月讀宮

月讀宮（つきよみのみや）

伊勢神宮皇大神宮（内宮）の別宮であり、式内社に列せられる神社です。三重県伊勢市中村町の五十鈴川中流域に位置しており、外宮からは約3.8km、内宮からは約1.8kmの距離にあります。「月読宮」と略記されることもあります。

祭神

主祭神は月讀尊（つきよみのみこと）です。月讀尊は最高神である天照大神の弟神にあたります。同じ「つきよみさん」と呼ばれる豊受大神宮（外宮）の別宮、月夜見宮の祭神である月夜見尊とは同一の神とされています。

この宮域には、主祭神である月讀尊に加え、その魂を祀る月讀荒御魂宮（つきよみのあらたまのみや）、親神である伊佐奈岐宮（いざなぎのみや、祭神：伊弉諾尊）、伊佐奈弥宮（いざなみのみや、祭神：伊弉冉尊）の三つの内宮別宮が共に鎮座しています。計四つの別宮が同じ境内に並び立つのは、神宮別宮の中では瀧原宮に次ぐ珍しい形態です。これらの社殿は、正宮に比べると規模は小さいものの、神明造の建築が四つ連なる景観は壮麗です。

また、宮域には内宮末社である葭原神社（あしはらじんじゃ）も鎮座しており、田畑を守護する五穀の神々を祀っています。

歴史

月讀宮の創祀の詳細は明らかではありませんが、平安時代初期の『大神宮儀式帳』（804年成立）には、「月讀宮一院、正殿四区」と記されており、当時すでに現在の四別宮が一体として「月讀宮」と呼ばれ、一つの瑞垣の中に祀られていたと考えられています。その後、貞観9年（867年）には伊佐奈岐宮と伊佐奈弥宮にそれぞれ独立した宮号が与えられました。延喜5年（927年）に編纂された『延喜式』では、伊佐奈岐宮と伊佐奈弥宮が一院、月讀宮と月讀荒御魂宮が一院とされていたようです。現在の四社それぞれが独立した瑞垣を持つ形になったのは、明治6年（1873年）以降のことです。

位置づけと参拝

月讀尊が天照大神の弟神であることから、月讀宮は内宮別宮の中では、天照大神の魂を祀る荒祭宮に次ぐ高い順位に位置づけられています。内宮の宮域外にある別宮としては最高位の別宮です。

参拝の際には、向かって右側（東側）から順に社殿が並んでいますが、正式な参拝順序は月讀宮 → 月讀荒御魂宮 → 伊佐奈岐宮 → 伊佐奈弥宮とされています。

遷宮

約20年ごとに行われる神宮式年遷宮に伴い、別宮でも遷御が行われます。第62回式年遷宮では、内宮の遷御から約1年後の平成26年（2014年）10月6日午後8時に月讀宮の遷御が執り行われました。同じ日には月讀荒御魂宮の遷御が午後10時に、伊佐奈岐宮・伊佐奈弥宮の遷御は同年10月10日に催されました。遷宮で役目を終えた社殿の古材は、他の神社に譲られることがあります。平成24年（2012年）に火災で本殿を失った栃木県足利市の八雲神社には、平成26年（2014年）に解体された月讀荒御魂宮の古材が譲渡されました。

祭事

月讀宮では、皇大神宮に準じた様々な祭事が行われています。年間を通じて、祈年祭、月次祭、神嘗祭、新嘗祭などの主要な祭典には、皇室からの幣帛が供進されます。これらの祭事では、国家の安寧、五穀豊穣、皇室の弥栄などが祈られます。

主な祭事としては、新年の慶事を祝う歳旦祭（1月1日）、国の始まりを祝う元始祭（1月3日）、建国記念祭（2月11日）、その年の豊穣を祈る祈年祭（2月18日）、天皇誕生日を祝う天長祭（2月23日）などがあります。また、風雨による災害がなく五穀豊穣となることを祈る風日祈祭は5月と8月に、国家の平安などを祈る月次祭は6月と12月に行われます。神宮で最も重要な祭事とされる、新穀を捧げる神嘗祭は10月に行われ、天皇自らが新穀を神に供え感謝する新嘗祭は11月に行われます。

境内と社殿

別宮四社の社殿は、祭神が男神か女神かにかかわらず、いずれも内宮に準じた神明造で、萱葺（かやぶき）の屋根を持ち南面しています。屋根の千木は内削ぎ、鰹木は偶数の6本です。月讀宮の社殿は、他の三社に比べてやや大きく、鳥居も大きいのが特徴です。遷宮のための古殿地は、通常東西に隣接していますが、月讀宮では南北に離れた位置にあります。

宮域には、神職が常駐して神札やお守りの授与、神楽や御饌の取り次ぎを行う宿衛屋が設けられています。

交通

最寄駅は近鉄鳥羽線五十鈴川駅で、徒歩約10分です。JR参宮線伊勢市駅からは徒歩約1時間かかります。バスを利用する場合は、三重交通の中村町バス停から徒歩約5分です。自動車では、伊勢自動車道伊勢インターチェンジから約1km、三重県道37号鳥羽松阪線（御幸道路）や国道23号沿いに位置しています。駐車場は国道側に大型のものが整備されています。

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