本願寺の歴史

親鸞の入滅と廟堂建立

浄土真宗の宗祖である親鸞は、弘長2年（1262年）に京都で入滅しました。親鸞の死後、門弟たちはその遺志を継ぎ、墓所を建立しました。当初、大谷に墓所が設けられましたが、後に親鸞の末娘である覚信尼によって吉水の北に改葬され、「大谷廟堂」が建立されました。

廟堂の管理は覚信尼が担い、その後、如信（親鸞の孫）が法灯を継ぎます。しかし、寺務は覚信尼と覚恵（親鸞の孫）に委ねられました。如信は親鸞の祥月忌に上洛し、その際に覚如（親鸞の曾孫）に宗義を教えました。覚如は後に如信を「本願寺第二世」と定めました。覚信尼の入滅後、覚恵が留守職を継承しましたが、その子である覚如が継承する際に、唯善との間で留守職を巡る争いが起こります。

最終的に覚如が留守職を継承し、大谷廟堂は寺院化へと進みます。覚如は「専修寺」と号することを試みますが、延暦寺の反対により撤回せざるを得ませんでした。その後も覚如は留守職を繰り返し、親鸞の御影像を安置し、影堂を再建するなど、廟堂の整備に尽力しました。

本願寺の成立

覚如は、元亨元年（1321年）に再び寺院化を試み、「本願寺」と号しました。この時、本願寺教団は移転時に御真影を安置している寺を「本願寺」と呼ぶようになります。寺号は亀山天皇から下賜された「久遠実成阿弥陀本願寺」に由来するとされます。寺院化にあたり、本尊を阿弥陀如来立像とする案もありましたが、高田門徒の反対により、十字名号が本尊とされました。

覚如は自らを「本願寺第三世」とし、親鸞を「宗祖」、如信を「本願寺第二世」と定め、法灯継承を主張しました。しかし、本願寺の発展は、親鸞の門弟たちの教団によって進められ、関東の高田門徒や近畿の佛光寺、北陸の三門徒などが勢力を持ちました。

本願寺教団の形成と蓮如の登場

本願寺は弱小勢力でしたが、綽如が第五世を継承した際に本尊が阿弥陀如来立像に変更されました。本願寺は近江や北陸地方を中心に教線を拡大していきました。

中興の祖と呼ばれる蓮如は、本願寺第八世として登場します。蓮如が継承した当時の本願寺は衰亡の極みにありましたが、蓮如は本願寺を再興し、教団を大きく発展させました。しかし、寛正6年（1465年）には延暦寺によって本願寺が破却されるという事件が起こりました。蓮如は京都から近江、そして越前吉崎に移り、布教活動を続けました。

吉崎では加賀の守護職富樫氏の内紛に関与し、一揆の扇動などの混乱もありましたが、蓮如は争いを鎮静化させるために吉崎を退去し、河内出口を拠点に布教を再開しました。その後、山科に本願寺を再建し、佛光寺派や出雲路派など他の宗派を吸収し、教団を拡大しました。

戦国時代の本願寺と石山合戦

蓮如の死後、本願寺は実如、証如、顕如と引き継がれ、戦国時代の混乱期を迎えました。本願寺は民衆の解放運動の支えとなり、強力な社会的勢力として発展しました。

第十一世顕如の時代には、織田信長との間で約10年にわたる「石山合戦」が勃発します。当初、顕如は信長と徹底抗戦しましたが、後に和議に応じ、石山本願寺から退去しました。しかし、顕如の長男である教如は徹底抗戦を主張し、義絶されました。その後、教如も石山本願寺を明け渡しましたが、その直後に本願寺は焼失してしまいます。

本願寺の分立

顕如は、その後大坂の天満に本願寺を移し、京都に再建しました。顕如の死後、教如が本願寺を継承しましたが、教団内部の対立が激化しました。秀吉の仲介により、弟の准如が本願寺を継承し、教如は退隠を余儀なくされました。

しかし、教如はその後も精力的に活動を続けました。関ヶ原の戦いの後、家康の支援により教如は新たに寺領を与えられ、本願寺は東西に分立することになりました。准如を宗主とする本願寺は「西本願寺」、教如を宗主とする本願寺は「東本願寺」と通称されるようになり、浄土真宗は二つの宗派に分かれることになりました。

この分裂は、本願寺の勢力を弱体化させたという見方もありますが、一方で、東西両本願寺の宗政を安定させたという見方も存在します。東西本願寺の分立は、後の浄土真宗の歴史に大きな影響を与え、現在に至るまで東西の本願寺の末寺の分布には、その歴史的経緯が反映されています。

分立後の歴史

東西分立後も、昭和62年まで東西ともに「本願寺」が正式名称でした。分立後の西本願寺、東本願寺の歴史は、それぞれの項目で詳述されています。

本願寺の歴史は、親鸞の教えを受け継ぎながら、時代とともに変化し、発展してきた過程を示すものです。この歴史を理解することは、浄土真宗の教えをより深く理解することにつながります。

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