易居町

鹿児島市易居町（やすいちょう）

鹿児島市易居町は、市の中央部に位置し、城山の麓に広がる町です。この地域は、かつて手狭になった城下町を拡張するために埋め立てられた土地で、「新地」と呼ばれ、住みやすい場所として発展しました。

地理

易居町は、北に小川町、東に本港新町、南に名山町、西に山下町と隣接しています。鹿児島市電が山下町との境界を走り、水族館口電停が利用できます。また、東部には鹿児島県道204号鹿児島停車場線が南北に走っています。

町名の由来

「易居」という町名は、住みやすい新地であったことに由来します。この町名は、平凡社の『日本歴史地名大系』や東京堂出版の『難読地名辞典』にも難読地名として掲載されています。

歴史

易居町は、1874年（明治7年）に埋め立てによって誕生しました。当初は武士や平民が居住しており、産業振興のための施設も設置されました。1889年（明治22年）には鹿児島市の成立に伴い、その一部となりました。

町の成立から住居表示実施まで

易居町と、後に編入される生産町は、1874年（明治7年）に山下町、小川町の海岸が埋め立てられて誕生しました。生産町は当初、「スギハイ」と呼ばれており、産業振興を願って名付けられました。易居町には武士が、生産町には平民が多く住んでいました。1879年（明治12年）には県営織物授産場が、1885年（明治18年）には蚕糸講習所が設置され、鹿児島県の産業発展に貢献しました。

1889年（明治22年）には、鹿児島市が市制を施行し、易居町と生産町は鹿児島市の一部となりました。1901年（明治34年）からの鹿児島港拡張工事では、生産町と小川町の一部が港内水域となりました。1924年（大正13年）には、易居町に鹿児島青果卸市場が開設されました。

易居町周辺では、大正時代から昭和初期にかけて火災が多発しました。1914年（大正3年）には264戸、1919年（大正8年）には122戸、1934年（昭和9年）には42戸が焼失しました。第二次世界大戦後も1950年（昭和25年）に185世帯が全焼する火災が発生し、鹿児島市は被災地域に災害救助法を適用しました。1952年（昭和27年）にも86世帯が全焼する火災が発生しています。

住居表示実施以後

1962年（昭和37年）に住居表示に関する法律が施行されたことを受け、鹿児島市は1965年（昭和40年）7月20日に易居町を含む地域で住居表示を実施しました。この際、易居町の一部が名山町や小川町に編入され、生産町は易居町に編入され、一部が小川町に編入される形で廃止されました。

かつて易居町に社屋を構えていた南日本新聞は、2001年（平成13年）に与次郎に移転し、その跡地は鹿児島市が購入、市役所の別館として利用されています。

町域の変遷

易居町の区域は、埋め立てによって誕生し、その後の市制施行や住居表示の実施によって変遷を遂げました。生産町は、一部が易居町に編入される形でその歴史を閉じました。

人口

国勢調査によると、1995年以降の人口は変動しています。2020年10月1日現在、人口は1,313人、世帯数は783世帯です。

施設

公共

鹿児島市役所みなと大通り別館（旧南日本新聞本社）
ソーホーかごしま
鹿児島市中央消防署名山分遣隊
みなと大通り公園

寺院

不断光院

不断光院は、かつて上竜尾町に存在した南洲神社の場所にあった寺院で、廃仏毀釈によって廃寺となりましたが、後に易居町で再興されました。

教育

現在、易居町に教育施設はありませんが、かつては名山小学校、鹿児島市立商業学校（現在の鹿児島商業高等学校の前身）、鹿児島女子実業補習学校（現在の鹿児島女子高等学校の前身）がありました。

名山小学校は、1882年（明治15年）に易居町に設置され、後に山下町に移転しました。鹿児島市立商業学校は、1894年（明治27年）に名山小学校に併設する形で設置されましたが、1919年（大正8年）の大火により焼失し、山下町に移転しました。鹿児島女子実業補習学校は、1894年（明治27年）に設立が認可され、1911年（明治44年）に上之園町に移転しました。

小・中学校の学区

市立小・中学校に通う場合、学区は以下の通りとなります。

交通

道路

一般県道
鹿児島県道204号鹿児島停車場線

鉄道

鹿児島市交通局1系統・2系統
水族館口電停

脚注

鹿児島市

参考文献

鹿児島市史編さん委員会『鹿児島市史Ⅰ』 1巻、鹿児島市、1969年2月28日。 
鹿児島市史編さん委員会『鹿児島市史Ⅱ』 2巻、鹿児島市、1970年3月25日。 
南日本新聞『鹿児島市史Ⅴ』 5巻、鹿児島市、2015年3月27日。 
「角川日本地名大辞典」編纂委員会「角川日本地名大辞典 ４６ 鹿児島県」『角川日本地名大辞典』第46巻、角川書店、日本、1983年3月1日。ISBN 978-4-04-001460-9。
芳即正、五味克夫『日本歴史地名大系47巻 鹿児島県の地名』平凡社、1998年。ISBN 978-4582910544。
木脇栄『かごしま市史こばなし』南日本新聞開発センター、1976年。
山口恵一郎、楠原佑介『難読地名辞典』（第10版）東京堂出版、1993年。ISBN 4-490-10096-5。
山下悟「373ワイド 鹿児島市の消えた13町を訪ねなさい 地域の歴史今も刻む」『南日本新聞』2011年9月9日、15面。

関連項目

九州地方の難読地名一覧

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