浅野氏祐

浅野氏祐（あさの うじすけ）

浅野氏祐は、天保5年（1834年）に生まれ、明治33年（1900年）1月8日に没した、江戸時代末期の幕府旗本であり、若年寄を務めた人物です。明治時代に入ってからは、静岡県参事や徳川公爵家の家令として活躍しました。江戸時代には次郎八や一学の通称、伊賀守・美作守などの官位名で知られていました。

生涯

浅野氏祐は、旗本である浅野氏綏の子として生まれました。浅野家は下総国香取郡（現在の香取市）に2000石の知行地を有していましたが、広島藩主の浅野氏とは直接的な関係はありません。

安政3年（1856年）に小姓組に入り、万延元年（1860年）閏3月には使番から目付に昇進しました。文久元年（1861年）には諸太夫に列し、従五位下、伊賀守に叙任され、後に美作守となりました。当時の幕府は公武合体を目指しており、氏祐は長州藩主毛利敬親の命を受けた長井雅楽を、京都所司代酒井忠義と共に支援するため京都へ派遣されました。しかし、翌年4月には尊王攘夷派の久坂玄瑞らの朝廷工作により情勢が不利となり、長井も帰国したため、氏祐も江戸に戻りました。

文久2年（1862年）6月7日には、大目付・大久保忠寛、目付・神保長興とともに征夷大将軍・徳川家茂上洛用掛となり、7月26日には大目付に昇進、10月には神奈川奉行となりました。文久3年（1863年）5月には外国奉行を兼帯しましたが、7月には職務における不手際を咎められ、隠居蟄居を命じられました。しかし、元治元年（1864年）9月15日には製鉄所御用掛として復帰し、小栗忠順、栗本鋤雲らと共に、用地の選定や技術供与国であるフランスとの折衝に当たりました。また、両者と共に幕府陸軍の改革についてもフランスと協議しました。

慶応元年（1865年）5月には陸軍奉行並に転出し、慶応2年（1866年）9月27日には再び外国奉行となり、フランス駐在を命ぜられましたが、10月15日に向山一履と交代となり、渡仏することなく勘定奉行に転出しました。慶応3年（1867年）3月には再び陸軍奉行並を兼帯し、4月には若年寄並となり、陸軍奉行を兼帯し、来日したフランス軍事顧問団との折衝役を務めました。

戊辰戦争と明治維新後

慶応4年（1868年）正月、歩兵奉行向井豊前守やシャノワンらと順動丸で大坂へ向かい、江戸の様子を伝えました。徳川慶喜が大阪城を脱出した当日であり、江戸退去に従いました。同年2月12日、松平春嶽の意見により、慶喜が江戸城を退去し、上野寛永寺大慈院に移る際には平岡道弘らと共に随行しました。4月には慶喜に随行して水戸へ行き、徳川家達が静岡藩に移封されるとこれに従いました。明治2年（1869年）8月には静岡藩権大参事となり、廃藩置県後には静岡県参事（県知事に相当）となりましたが、明治5年（1872年）7月に職を辞しました。明治23年（1890年）から明治28年（1895年）まで公爵徳川家の家令を勤め、明治33年に没しました。

浅野氏祐は、幕末の動乱期から明治維新にかけて、幕府の要職を歴任し、徳川家を支え続けた人物であり、その功績は日本の近代化に大きく貢献しました。

参考文献

村上泰賢編『小栗忠順のすべて』新人物往来社、2008年　ISBN 978-4404035332
渋沢栄一『徳川慶喜公伝 史料編』東京大学出版会、1997年
石井孝『増補 明治維新の国際的環境』吉川弘文館、1992年　ISBN 978-4642035071
石井孝『明治維新の舞台裏』岩波新書、1975年
安西愈『勝海舟の参謀 藤沢志摩守』新人物往来社、1974年
小川恭一編『寛政譜以降旗本家百科事典』東洋書林　1997年
* 田村貞雄『徳川慶喜と幕臣たち』　静岡新聞社　1998年　ISBN 978-4783810629

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