秋田城

秋田城（あきたじょう/あきたのき）

秋田城は、現在の秋田県秋田市にあった古代の城柵です。733年に創建され、10世紀中頃まで出羽国北部の行政、軍事、外交、文化の中心地として機能しました。特に渤海との交流拠点としての役割が重要であり、発掘調査からもその痕跡が確認されています。2017年には続日本100名城に選定されました。

歴史・沿革

秋田城の起源は、733年に出羽柵が秋田村高清水岡に移転したことに遡ります。その後、760年頃に秋田城と改称されたと考えられています。

東北地方における朝廷の支配拡大

7世紀中葉から9世紀初頭にかけて、朝廷は東北地方の蝦夷を軍事的に制圧し、支配領域を拡大しました。708年には現在の山形県庄内地方が出羽郡として建郡され、712年には出羽国に昇格しました。この頃、出羽郡内に出羽柵が設置されたと考えられています。

秋田城の設置とその背景

秋田城は、朝廷の支配領域の北上に伴い出羽柵を移転したものと考えられます。当時の秋田地方は人口が希薄であり、秋田城の設置に伴い、周辺に蝦夷や柵戸移民が混在する集落が形成されたと推測されています。

秋田城の改称と機能強化

760年頃、「阿支太城」と表記されていた出羽柵は秋田城に改称されました。780年には、秋田城の停廃が検討されましたが、朝廷はこれを認めず、軍兵を派遣して防護を強化しました。これにより、出羽介が秋田城介として常駐し、出羽国北部の統治にあたることとなりました。

海上交流拠点としての役割

8世紀には、渤海国からの使節が頻繁に出羽国へ来着しました。秋田城は、渤海使や北方民族との外交施設としての役割を担っていたと考えられています。渤海使は、沿海州・サハリン・北海道を経由する北回り航路を利用して出羽に来航しており、秋田城は外国使節への対応を担う重要な拠点でした。

その後の変遷

804年に秋田城は停廃され、その機能は河辺府へ移されたとされます。しかし、実際にはこの時期に大規模な改修を受けており、秋田城を取り巻く環境が変化したことに伴う支配体制の再編が行われたと考えられます。

878年に発生した元慶の乱では、俘囚側が秋田城を一時占拠しました。この乱を鎮圧するため、藤原保則が派遣され、小野春風による懐柔策も行われました。その後、秋田城は復興整備されましたが、10世紀後半には基本構造と機能が失われたと考えられています。

秋田城国府説と非国府説

秋田城に出羽国の国府が置かれていたかどうかは、学説上の争点となっています。

秋田城国府説

平川南は、733年から804年まで秋田城に国府があったと推定しています。新野直吉は、733年に国府も秋田城に移転し、804年に河辺府へ、815年 - 819年に出羽郡井口に移ったとの見解を示しています。秋田城の発掘資料からは、国府で最終保管されるべき性質の資料が出土しており、この説を支持する根拠となっています。

秋田城非国府説

今泉隆雄は、出羽国国府は一貫して出羽郡内にあったと推測しています。また、国府の移転に関する記事と秋田城の停廃に関する記事を峻別する必要性を指摘しています。熊谷公男もこの立場を支持し、文献史学の立場から『続日本紀』などの解釈を根拠としています。

構造と遺構

秋田城は、丘陵地に築かれた城柵で、外郭と内郭の二重構造を持ちます。外郭には東西南北に城門が配置され、政庁は「コ」の字型の施設配置となっています。

外郭

外郭は東西・南北ともにおよそ550メートル、約30ヘクタールの広さを持ちます。塀の構造は5期に渡る変遷が見られ、9世紀初頭には築地塀から材木塀に変更されました。外郭には櫓が設けられ、およそ80 - 90メートル間隔で並んでいたと考えられています。

内郭と政庁

内郭にあたる政庁跡は、東西約94メートル、南北約77メートルの横長の長方形となっています。政庁の配置は、正殿の南面に広場を設け、左右に脇殿を配する「コ」の字型で、都城の様式と共通しています。政庁跡ではI期からVI期までの変遷が見られましたが、「コ」の字型の施設配置は全期を通じて維持されました。

大畑地区

城内東部の大畑地区では、掘立柱建物群、竪穴建物群、鍛冶工房群などの遺構が検出されています。この地区は、平安時代以降秋田城を支える生産施設として利用され、9世紀の前半から中頃にかけて最盛期を迎えました。

鵜ノ木地区

城郭外の鵜ノ木地区では、規則的に配置された大規模な掘立柱建物群の遺構と、水洗トイレの遺構などが検出されています。これらの遺構は、秋田城に附属した寺院の四天王寺跡とする見解や、都からの賓客や渤海使を迎えた迎賓館として使用されたのではないかとする見方があります。

出土した主な考古資料

人面墨書土器
胞衣壺
非鉄製小札甲
漆紙文書
和同開珎銀銭
木簡

秋田城跡の調査

江戸時代中期以降、秋田城跡の研究が行われるようになり、菅江真澄は高清水の丘が秋田城の所在地であると示しました。明治時代には大山宏による調査研究が重ねられ、その成果が後の発掘事業と史跡指定に結びつきました。1939年には国の史跡に指定され、以後、学術調査や緊急調査が行われることとなりました。

国営調査以降の展開

1958年に初めて大規模な発掘調査が行われ、1959年から1962年にかけて国直轄の発掘調査（国営調査）が行われました。調査の結果、外郭と政庁跡、鵜ノ木地区の遺構など、秋田城の輪郭を浮かび上がらせる多数の遺構が検出されました。1972年からは秋田市教育委員会の秋田城跡調査事務所が継続して発掘調査を行っています。

史跡整備と復元

1980年代からは、出土した遺物を公開展示して市民に理解を深めてもらい、史跡を歴史に親しむ場とする、史跡の整備活用のあり方が模索されるようになりました。1998年には外郭東門の復元工事が完成し、2022年には秋田城跡歴史資料館と秋田城跡を結ぶ歩行者用連絡橋が開通しました。

秋田城跡歴史資料館

秋田城跡で発掘された資料などを展示するとともに、史跡の保護管理、調査研究にあたる総合拠点施設です。館内では出土した資料の展示のほか、秋田城のジオラマや、赤外線カメラによって漆紙文書の文字を読み取る事が出来る体験コーナーが設けられています。

利用案内

開館時間: 9:00 - 16:30
休館日: 年末年始（12月29日 - 1月3日）
入館料: 個人：一般210円（20名以上の団体で160円）、高校生以下無料

交通アクセス

バス: JR秋田駅より、秋田中央交通バス「将軍野線」または「寺内経由土崎線」に乗車し「秋田城跡歴史資料館前」下車。秋田駅より約20分。
* 自家用車: 秋田自動車道・秋田北インターチェンジより約15分。

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