を持つ無線従事者が行う必要があります。ただし、特定の条件下では、無線従事者の資格を持たない者でも操作が可能です。例えば、特定無線局以外の陸上無線局の通信操作や、プレストーク方式の無線電話の送受切替装置の操作などが該当します。

検査

落成検査は、適合表示無線設備を使用する場合は省略されます。それ以外の場合も、登録検査等事業者による点検で一部省略が可能です。定期検査は、空中線電力が1Wを超える場合に5年ごとに行われます。変更検査は、落成検査と同様です。

沿革

1950年の電波法施行規則制定時には、携帯基地局という種別は定義されておらず、相当する無線局は陸上局として扱われていました。1958年に携帯基地局が定義され、免許の有効期間は3年とされました。その後、1971年に免許の有効期間は5年に変更され、現在に至ります。1993年には電波利用料制度が導入され、1994年には免許の有効期限が毎年一定の日に定められるようになりました。

1997年には空中線電力1W以下の携帯基地局は定期検査が不要となり、1998年には外国籍の者が電気通信事業用携帯基地局を開設できるようになりました。2009年には携帯基地局はすべて無線業務日誌の備え付けが不要になり、2012年には5GHz帯無線アクセスシステムの携帯基地局が登録局となりました。

諸外国の相当種別

無線局の免許制度は国によって異なり、細部に相違がありますが、アメリカでは”Operational fixed station”が相当します。

脚注

外部リンク

もう一度検索

携帯基地局