蘇則

蘇則（そ そく）

蘇則（生年不詳 - 223年）は、後漢末期から三国時代の魏にかけての政治家で、字は文師といい、司隷扶風郡武功県の出身です。彼は若い頃から学問と品行で知られ、孝廉や茂才に推挙されましたが、官職には就きませんでした。その剛直な性格は、汲黯を尊敬するほどでした。

三輔の混乱と安定への移住

興平年間に三輔が混乱すると、蘇則は飢えに苦しみ、安定郡へ移住しました。富豪の師亮を頼りましたが冷遇されたため、「天下が安定した暁には、必ずこの地に戻り太守となって、俗物を挫いてみせる」と宣言し、馮翊の吉茂らと太白山に隠遁し、読書にふけりました。

酒泉太守から安定太守へ

後に蘇則は酒泉郡の太守となり、その後、安定郡や武都郡の太守を歴任し、各地でその権威と名声を確立しました。安定太守時代には、かつて冷遇した師亮らが逃亡を図りましたが、蘇則は彼らを安心させ、謝礼を贈ったといいます。

曹操への協力と金城太守としての活躍

曹操が張魯討伐に赴いた際、蘇則はその軍の先導を任されました。張魯を破ると、下弁の氐族を安定させ、河西の街道を開通させ、金城太守に転任しました。当時の金城郡は動乱で荒廃していましたが、蘇則は羌族を招き食糧を確保、禁令を設け信賞必罰を徹底し、自ら耕作を教えました。その結果、その年は大豊作となり、わずか10ヶ月の間に戸数は数百戸から数千戸へと激増しました。隴西郡で李越が反乱を起こすと、蘇則は羌族を率いて鎮圧しました。

護羌校尉として

曹操の死後、西平郡の麹演が反逆し護羌校尉を名乗ると、蘇則はこれを攻撃し降伏させました。その功績により護羌校尉に任命され、関内侯の爵位を与えられました。その後、麹演が再び反乱を起こすと、蘇則は張既の協力を得て武威を救援し、異民族を降伏させました。麹演は降伏を装い蘇則を暗殺しようとしましたが、蘇則は見破り、逆に斬り殺しました。さらに、張進らを討伐し、黄華を降伏させ、河西を平定しました。

中央での活躍と晩年

後に中央に召され侍中となると、董昭の膝を枕にすることを拒否し、その剛直さを示しました。献帝が曹丕に禅譲した際、献帝が崩御したと勘違いし喪に服して号泣しましたが、後に勘違いに気づき後悔しました。曹丕から西域との交易について意見を求められた際には、威光が届けば自然とやってくると進言しました。狩りの際、役人が鹿を逃がしたことで曹丕が激怒し、彼らを処刑しようとした際には、命がけで諫め、処刑を止めさせました。

223年、東平の相に左遷される途中で病死し、剛侯と諡されました。

子孫

子の蘇怡が後を継ぎ、その死後は弟の蘇愉が継ぎました。蘇愉は太常・光禄大夫・尚書を歴任し、涼州刺史として鮮卑の乱で戦死しました。蘇愉の子の蘇紹は呉王の師となり、詩をよくし、その弟の蘇慎は左衛将軍となりました。

評価

陳寿は、蘇則を「威光によって動乱を平定し、政治手腕に優れ、剛直で厳しい態度を称賛するに値する」と評価しました。一方、孫盛は、蘇則が献帝のために泣いたことについて、「新しい王朝に仕えながら、二心を抱き憤怒をあらわにしたのは、士としてのあるべき姿ではない」と批判しました。

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