禅興寺 (鎌倉市)

禅興寺（ぜんこうじ）

禅興寺は、かつて相模国鎌倉（現在の神奈川県鎌倉市山ノ内）に存在した臨済宗の寺院で、正式には禅興久昌禅寺と称しました。鎌倉幕府の有力者である北条氏との関係が深く、最盛期には鎌倉五山に次ぐ格式を誇りましたが、明治維新の際に廃寺となりました。

歴史

北条時頼と最明寺

禅興寺の歴史は、鎌倉幕府五代執権である北条時頼が自身の私邸を出家・得度した際に、最明寺としたことに始まります。時頼は、建長寺開山の蘭渓道隆大覚禅師を戒師として覚了房道崇と名乗りました。

北条時宗による再興と禅興寺の成立

時頼の死後、最明寺は一時廃寺となりましたが、八代執権の北条時宗が文永年間に蘭渓道隆を再び招き、最明寺を再興して禅興寺と改めました。蘭渓道隆は建仁寺へ移った後、再び鎌倉に戻り禅興寺を開山したとされています。

鎌倉における禅興寺の地位

弘安3年（1280年）には、中国から来日した鏡堂覚円が直ちに禅興寺に入っています。元亨3年（1323年）には、北条貞時の十三年忌に92名の僧侶が出頭し、その規模は建長寺、円覚寺、寿福寺、浄智寺に次ぐものでした。また、大休正念や東明慧日など、中国出身の高僧が住持を務めました。

十刹としての禅興寺

禅興寺は、暦応4年（1341年）には十刹の第二位に列せられ、その後、延文3年（1358年）には第一位、康暦2年（1380年）には再び第二位、至徳3年（1386年）には関東十刹の第一位となりました。足利氏との直接的な関係が薄いにもかかわらず、これほどの高い地位を維持できたのは、鎌倉時代に既に叢林としての地位が確立していたためと考えられます。住持には桑田道海や約翁徳倹などの名が残っています。

堂宇の様子

五山記考異によれば、禅興寺には仏殿、法堂、僧堂、経蔵、山門、稜厳塔、昭堂などが存在しており、盛時にはこれ以上の規模を誇っていたと考えられています。

室町時代の禅興寺

康暦元年（1379年）には、関東公方足利氏満が関東管領上杉憲方に禅興寺の中興を命じました。上杉憲方は、出家後に禅興寺内に蘭渓道隆五世法孫の密室守厳を開山として塔頭明月院を建立しました。

戦国時代から江戸時代へ

永正6年（1509年）には、足利政氏が復興に尽力し、禅興寺八世の玉隠英璵が再興に貢献しました。これは後北条氏が鎌倉に入る以前の出来事であり、当時としては珍しい再興例です。天正9年（1581年）には、足利義昭が恵澄を住持に任命しており、この頃までは寺院としての機能が保たれていました。

禅興寺の終焉と明月院の存続

江戸時代に入り、延宝6年（1678年）には東陽道杲が住持となり、梵鐘の鋳造や本尊釈迦如来像の造立に尽力しました。しかし、貞享年間（1684年から1687年）頃には、仏殿一つが明月院に付属する形になり、禅興寺は次第に衰退していきました。禅興寺は明治元年に廃寺となりましたが、塔頭であった明月院は、独立した寺領を有し、檀那が関東管領上杉氏であったため、現在まで存続しています。

明月院の釈迦如来像

明月院に安置されている木造釈迦如来像の銘札によると、この像は天和2年（1682年）に禅興寺の本尊として造立されたものであり、仏師は三橋勘兵衛です。

脚注

河井恒久 等編 編「巻之三 禅興寺」『新編[[鎌倉志]]』 第5冊、大日本地誌大系刊行会〈大日本地誌大系〉、1915年、63-65頁。

関連項目

明月院
能満寺 (伊勢原市)
十刹
関東十刹

外部リンク

明月院の梅と歴史

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