祇園祭 (1968年の映画)

映画『祇園祭』とは

映画『祇園祭』は、1968年に公開された時代劇映画です。原作は西口克己の同名小説で、応仁の乱後の京都を舞台に、町衆と農民の対立、そして祇園祭復興への人々の情熱を描いています。

製作の経緯

当初、1961年に伊藤大輔監督が中村錦之助主演で東映に企画を提出しましたが、製作費の問題で中止となりました。その後、映画界の斜陽や時代劇の衰退により、企画は長らく日の目を見ませんでしたが、京都府政百年記念事業として京都府と京都市の協力が得られる見通しが立った1967年に、独立プロ「日本映画復興協会」によって製作が再開されました。

しかし、脚本の問題、スタッフの降板、製作費の調達難など、多くの困難に見舞われました。監督も伊藤大輔から山内鉄也に交代し、製作費も当初の倍以上となる約3億円にまで膨れ上がりました。さらには政治的介入や暴力団による妨害もあり、まさに艱難辛苦の末に、最初の企画から7年を経てようやく完成しました。

作品の特徴

この映画の大きな特徴は、大手映画会社の主導ではなく、独立プロによる自主製作であったため、五社協定に縛られない自由なキャスティングができたことです。東映、東宝、松竹出身のスター俳優に加え、フリーの新劇俳優も参加し、豪華で異色な配役となりました。また、群衆シーンには多くの京都市民がエキストラとして参加しています。

1968年11月23日に公開されると、洋画系映画館でのロードショー公開という異例の形式ながら大ヒットを記録し、観客動員数や興行収入で当時の新記録を樹立しました。この成功は、日本の観客が時代劇に関心を抱いていることを証明し、大手映画会社による配給制度を打ち破る上で大きな影響を与えました。

あらすじ

応仁の乱後の京都は荒廃し、農村部では土一揆が頻発していました。染物職人で笛の名手である新吉は、同じく笛の名手である女あやめと出会い、惹かれ合います。細川家の依頼で山科へ出兵した新吉は、そこで京の町民と農民が争う姿を目の当たりにします。馬借の頭である熊左との戦いを経て、新吉は町民も農民も侍たちの犠牲になっているだけではないかと疑問を抱き始めるのでした。

現在の上映状況

作品の上映権は現在京都市が所持しており、権利関係が複雑なため、ソフト化はされていません。祇園祭の時期に京都文化博物館で数回上映されるのが、唯一の一般公開の機会となっています。

2007年には、退色が進んでいたフィルムの復元作業が行われ、ニュープリントが作成されました。

映画化の背景

1950年代に、マルクス主義に基づく「新しい歴史学」を啓蒙する活動の一環として、紙芝居『祇園祭』が作成されました。この紙芝居は、応仁の乱後に京都の町衆が自治体制を築き、その象徴として祇園祭を復興するというストーリーで、「町衆論」をドラマ化したものでした。その後、紙芝居は書籍化され、広く知られるようになり、舞台化もされました。この紙芝居に感銘を受けた伊藤大輔監督が、1961年に西口克己の小説を映画化しようとしましたが、頓挫。その後、竹中労の再企画によって、京都府が支援する形で映画化が実現しました。

映画のスタッフ・キャスト

製作：小川矜一郎、久保圭之介、遠藤嘉一、中岡清、加藤彰朗、鈴木一成、浮田洋一、茨常則
企画：伊藤大輔
原作：西口克己
脚本：鈴木尚之、清水邦夫
監督：山内鉄也
撮影：川崎新太郎
美術：井川徳道
照明：中山治雄
録音：野津裕男
音楽：佐藤勝
編集：河合勝己
記録：田中美佐江
殺陣：尾形伸之介
助監督：宮嶋八蔵、萩原将司
製作進行：高岡正昭
製作事務：安田節子
スチル：鈴木一成
製作協力：中村プロダクション

出演者
新吉（染物職人）：中村錦之助
いち（新吉の母）：瀧花久子
お鶴（新吉の妹）：佐藤オリエ
あやめ（善阿弥の娘）：岩下志麻
河原又四郎（善阿弥）：永井智雄
権次（善阿弥の弟子）：田中邦衛
恒右衛門（染物屋主人）：志村喬
助松（桶屋職人）：田村高廣
お兼（助松の女房）：斉藤美和
源蔵（大工）：藤原釜足
源太（源蔵の息子）：小川吉信
常七（中組町衆）：大里健太郎
平太（中組町衆）：大木晤郎
文助（中組町衆）：香川良介
佐助（中組町衆）：橋本仙三
およし（佐助の女房）：沢淑子
文七（艮組町衆）：山口俊和
門倉了太夫（月行事惣代）：小沢栄太郎
泉屋徳太夫（中組月行事）：浮田左武郎
柳屋辰右衛門（巽組月行事）：有馬宏治
丹波屋伝蔵（堀川組月行事）：御木本伸介
熊左（馬借の頭）：三船敏郎
岩十（馬借）：尾形伸之介
山科言継卿（公卿）：下元勉
伊平（つるめその頭）：渥美清
於菟（つるめその若者）：北大路欣也
祇園社神官：関根永三郎
甚兵衛（山科の百姓）：下條正巳
一揆の頭：堀正夫
政庁前の開闔：加藤浩
中組路地開闔：田中浩
関所の役人：中村時之介
宰領：玉生司郎
職人・六：松山英太郎
彦爺：片岡半蔵
とよ：鈴木悦子
騎馬の侍：遠山金四郎
赤松政村（侍所頭人）：伊藤雄之助
細川晴元：伊藤寿章
巽組代表：高倉健
町衆：美空ひばり、中村米吉、中村光輝
亥三（一揆の百姓）：中村賀津雄
秀太（一揆の百姓）：大辻伺郎
せつ（山科の百姓）：木暮実千代
* ほか

まとめ

映画『祇園祭』は、製作過程の困難さ、豪華なキャスト、そして歴史的背景など、多くの魅力を持つ作品です。現在では限られた機会にしか上映されていませんが、日本の時代劇映画史に残る名作として、その価値は色褪せることはありません。

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