菅原清公

菅原清公（すがわら の きよきみ/きよとも）

菅原清公は、平安時代初期に活躍した公卿であり、卓越した才能を持つ文人でした。遠江介・菅原古人の四男として生まれ、その生涯は学問と官僚としての活動に彩られています。

生い立ちと学問

父・古人は著名な儒学者でしたが、家は貧しく、清公は若い頃から苦労を重ねました。しかし、彼は幼少から経書や史書を熱心に学び、その才能を開花させます。延暦3年（784年）には皇太子・早良親王に仕え、延暦8年（789年）には文章生に選ばれるという若さで才能を発揮しました。その後も学業に励み、文章得業生として美濃少掾に任官、延暦17年（798年）には対策に及第し、大学少允に昇進しました。

遣唐使としての経験

延暦21年（802年）には遣唐判官に任ぜられ、近江権掾も兼務します。延暦23年（804年）、最澄と共に唐に渡り、遣唐大使・藤原葛野麻呂と共に皇帝・徳宗に謁見し、その才能を認められました。翌年帰国後、従五位下・大学助に叙任され、その後の官僚としてのキャリアを築いていきます。

地方官としての活躍

延暦25年（806年）には尾張介に転任し、平城朝から嵯峨朝にかけて地方官として活躍しました。国司として、後漢の劉寛のように刑罰を用いない統治を行ったと伝えられています。

中央官僚としての昇進

弘仁3年（812年）に帰京後、左京亮、大学頭、主殿頭、左右少弁、式部少輔など様々な要職を歴任しました。弘仁7年（816年）には従五位上、弘仁10年（819年）には正五位下・文章博士、弘仁12年（821年）には従四位下・式部大輔へと順調に昇進しました。特に弘仁9年（818年）には、朝廷の儀式や衣服の唐風化、位記の中国風への変更、宮殿や門閣の扁額製作に深く関与しました。

嵯峨天皇との逸話

左中弁から右京大夫に転じた際、嵯峨天皇に京職大夫の相当位を尋ねられ、正五位相当と答えたところ、直ちに京職大夫の相当位が従四位に改められたという逸話が残っています。

晩年と死

淳和朝に入ると、天長元年（824年）に播磨権守に左遷されますが、翌年には公卿らの上奏により再び京に戻り、文章博士に復帰。その後、弾正大弼・左京大夫も兼任し、天長4年（827年）に従四位上、天長8年（831年）に正四位下へと昇進しました。仁明朝の承和6年（839年）には従三位に叙せられ公卿となりますが、高齢と病のため参内が困難になり、承和9年（842年）に73歳でこの世を去りました。没後、孫の菅原道真が天神として祀られたことで、清公もまた天満宮に祀られています。

後世への影響

清公は、人名のつけ方を唐風に改めたことで知られています。また、文章博士の地位を高め、律令制下の学問官僚のあり方に大きな影響を与えました。彼の私邸には多くの学生が集まり、その廊下は「菅家廊下」と呼ばれるようになりました。清公の存在は、後の菅原氏が文章博士を世襲するきっかけとなり、学閥形成を進めました。その一方で、他の文章博士からの反感を買い、菅原氏と反対派の対立は、後の道真左遷の一因となったとする見方もあります。

人物像

清公は人徳があり、生き物を愛し、殺生を好まなかったと伝えられています。晩年は仏像製作や写経に励む一方、常に名薬を服用して若々しい容貌を保っていたといいます。漢詩人としても名を残し、『凌雲集』に漢詩作品が収録されているほか、家集『菅家集』も存在します。さらに、『令義解』の編纂や、嵯峨天皇、仁明天皇への侍読としても活躍しました。

官歴

以下は菅原清公の主な官歴です。

延暦8年（776年）：文章生
時期不詳：文章得業生、美濃少掾
延暦17年（785年）：対策及第
時期不詳：大学少允
延暦21年（789年）：遣唐判官、兼近江権掾
時期不詳：正六位上
延暦24年（805年）：従五位下、大学助
延暦25年（806年）：尾張介
弘仁3年（812年）：左京亮、大学頭
弘仁4年（813年）：主殿頭
弘仁5年（814年）：右少弁、左少弁、式部少輔
弘仁7年（816年）：従五位上、兼阿波守
弘仁10年（819年）：正五位下、兼文章博士
弘仁12年（821年）：従四位下、式部大輔、左中弁、右京大夫
弘仁14年（823年）：弾正大弼
天長元年（824年）：播磨権守
天長2年（825年）：兼文章博士
天長3年（826年）：弾正大弼、兼信濃守、左京大夫、文章博士
天長4年（827年）：従四位上
天長8年（831年）：正四位下
天長11年（834年）：兼摂津権介
承和2年（835年）：兼但馬権守
承和3年（836年）：兼但馬守、左京大夫文章博士
承和6年（839年）：従三位
承和9年（842年）：薨去（文章博士従三位）

系譜

父：菅原古人
母：不詳
子女：菅原興善、菅原忠臣、菅原善主、菅原是善、秋篠清成？

参考文献

森田悌『続日本後紀』（上下巻）、講談社〈講談社学術文庫〉、2010年

関連項目

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