海進

海進とは

海進（かいしん）とは、海面が陸地に対して上昇し、海岸線が内陸に移動する地質学的な現象を指します。この現象により、陸地が水中に沈むことになります。一方、これに対する概念として海退があり、これは海が後退することを意味し、以前海面下であった地域が陸地として姿を現します。

海進と海退の原因

海進や海退の原因としては、いくつかの要因が考えられます。地面の隆起や沈降、海水の量の変化、海自体の容量の変動などが主な要因です。これらの現象のさらに背景には、造山運動や地殻変動、また氷河期のような大規模な気候変動が関与している可能性があります。これに伴い、氷や堆積物の存在によるアイソスタシー（等重量状態）の変動も重要な要素です。

白亜紀には特に顕著な海進が見られました。この時期、海洋底の拡大に伴い、比較的浅い大西洋が形成され、対照的に深い太平洋は縮小しました。その結果として、世界中の海盆の容量が減少し、海面が上昇しました。こうした変化は北アメリカの中央部に至るまで影響し、メキシコ湾から北極海にかけての内陸海路が形成されることとなりました。

また、更新世の氷河時代では、氷河が大量の水を陸地に留めたため、海水の量が減り、これによって大規模な海退が発生しました。この時、海面は120メートルも下がり、アラスカとアジアを接続するベーリング陸橋が存在していました。これが意味するのは、異なる時代において、海と陸との関係が大きく変わってきたということです。

層相における特徴

海進と海退は堆積相の変化によっても示されます。堆積物が形成される条件が異なるため、これらの現象は一般的に明確に識別できます。たとえば、砂などの大きな粒子は通常、沿岸近くの高エネルギーな環境で堆積しますが、シルトや炭酸塩泥のような細粒の堆積物は、より沖合の深く、エネルギーの低い水域で堆積する傾向があります。

また、地層が年代によって進む際、古い岩層から新しい岩層へと移行する際に見られる変化、つまり沿岸相（砂岩など）から沖合相（泥灰土など）への変化は、海進の証と見なされます。逆に、海退の場合は沖合相から沿岸相への変化が見られます。ただし、地層は侵食による不整合の影響を受けることがあるため、海退の過程で部分的な記録が失われることもあります。

複雑な変化と考慮すべき要素

実際の海進や海退の識別は単純ではありません。特に、海退が炭酸塩を含む層から頁岩のみへの変化や、海進が砂岩から頁岩への変化で示される場合があります。また、地層の水平方向における違いも大切です。比較的水深の深い内海では海進の痕跡が明瞭に残っている一方、浅海ではその痕跡が部分的しか残らないということもあります。堆積層を解析する際は、これら多くの要因を統合的に考える必要があります。

関連項目

• - 平安海進
• - 縄文海進
• - 下末吉海進
• - 海水準変動
• - ダンケルク海進
• - 海進海岸
• - マリンバンド
• - 隆起海浜
• - シーケンス層序学
• - 埋没林

海進や海退の影響は、生態系や地形、さらには人間の活動にも大きく関連しており、これらを理解することは地理学や地質学の研究にとって極めて重要です。

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