薄諸光

薄諸光（すすき もろみつ）：激動の時代を生きた公家の悲劇

薄諸光は、戦国時代から安土桃山時代にかけて生きた公家であり、堂上家である薄家の最後の当主として知られています。父は権大納言を務めた山科言継、母は葉室頼継の娘です。幼名は鶴松丸と名付けられました。

薄家を継ぐまで

当初、諸光は勘解由小路在富などの養子縁組の話がありましたが、実現には至りませんでした。弘治3年（1557年）頃、参議であった薄以緒の養子となり、橘氏の流れを汲む堂上家である薄家を継承することになります。

官僚としてのキャリア

弘治3年（1557年）に従五位下に叙爵し、翌弘治4年（1558年）に元服。昇殿を許され、美濃守、次いで左兵衛佐に任官しました。永禄4年（1561年）には従五位上に昇叙されています。しかし、永禄6年（1563年）には位記を止められ、改めて六位蔵人に補せられ、左近衛将監・式部大丞を兼任しました。その後、10年以上にわたり六位蔵人を務め、天正6年（1578年）には以継から諸光へと改名しています。

天正8年（1580年）に従五位下に叙爵し、天正9年（1581年）には従五位上、天正10年（1582年）には正五位下・左兵衛権佐に叙任されました。

突然の悲劇

天正10年（1582年）6月に本能寺の変が勃発。その後、清洲会議を経て、羽柴秀吉が山城国・河内国・丹波国を支配下に置きます。秀吉は同年9月には牛への役銭賦課を禁じますが、この影響を受け、諸光は牛役銭徴集を咎められて幽閉されてしまいます。そして同年10月5日、秀吉の命令により自害を強いられ、39歳という若さでその生涯を閉じました。諸光の死と共に、薄家は断絶しました。

薄家は紅粉屋公事・牛公事・長坂口黒木公事・青花公事などの権益を保持する公家であり、これらの権益を巡って秀吉によって処罰されたとも考えられています。

人物像

篳篥の名手としても知られていました。

官歴

弘治3年（1557年）4月11日：従五位下
弘治4年（1558年）2月20日：元服、昇殿、美濃守。6月：左兵衛佐
永禄4年（1561年）12月5日：従五位上
永禄6年（1563年）4月18日：逆退、六位蔵人、左近衛将監、禁色、拝賀（止位記補六位蔵人例）。7月14日：式部大丞
天正6年（1578年）11月17日：諸光に改名
天正8年（1580年）11月1日：従五位下、左衛門権佐
天正9年（1581年）2月27日：従五位上
天正10年（1582年）正月6日：正五位下。日付不詳：左兵衛権佐。日付不詳：勅勘。日付不詳：出頭。10月5日：卒去

系譜

父：山科言継（1507-1579）
母：葉室頼継の娘
養父：薄以緒
妻：薄以緒の娘（東向）（?-1585） - 諸光と共に自害
子女：深井定基（生母不明）

参考文献

正宗敦夫編『諸家伝』日本古典全集刊行会、1940年
湯川敏治編『歴名土代』続群書類従完成会、1996年
清水克行「山科言継をめぐる三人の女性:実母・愛人・長女」『史観』第154号、早稲田大学史学会、2006年3月

関連項目

* 楠木正忠 - 伊勢国の小大名で、楠木氏の当主。諸光の幼少時、正忠への猶子縁組を結ぶ交渉があった。

薄諸光は、激動の時代に翻弄され、非業の死を遂げた公家の一人として、歴史にその名を刻んでいます。

もう一度検索