朝潮太郎 (2代)

朝潮太郎（あさしお たろう）は、1879年（明治12年）に愛媛県新居郡（現在の西条市）で生まれ、1961年（昭和36年）に82歳で亡くなった大相撲力士です。本名は薦田長吉（後に坪井）。最高位は大関で、高砂部屋、佐ノ山、高砂部屋と所属を移しました。身長176cm、体重113kgと当時としては恵まれた体格の持ち主でした。

怪力と入門

20歳の頃には、体重の3倍近い荷物を持ち上げるほどの怪力を誇り、その噂を聞きつけた初代朝汐の佐ノ山に勧誘されました。しかし、父親の反対によりすぐには入門できませんでした。父親が亡くなった後、1901年（明治34年）5月に念願の新序出世を果たし、四股名を朝嵐長太郎と改めました。

出世と「情けの八百長」

1906年（明治39年）1月場所に新十両、翌1907年（明治40年）1月場所には新入幕を果たし、1909年（明治42年）1月場所には小結に昇進しました。1910年（明治43年）1月場所6日目には、大関國見山との対戦で、下手投げを打った際に國見山の右膝が脱臼してしまいます。それに気づいた朝嵐は、そのまま組み止めて、勝負検査役も異常を認め水入りとなりました。土俵下で控えていた横綱常陸山の提案により痛み分けとなり、この一件は「情けの八百長」として語り継がれています。

朝汐太郎襲名と高砂部屋騒動

小結昇進後、一時低迷するも、1910年（明治43年）6月場所に関脇に昇進し、朝汐太郎の名を継承しました。1912年（大正元年）5月場所より、四股名の「汐」を「潮」に改めました。1913年（大正2年）10月22日に、高砂部屋の後継者候補であった6代二十山が死去すると、朝潮も後継者候補として名前が挙がりました。しかし、当時平幕であった綾川も対抗馬として名乗りを上げ、部屋は朝潮派と綾川派に分裂し、一門の親方衆、力士、行司をも巻き込む大騒動へと発展、裁判沙汰にまで発展しました。綾川派は「朝潮は金に困った佐ノ山によって友綱に売り飛ばされており、所属が高砂にない」と主張しましたが、実際はそれを聞いた2代高砂が買い戻しており、証拠となる領収書も裁判に提出されました。結果、年寄髙砂は朝潮が二枚鑑札で襲名することになりました。後年、朝潮は友綱から買い戻された経緯から「自分は幸せな男だった」と述懐しています。

大関昇進と引退

1914年（大正3年）6月場所では、当時無敵を誇った太刀山と右四つの相撲を取り、これが評価され、1915年（大正4年）1月場所に大関に昇進しました。絶好調であった1915年6月場所では、途中休場するなど、目立った活躍を見せることはなく、1919年（大正8年）5月場所を最後に引退しました。

「右差し五万石」と弟子育成

朝潮は右を差せば無類の強さを発揮し、「右差し五万石」と呼ばれました。7代東関から弟子を譲り受けたこともあり、横綱男女ノ川や前田山など、多くの名力士を育てました。協会取締の重責も担いましたが、1932年の春秋園事件の責任を取り、取締を辞任しました。1941年（昭和16年）12月に前田山に部屋を譲り、廃業しましたが、1950年（昭和25年）に開催された前田山の断髪式では、師匠として止め鋏を入れています。

人物像と晩年

朝潮は、あかぢ銀行の頭取であった渡辺治右衛門に贔屓にされていました。渡辺は、金の威勢で呼びつけたにも関わらず、応じなかった朝潮に惚れ込んだそうです。また、博打好きで、金庫を抱えて博打を打っていたという逸話も残っています。巡業中に、監視役であった綾川に注意され、巡業を放棄する騒ぎを起こし、協会幹部が説得に駆けつけたこともあったそうです。猪鍋やチャンバラ映画が好きで、特に猪鍋は弟子には食べさせず、一人で食べていたと言われています。協会取締時代は身長180cm、体重120kgの堂々とした体躯で貫禄十分でしたが、晩年は痩せていたそうです。廃業後は、茨城県真壁郡協和村に隠居し、亡くなる前年の1960年に、小島貞二がインタビューに訪れています。

成績

通算成績は37場所で111勝67敗66休26分7預、勝率は.624です。幕内成績は26場所で98勝64敗25分7預66休、勝率は.605です。

その他

幕下以下の地位は小島貞二コレクションの番付実物画像によります。当時の幕下以下の星取や勝敗数等の記録については、2024年現在、相撲レファレンス等のデータベースに登録がないため、幕下以下の勝敗数等は暫定的に対十両戦の分のみを示しています。

朝潮太郎は、その強さと波乱に満ちた人生で、相撲史に名を残す力士の一人です。

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