曾我祐成

曾我祐成（そが すけなり）について

曾我祐成は、鎌倉時代初期に活躍した武士であり、その名は弟・時致とともに、父の仇である工藤祐経を討った「曾我兄弟の仇討ち」として広く知られています。この事件は、日本の歴史や文化に大きな影響を与え、様々な物語や演劇の題材として後世に語り継がれています。

生涯

祐成は安元2年（1176年）に生まれました。彼が5歳の時、実父・河津祐泰が所領を巡る争いから、同族の工藤祐経によって暗殺されるという悲劇に見舞われます。その後、母は祐成と弟の時致を連れて相模国曾我荘の領主である曾我祐信に再嫁しました。祐成は養父である祐信を烏帽子親として元服し、曾我氏の家督を継ぐことになります。

しかし、『吾妻鏡』によると、曾我氏の家督は祐信の実子である祐綱が継いだともされています。その後、祐成は北条時政の庇護を受けながら成長したと伝えられています。幼くして父を失った祐成と弟の時致は、厳しい生活の中で、亡き父を偲びながら成長したとされています。

建久4年（1193年）5月、祐成は弟の時致とともに、源頼朝が開催した富士の巻狩りに参加しました。この巻狩りの最終夜、運命の時が訪れます。

曾我兄弟の仇討ち

建久4年5月28日、富士の巻狩りの最後の夜、祐成と時致は工藤祐経を討ち果たすべく行動を起こします。『吾妻鏡』には、「曽我十郎祐成・同五郎時致、富士野の神野の御旅館に推參致し工藤左衛門尉祐経を殺戮す」とあり、兄弟は工藤祐経が宿泊していた御旅館に押し入り、見事仇討ちを成し遂げました。その際、酒の相手をしていた王藤内も討たれています。この騒動は周囲を巻き込み、現場は一時騒然となりました。

祐成は、駆けつけた祐経の部下である仁田忠常に討たれて命を落としましたが、弟の時致は頼朝の御所を目指して進みました。時致は向かってくる武士たちを次々と倒し、頼朝の宿所に押し入ります。しかし、頼朝の警護をしていた御所五郎丸によって取り押さえられました。

仇討ちの翌日である29日、頼朝は時致を取り調べ、有力な御家人たちが同席しました。時致の勇猛さを認めた頼朝は彼を許そうとしましたが、祐経の子である犬房丸の訴えにより、時致は同日梟首という悲劇的な最期を遂げました。

その後

祐成の妾であった大磯の遊女である虎は、事件後に取り調べを受けましたが、無罪とされ放免されました。虎は、箱根で祐成の供養を行い、祐成から最後に与えられた葦毛の馬を捧げて出家しました。その後、信濃善光寺に移り、祐成の冥福を祈ったと伝えられています。

また、祐成の末弟も連座して鎌倉に呼び出され、甘縄で自害しました。さらに、祐成らの異父兄弟である原小次郎も、この事件に関連して失脚した源範頼の縁座として処刑されました。

系譜

曾我氏は、桓武平氏千葉氏の支流で、曾我祐家が相模国曾我荘を本拠地とし、曾我氏を名乗ったのが始まりです。曾我兄弟の子孫は、室町時代に足利将軍家の奉公衆となり、室町幕府に仕えました。足利義昭の近習には、曽我晴助という人物がいました。

実父：河津祐泰
養父：曾我祐信
母：満功御前（横山時重の娘）
兄弟：曾我時致、原小次郎、律師
養兄弟：曾我祐綱
妾：虎御前
子：久須美祐寛（遺腹の子。越後国へ移り、久須美氏・久住氏の祖となる）

文化における曾我祐成

曾我祐成は、能や歌舞伎において、曾我兄弟の仇討ちを主題とした『曾我もの』に登場します。歌舞伎狂言では、『曽我狂言』や『曽我綉侠御所染』など、彼の活躍を描いた作品が数多く存在します。

また、浮世絵の題材としても人気があり、歌川国芳、歌川広重、歌川国貞、月岡芳年など、多くの浮世絵師によって描かれています。

さらに、曾我兄弟の物語は、映画やテレビドラマの題材としても繰り返し取り上げられ、多くの俳優によって演じられてきました。近年では、2022年のNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』にも登場しています。

小説や漫画、歌謡曲など、様々なジャンルで曾我兄弟の物語は語り継がれ、今もなお多くの人々に愛されています。

関連事項

曾我兄弟の仇討ち
富士の巻狩り
曽我物語
* 音霊 - 曾我兄弟の怨霊とされる怪異

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