朱治

朱治 (しゅ ち)

朱治（156年 - 224年）は、後漢末から三国時代の呉に仕えた武将であり、字は君理と称しました。揚州丹陽郡故鄣県（現在の浙江省安吉県）の出身で、孫堅、孫策、孫権の三代に渡って孫家を支え、呉の創業に大きく貢献しました。

生涯

朱治は若い頃、県の文官として役人生活を送り、孝廉に推挙されて州の従事となりました。孫堅が勢力を拡大すると、その配下に入り、司馬に任命されました。不服従民の討伐や周朝・蘇馬らの討伐で功績を挙げ、孫堅の上奏により都尉に昇進しました。董卓討伐連合軍にも従軍し、陽人での戦いで董卓軍を破り、洛陽入城に貢献。孫堅の上奏により督軍校尉に任命され、黄巾軍残党討伐のため、徐州の陶謙の元へ援軍として派遣されました。

孫堅の死後、朱治は長男の孫策を補佐し、袁術に身を寄せました。しかし、袁術の道に外れた行動を憂慮し、孫策に江東を平定して独立するよう進言しました。当時、曲阿にいた揚州刺史の劉繇は、孫策が袁術の命令で廬江を攻撃したことを警戒し、孫策と敵対するようになりました。朱治は、孫策の一家眷属が曲阿にいたことから、使いを派遣して孫策の母と弟たちを迎え入れ、手厚く保護しました。この頃から孫氏一家との親交を深めました。

朱治は以前、寿春に抑留されていた漢王朝の太傅馬日磾に招かれ属官となり、呉郡都尉に昇進していました。そこで、軍を率いて銭唐から呉郡へ向かい、太守の許貢を由拳で破りました。許貢は南方の厳虎を頼って逃亡したため、朱治は呉郡の役所に入り、太守の職務を代行しました。孫策が劉繇を破り会稽を征服した後、朱治は子がなかったため、姉の子である朱然を養子に迎えることを許されました。

孫権が15歳の時、朱治は孫権を孝廉に推挙し、その後も孫権の弟である孫翊を推挙しました。孫策の死後、孫権を張昭と共に支え、建安7年（202年）には正式に呉郡太守に任命され、扶義将軍を兼務しました。婁・由拳・無錫・毗陵を与えられ、代官に統治させました。

朱治は異民族や山越を討伐し、東南地域を安定させました。また、黄巾軍残党の陳敗や万秉を討伐するなどの功績を挙げました。短気で感情的な孫翊には、道義を説いて諭しました。建安13年（208年）、曹操が荊州を支配すると、豫章太守の孫賁が曹操に降伏しようとしましたが、朱治はこれを説得して思いとどまらせました。

黄武元年（222年）には毗陵侯に封じられましたが、呉郡太守の地位はそのまま維持されました。黄武2年（223年）には安国将軍に任命され、金印紫綬を与えられました。同時に、故郷である故鄣へ移封となりました。配下の役人にも個人的な目通りを許し、その仕事量を減らすために、太守の職務の一部を代行させる役人を派遣しました。これにより、朱治は4県の租税に関する仕事に専念することができました。呉郡の役所には有力豪族の子弟や呉の四姓などが出仕し、郡の役人は数千人に達しました。朱治が孫権に挨拶の使者を派遣する際には、数百人もの人々が同行しました。朱治は郡からの貢物を毎年欠かさず献上し、孫権も朱治に手厚い返礼を与えました。

朱治は丹陽の奥地に帰服しない住民が多数いること、そして自身が老いて故郷を懐かしむようになったことから、故鄣に軍を駐屯させ、不服従民を討伐することを上奏しました。一年ほど滞在した後、呉郡に帰還し、故郷の古老や旧友との交流を楽しみました。

呉郡太守として31年間務め、黄武3年（224年）に69歳で亡くなりました。彼の爵位は実子の朱才、孫の朱琬に受け継がれ、朱才は偏将軍、朱琬は鎮西将軍まで昇進しました。

人物

孫権は朱治が常に国のために全力を尽くしていることを高く評価していました。朱治は富貴を極めた身分になっても、奢ることなく倹約に徹した生活を送りました。必要なもの以外は車馬や服飾を飾り立てることはありませんでした。

逸聞

孫権は朱治を非常に尊敬しており、たとえ不満があっても口に出すことはありませんでした。そして、朱治の功績に対しては常に惜しみない賞賛を送りました。

孫権の仕官の際に推薦者を務めたことから、孫権は将軍位を経て呉王となりましたが、朱治が参内する際には自ら出迎え、笏を執って互いに拝礼を交わし、宴会でも手厚い待遇を与えました。

朱治は若い頃から数々の戦に従事し、黄武2年（223年）には長年の功績により安国将軍を拝命しました。孫権は朱治のために「安国」と銘文が刻まれた刀を特別に作らせました。

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