筑紫広門

筑紫広門の生涯

筑紫広門は、戦国時代から江戸時代初期にかけての武将・大名であり、肥前国勝尾城を居城としていました。筑紫氏は、足利直冬の末裔、または少弐氏の庶流とも言われる名族で、筑前国御笠郡筑紫を本拠地とする国人でした。

生い立ちと家督相続

弘治2年（1556年）、筑紫惟門の子として生まれた広門は、父がまもなく亡くなったため家督を継ぎました。父・惟門は大友氏に降伏しており、広門もその影響下で成長しました。

大友氏からの離反と戦い

天正6年（1578年）の耳川の戦いで大友氏が大敗すると、広門は秋月種実、原田隆種、宗像氏貞、龍造寺隆信らと共に反旗を翻し、大友氏と激しく争いました。立花道雪や高橋紹運といった名将たちとも幾度となく戦火を交えました。この時期、弟の筑紫晴門は鍋島直茂の養子となり佐賀へ移りました。

大友氏への再従属と島津氏との戦い

しかし、天正14年（1586年）には、高橋紹運の次男・高橋統増（後の立花直次）と娘を縁組し、再び大友氏の傘下に入りました。同年に起こった岩屋城の戦いでは大友氏に味方し、島津氏と戦いましたが、領地を奪われてしまいます。肥前鷹取城攻防戦では、弟・晴門が島津方の武将と一騎打ちの末に相討ちとなり、広門自身も捕虜となり筑後大善寺に幽閉されました。

豊臣秀吉の九州平定と所領回復

翌年、豊臣秀吉の九州平定が始まると、島津軍は撤退し、広門は幽閉先から脱出して家臣を集め、旧領を奪還しました。その功績により、筑後国上妻郡に18,000石の所領を与えられました。

文禄・慶長の役と関ヶ原の戦い

文禄元年（1592年）から始まった文禄・慶長の役にも参戦し、小早川隆景の部隊に属して全羅道で奮戦しました。碧蹄館の戦いや星州谷城防戦、加徳島の戦いなどで武功を挙げました。慶長5年（1600年）の関ヶ原の戦いでは、嫡男の主水正広門が西軍に与して大津城を攻めましたが、広門自身は東軍として筑後の居城に籠城しました。西軍が敗北すると、広門は徳川家康によって所領を没収され、改易となりました。

晩年

改易後は剃髪して夢庵と号し、黒田長政や加藤清正を頼り、加藤家改易後は細川氏を頼りました。元和9年（1623年）に生涯を閉じました。

逸話

島津軍に敗れて幽閉されていた際、広門は「忍ぶれば　いつか世に出ん折やある　奥まで照らせ　山のはの月」という和歌を詠んだとされます。しかし、この歌を聞いた人々は「昔は広門、今は狭門」と嘲笑したと伝えられています。しかしながら、この和歌の通りに旧領を回復しました。

子孫

広門の死後、跡を継いだ主水正広門は、大坂の陣での戦功により3,000石の所領を与えられ、子孫は旗本寄合席として存続しました。また、実子の栄門（掃部）は柳河藩立花氏に、重門（左近）は熊本藩細川氏に仕官しました。さらに、四男の辰門は若江五右衛門を名乗り、その子孫は陸奥二本松藩丹羽家に仕えたとされています。娘の永雲院は立花直次の後妻となり、その子である立花忠茂は、立花宗茂の養子となり筑後柳川藩主となりました。

まとめ

筑紫広門は、戦国時代から江戸時代初期という激動の時代を生き抜いた武将であり、大友氏、島津氏、豊臣氏、徳川氏といった時の権力者たちとの関わりの中で、その生涯を翻弄されました。しかし、その武勇と知略は多くの人々に語り継がれ、彼の子孫たちは、各藩でその名を残しました。彼の波乱に満ちた生涯は、戦国時代の武士の姿を今に伝える貴重な歴史として、深く記憶されるべきでしょう。

もう一度検索