日方一夫

日方 一夫（ひなた かずお）は、1918年（大正7年）7月21日に東京市日本橋区で生を受けた日本の元俳優です。本名は松永 亥太郎（まつなが いたろう）。中央学院大学中央高等学校を卒業しています。

東宝専属俳優としてのキャリア

日方一夫は、東宝の専属俳優として長年にわたり活動しました。そのキャリアを通じて、彼は時代劇、現代劇、そして特に東宝が得意とした特撮作品まで、実に多様なジャンルの映画やテレビドラマに数多く出演し、作品世界を彩る重要な一員となりました。一度見たら忘れられない、個性的な目元と口元が彼のトレードマークであり、多くの作品で観客の印象に残る脇役や端役を演じました。

主な出演作品

東宝専属俳優として、日方一夫は膨大な数の作品に顔を見せました。特に特撮分野での貢献は大きく、日本の映画史に名を刻む多くの作品に出演しています。また、ウルトラシリーズなどのテレビドラマでもその姿を見ることができました。

映画

ゴジラシリーズ：
『ゴジラ』（1954年）では対策本部員を演じたのを皮切りに、『キングコング対ゴジラ』（1962年）、『モスラ対ゴジラ』（1964年）では複数の役、『三大怪獣 地球最大の決戦』（1964年）でも様々な役柄を務めるなど、黎明期から中期にかけてのシリーズを支えました。『怪獣大戦争』（1965年）では宇宙局局員、『怪獣総進撃』（1968年）では国連科学委員会技師として登場しています。
その他、初期の東宝特撮作品である『透明人間』（1954年）、『獣人雪男』（1955年）、『空の大怪獣 ラドン』（1956年）、『地球防衛軍』（1957年）、『宇宙大戦争』（1959年）、『マタンゴ』（1963年）、『海底軍艦』（1963年）、『宇宙大怪獣ドゴラ』（1964年）、『フランケンシュタイン対地底怪獣』（1965年）、『キングコングの逆襲』（1967年）など、数多くの特撮映画で様々な役柄を演じました。

変身人間シリーズ：
東宝の特撮シリーズである変身人間シリーズにも複数出演しており、『美女と液体人間』（1958年）では「ホムラ」の酔客と警視庁幹部、『電送人間』（1960年）ではボーイ、『ガス人間第一号』（1960年）では銀行員や野次馬を演じるなど、印象的な役柄を務めました。

暗黒街シリーズ：
東宝のアクション映画シリーズである暗黒街シリーズにも参加し、『暗黒街の対決』（1960年）や『暗黒街の弾痕』（1961年）などに出演しています。

若大将シリーズ：
青春映画の人気シリーズである若大将シリーズでも、『銀座の若大将』（1962年）、『日本一の若大将』（1962年）、『レッツゴー!若大将』（1966年）などに出演しています。

クレージー映画：
コメディ映画の代表格であるクレージー映画にも複数出演しており、『大冒険』（1965年）、『クレージーメキシコ大作戦』（1968年）、『日本一の裏切り男』（1968年）、『クレージーの大爆発』（1969年）などで、コミカルな役柄や真面目な役柄を演じ分けました。

その他、黒澤明監督の『隠し砦の三悪人』（1958年）、成瀬巳喜男監督の『女が階段を上る時』（1960年）、戦争映画の傑作『太平洋の翼』（1963年）、『太平洋奇跡の作戦 キスカ』（1965年）、『連合艦隊司令長官 山本五十六』（1968年）など、幅広いジャンルの東宝作品に欠かせない存在として出演しました。

テレビドラマ

ウルトラシリーズ：
テレビにおける特撮の金字塔、ウルトラシリーズにも参加しています。『ウルトラQ』第12話では港市警察署の警部補、『ウルトラマン』第21話では防衛隊隊長、『帰ってきたウルトラマン』第14話では地球防衛庁参謀と、シリーズ初期・中期にかけて重要な役柄で登場しました。

引退

日方一夫のキャリアの終焉は1971年でした。この年、東宝が行った専属俳優制度の一斉解雇に伴い、彼は俳優としての活動に終止符を打ちました。

専属制度の廃止に際しては、日方は組合のリーダーとして会社側との交渉にあたったとされています。共に東宝に所属した俳優の加藤茂雄氏の証言によると、この時の日方は、他の役者たちが俳優継続を望む中で、退職金の獲得を主眼としていた立場であったと語られています。

俳優業の傍ら、趣味として水泳と油絵を楽しんでいたことが知られています。俳優引退後の消息や没年については、現在のところ明らかになっていません。

日方一夫は、主演俳優ではありませんでしたが、東宝作品、特に特撮映画や特撮テレビドラマにおいては、その個性的な顔立ちと確かな演技で、作品にリアリティと深みを与える上で重要な役割を果たした名バイプレイヤーでした。

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