葷粥

葷粥（くんいく）とは

葷粥（くんいく、拼音: Xūnyù）は、古代中国の史書に登場する遊牧民族です。主に中国北方に居住していたとされ、匈奴の前身となった民族の一つと考えられています。文献によっては、獯鬻（Xūnyù）、薰育（Xūnyù）、薰粥（Xūnyù）、獯粥（Xūnyù）、薰鬻（Xūnyù）など、複数の表記が見られます。

獫狁（けんいん）との関係

『晋書』四夷伝には「夏は薰鬻といい、殷は鬼方といい、周は獫狁といい、漢は匈奴といった」と記述されており、薰鬻、鬼方、獫狁、匈奴は、同じ民族を指す異なる呼称であると解釈されることがあります。しかし、史書において「獫狁、葷粥」と併記される例も多く、これらは別の部族である可能性も示唆されています。これらの部族は後にモンゴル高原を統一した匈奴の前身とされていますが、詳しい関係性は解明されていません。

起源に関する伝説

『史記索隠』には、夏の桀王（けつおう）が殷の湯王（とうおう）によって放逐された後、その子である獯粥（葷粥）が、桀王の妾を妻とし北方に逃れ、遊牧生活を始めたという記述があります。この説によれば、葷粥はもともと人の名前であり、部族名はその始祖に由来すると考えられます。ただし、この時代の記述は伝説的な要素が強く、史実としての信憑性は定かではありません。

歴史

葷粥に関する最古の記録は、『孟子』梁恵王下に見られます。この箇所では、周の大王である古公亶甫（ここうたんぽ）が、獯鬻に仕えたという故事が引用されています。また、黄帝の時代には、黄帝の統一事業によって北へ駆逐されたとされています。

唐虞（とうぐ）の時代には、中国北方に山[[戎]]、獫狁、葷粥の3つの遊牧民族が存在し、周の先王時代には、古公亶父が統治する豳（ひん）が葷粥、戎、狄の襲撃を受け、古公亶父は領民を戦火に巻き込むことを嫌い、岐山の麓へと移住しました。その後、領民や近隣の人民も古公亶父を慕って移住し、彼は戎狄の風俗を退け、都市を築き、国を治めたとされています。

その後、葷粥は匈奴と名を変え、モンゴル史上初となる大遊牧国家を築き上げることになります。

匈奴との関係

『史記索隠』や『漢紀』、『晋書』などの史書には、葷粥が匈奴の旧名であるという記述があります。例えば、『史記索隠』には、夏の桀王の子である獯粥が北方に避居し、その地で匈奴と呼ばれるようになったという説が記されています。また、『晋書』には「夏は薰鬻といい、殷は鬼方といい、周は獫狁といい、漢は匈奴といった」とあり、これらの名称が同一の民族を指すことが示唆されています。一方、内田吟風は、葷粥、獫狁、匈奴は同一系統の民族ではあるものの、モンゴル高原で交代した別の種族であると主張しています。

このように、葷粥と匈奴の関係については諸説あり、史料が限られているため、明確な結論は出ていません。

まとめ

葷粥は、古代中国の北方で活動した遊牧民族であり、匈奴の前身であると考えられています。その歴史や起源には不明な点が多く、今後の研究が待たれるところです。史書における記述は断片的であり、伝説的な要素も含まれるため、その実態を正確に把握することは困難です。しかし、中国の歴史を語る上で、重要な役割を果たした民族であることは間違いありません。

参考文献

『孟子』梁恵王下
『史記』五帝本紀、周本紀、匈奴列伝
『漢書』匈奴伝
『後[[漢書]]』南匈奴列伝
『魏書』帝紀第一
『晋書』四夷伝
内田吟風『北アジア史研究 匈奴篇』（1975年、同朋舎出版、ISBN 481040627X）

関連項目

鬼方
匈奴
獫允
山[[戎]]
戎
狄
東夷
* 四夷

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