張既

張既（ちょう き）

張既（ちょう き、生年不詳 - 223年）は、後漢末期から三国時代の魏にかけての武将・政治家で、字は徳容（とくよう）。司隸左馮翊高陵県（しれいさほうよくこうりょうけん、現在の陝西省西安市高陵区）の出身です。彼は、その卓越した才能で曹操に仕え、魏の安定と発展に大きく貢献しました。

生涯

張既は、容姿端麗で文章力に優れていたと伝えられています。若い頃からその才能は周囲に認められており、游殷（ゆういん）という人物からは将来を嘱望されていました。

当初は郡の小役人としてキャリアをスタートさせましたが、その有能さから徐々に昇進し、孝廉に推挙されるまでになりました。その後、曹操にその才能を見出され、司空府に招かれましたが、新豊県令（しんほうけんれい）に任命されています。

建安7年（202年）、曹操が袁尚（えんしょう）と対峙する中、郭援（かくえん）や高幹（こうかん）らが関中の将軍たちを味方に引き入れようと画策しました。この時、張既は曹操の命を受けた鍾繇（しょうよう）の指示の下、関中の有力者であった馬騰（ばとう）らを説得し、曹操への協力を取り付けました。この功績により、張既は武始亭侯（ぶしていこう）に封じられました。

その後も、高幹の反乱鎮圧や、馬超（ばちょう）ら関中の豪族による反乱鎮圧に貢献し、その功績が認められ京兆尹（けいじょういん）に任じられました。京兆尹として、流民の帰還を促し、荒廃した地域の復興に尽力しました。

魏が成立すると、尚書（しょうしょ）に任じられ、後に雍州刺史（ようしゅうしし）となりました。張魯（ちょうろ）討伐では、別働隊を率いて氐族（ていぞく）を討伐し、兵糧を確保しました。張魯が降伏すると、漢中の住民を長安や三輔に移住させることを曹操に進言し、人口の回復に貢献しました。

建安23年（218年）には、曹洪（そうこう）と共に劉備軍の呉蘭（ごらん）を撃退し、夏侯淵（かこうえん）に従って宋建（そうけん）討伐にも参加し、数々の武功を挙げました。

曹操が漢中からの撤退を検討した際、劉備が武都の氐族を味方につけることを懸念し、張既に策を尋ねました。張既は氐族を北方に移住させることを提案し、曹操はこれを受け入れました。

建安25年（220年）に曹丕（曹魏の文帝）が王位に就くと、涼州刺史（りょうしゅうしし）に鄒岐（すうき）が任命されましたが、地域の有力者たちはこれに従いませんでした。張既は蘇則（そそく）と協力して事態の収拾に当たりました。

その後も、涼州で発生した反乱を鎮圧するなど、その手腕を発揮しました。特に、伊健妓妾（いけんぎしょう）や治元多（ちげんた）らの反乱鎮圧では、夏侯儒（かこうじゅ）や費曜（ひよう）の到着を待たずに進軍し、反乱軍を打ち破るという功績を挙げました。

雍州・涼州において十数年にわたり優れた統治を行ったことで、張既の名声は高まりました。彼は、かつて自身を鞭打った徐英（じょえい）との関係修復に努め、その謙虚な姿勢は人々に感銘を与えました。また、かつての恩人である游殷の子、游楚（ゆし）を漢興太守（かんこうたいしゅ）に取り立てました。

黄初4年（223年）に死去。彼の死後、子の張緝（ちょうしゅう）が後を継ぎ、少子の張翁帰（ちょうおうき）は関内侯（かんないこう）に封じられました。曹叡（そうえい、明帝）の時代には、粛侯（しゅくこう）の諡号が追贈されました。

張既は、その卓越した政治手腕と軍事的な才能で、魏の安定と発展に大きく貢献した人物として、歴史に名を残しています。

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