独立派 (宗教)

イギリスにおける独立派：清教徒革命を担った宗教勢力

17世紀のイギリスにおいて、独立派（インディペンデント）は、プロテスタントの会衆派の一派として重要な役割を果たしました。イングランド国教会の監督制に不満を持つピューリタンの中から生まれた独立派は、各教会の完全な自治を重視する「会衆制」を採っていました。これは、教会運営を信徒集団に委ねる直接民主制に近いシステムです。

独立派の成立と亡命

独立派の起源は、エリザベス1世時代のイングランド国教会への不満に遡ります。徹底的な宗教改革を主張するピューリタンの中でも、国教会からの分離を主張したロバート・ブラウンら分離派がその先駆けでした。彼らは、教会を信徒の共同体と考え、上からの規制を拒否しました。この独立組合教会主義は17世紀に広まり、分離派から会衆派、そして独立派が派生していきます。

17世紀初頭、チャールズ1世によるピューリタン弾圧が激化すると、多くのピューリタンが安住の地を求めて海外へ亡命しました。独立派もその例外ではなく、オランダや北アメリカ、特にマサチューセッツ湾植民地への亡命が盛んになりました。この亡命は、単なる逃避ではなく、新天地での教会設立と同志拡大、そしてイングランドにおける改革運動への地盤固めという目的がありました。貴族や新興商人らの支援も得て、亡命者たちは人材と情報のネットワークを構築していったのです。

亡命中には、ケンブリッジ大学出身者を中心に指導者層が形成されました。トマス・グッドウィン、ウィリアム・ブリッジ、ジェレマイア・バローズ、シドラック・シンプソン、フィリップ・ナイといった人物たちが、オランダ亡命を経て『弁明の言葉』を起草するなど、独立派の思想的基盤を確立しました。他にもヒュー・ピーターやジョン・コットンといった著名な人物が、国教会からの迫害を逃れてアメリカへ亡命し、独立派運動を支えました。彼らはアメリカとイングランドを繋ぐ重要な役割を果たし、情報や思想の交換を通して運動を活性化しました。さらに、千年王国思想を社会状況に重ね合わせ、革命を正当化する説教を行うなど、世論形成にも貢献しました。

清教徒革命における独立派の活躍

1640年、長期議会におけるロード大主教の失脚と弾圧の緩和を機に、独立派ピューリタンはイングランドへ帰国し、清教徒革命に本格的に参加します。グッドウィンやナイ、ピーターらはクロムウェルの側近として活躍しました。アメリカに残ったコットンも、クロムウェルへの手紙や説教を通して革命を支援しました。

独立派は、宗教的立場だけでなく、政治的にも影響力を持っていました。ジョン・ピム、ジョン・ハムデン、ヘンリー・ベイン、オリバー・クロムウェルといった政治家たちも独立派と目され、議会派の一翼を担っていました。宗教的独立派と政治的独立派の連携は、軍事改革による軍の掌握、そしてニューモデル軍の創設へと繋がりました。

独立派は長老派と対立し、ニューモデル軍を基盤に政治的勢力を形成しました。ネイズビーの戦いで王党派を破り、内戦の勝利に貢献しました。しかし、長老派によるニューモデル軍解体工作や、平等派との対立といった内部問題にも直面しました。パトニー討論での平等派との激しい論争や、プライドのパージによる長老派の追放を経て、独立派は革命の主導権を掌握し、チャールズ1世処刑とイングランド共和国の樹立へと導きました。

共和国時代と王政復古後の弾圧

クロムウェルは護国卿として、独立派の協力を得ながら共和政を維持しようとしましたが、議会との対立は続き、政争は激化しました。ピーターは軍兵士や議員を鼓舞する説教を行い、グッドウィンは宗教政策でクロムウェルを支えました。しかし、1658年のクロムウェルの死後、1660年の王政復古によって独立派は弾圧され、グッドウィンやブリッジは公職追放、ピーターは処刑されました。クラレンドン法典による弾圧で独立派は衰退の一途を辿り、その歴史に幕を閉じました。

独立派は、清教徒革命における重要な宗教勢力として、その思想と行動はイギリスの歴史に大きな足跡を残しました。彼らの宗教的信念と政治的活動は、後のアメリカ合衆国における政教分離思想にも影響を与えたと言われています。

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