末長 (川崎市)

神奈川県川崎市高津区末長の詳細

地理

末長は高津区の中央部に位置し、北西には下末吉台地が谷戸を形成し、南東には低地が広がっています。この地形は、地域の景観に多様性をもたらしており、低地部には富士通ゼネラルの本社が立地しています。周辺は住宅地として整備され、都市的な様相を見せています。

交通の要所でもあり、東急田園都市線、第三京浜道路、南武線が地域内を通過しています。特に梶が谷駅は、地域住民にとって重要な交通拠点となっています。また、二ヶ領用水から分流する根方堀が、台地と低地の境界を流れており、地域の水利を支えています。

隣接する地域としては、北端で下作延、久本、坂戸、東端で中原区上新城、南西端で新作、梶ケ谷と接しており、これらの地域とのつながりも密接です。

地価

住宅地の地価は、2024年1月1日の公示地価によれば、末長1丁目では1平方メートルあたり34万3000円と29万4000円、末長4丁目では40万1000円となっています。これらの地価は、都市部における住宅地としての需要を示唆しています。

歴史

古代・中世

末長地域からは、縄文・弥生時代の遺跡が発掘されており、古くから人が住んでいたことがわかります。また、田地の地割りが条里制の遺構であると考えられており、古代における土地利用の様子を伺わせます。延喜式に登場する「小高駅」に関わる「小高谷戸」という地名も残っており、この地域の歴史の古さを物語っています。しかし、「末長」という名前の初出は、戦国時代の記録である「小田原衆所領役帳」に「稲毛末長」として見られます。

近世

江戸時代には、当地は旗本の国領氏、浅井氏、松波氏による三給地でした。「新編武蔵風土記稿」によると、民家は71軒であり、農地は水田が多かったと記録されています。村高は時代とともに変動し、正保年間には508石あまり、天保年間には585石あまり、幕末には587石あまりと推移しています。水利は二ヶ領用水からの分流である根方堀や溜池を利用していました。また、溝口宿や品川宿の助郷も務めており、特に品川宿の助郷は負担が重く、何度も免除を嘆願しましたが、認められませんでした。

近代・現代

明治時代以降、末長は橘村の一部となり、後に川崎市に編入されました。明治時代には養蚕が盛んでしたが、大正末期からは野菜栽培に転換しました。しかし、1940年には日本光学（現ニコン）が工場を設置し、軍需品の生産を開始。その結果、1945年には空襲を受け、工場は壊滅的な被害を受けました。戦後、1955年には八欧電機（現富士通ゼネラル）が進出し、社宅が建設されるなど、宅地化が急速に進みました。

地名の由来

地名の由来には諸説あり、はっきりとはしていません。

瑞祥地名であるという説
村域の形状から生じたという説
丘陵地帯の地形から「セナガ」が転じたとする説

また、源義家が後三年の役からの帰途に、当地の石に弓矢を納めて武運を祈ったという伝承も残っており、この地の歴史の深さを感じさせます。

沿革

1091年（寛治5年）：源義家が当地に立ち寄ったとされる。
1559年（永禄2年）：「小田原衆所領役帳」に「稲毛末長」と記載。
1681年（延宝9年）：溝口宿の助郷村となる。
1735年（享保20年）：溝口宿と品川宿の半高助郷を命じられる。
1868年（明治元年）：明治維新。神奈川県の所属となる。
1872年（明治5年）：学制施行。末長学舎が開かれる。
1874年（明治7年）：大区小区制により第5大区第4小区に属する。
1889年（明治22年）：町村制施行により橘村の大字となる。
1912年（明治45年）：村内の神社が杉山神社に合祀される。
1914年（大正3年）：末長小学校が統合により橘小学校となり、当地からなくなる。
1937年（昭和12年）：橘村が川崎市に編入され、川崎市末長となる。
1940年（昭和15年）：日本光学の工場が開設。
1944年（昭和19年）：川崎市立高津高等女学校が当地に移転（1954年転出）。
1945年（昭和20年）：空襲を受ける。
1955年（昭和30年）：八欧電機の工場が設置される。
1958年（昭和33年）：川崎市立末長小学校が開校。
1964年（昭和39年）：杉山神社が火災で焼失（1972年再建）。
1965年（昭和40年）：第三京浜道路が全通。京浜川崎インターチェンジが設置される。
1966年（昭和41年）：東急田園都市線が開通。梶が谷駅が設置される。
1969年（昭和44年）：一部が梶ケ谷に編入される。
1972年（昭和47年）：川崎市が政令指定都市に移行。高津区末長となる。
1977年（昭和52年）：高津郵便局が当地へ移転。
2013年（平成25年）：一部が末長一丁目、二丁目として分立。
2014年（平成26年）：末長三丁目、四丁目が起立。大字としての末長は消滅。

小字

住居表示施行前の末長には、姿見台、久保台、向台、富士見台、中原、大谷、宗田町、中の町、高の面といった小字が存在しました。

世帯数と人口

2024年9月30日現在の世帯数と人口は、川崎市によって発表されています。

学区

市立小中学校に通う場合の学区は、川崎市の教育委員会が定めています。

事業所

2021年の経済センサス調査によると、末長の事業所数と従業員数が明らかになっています。

交通

鉄道

東急田園都市線と南武線が利用できます。梶が谷駅は東急田園都市線の駅で、丘陵地に位置しています。南武線は低地を通っていますが、駅は設置されていません（近隣の武蔵新城駅が利用可能です）。

バス

東急バスと川崎市交通局が運行しています。梶が谷駅や溝の口駅を拠点として、丘陵地や平地を結ぶ路線があります。

道路

国道466号第三京浜道路（京浜川崎インターチェンジ）
神奈川県道14号鶴見溝ノ口線
南武沿線道路

施設

高津郵便局
富士通ゼネラル本社
杉山神社
高津警察署末長交番
JAセレサ川崎梶ヶ谷支店
川崎信用金庫梶ヶ谷支店
川崎フロンターレ本社

教育施設

川崎市立末長小学校
川崎市立東高津中学校
南武朝鮮初級学校
末長こども文化センター

その他

郵便番号：213-0013
集配局：高津郵便局

警察

町内の警察管轄区域は、高津警察署が担当しています。

参考文献

『川崎の町名』日本地名研究所 編、川崎市、1995年。
『川崎地名辞典（上）』日本地名研究所 編、川崎市、2004年。
『角川日本地名大辞典 14 神奈川県』角川書店、1984年。
* 「稲毛領 末長村」『新編武蔵風土記稿』 巻ノ62橘樹郡ノ5、内務省地理局、1884年6月。

関連項目

末長（曖昧さ回避）

もう一度検索