覃振

覃振（たん しん）：激動の時代を駆け抜けた革命家・政治家

覃振は、清朝末期から中華民国初期にかけて活躍した革命家であり、政治家です。彼は、中国同盟会時代からの革命運動の熱心な支持者であり、後に中国国民党では右派に位置する西山会議派に属しました。その生涯は、激動の時代における革命と政治の複雑な変遷を体現しています。

革命運動への参加

1902年、覃振は桃源県の漳江書院に入学し、ここで生涯の盟友となる宋教仁と出会いました。翌年、常徳府の中学校に進学しますが、在学中に清朝官吏の腐敗を糾弾する演説を行ったことが原因で退学処分を受けました。しかし、この出来事をきっかけに革命家としての道を決意します。その後も文筆活動を通じて革命の必要性を訴え続けたため、官憲の取り締まりが厳しくなり、日本への亡命を余儀なくされました。日本では弘文学院で学びながら、革命活動を続けました。

1904年、覃振は帰国し、宋教仁、黄興、陳天華、劉揆一らと反清蜂起を計画しましたが、事前に計画が漏洩し失敗に終わりました。その後、再び日本へ渡り、早稲田大学に入学。1905年秋には、東京で中国同盟会に加入し、評議部評議員に選出され、革命運動の中心人物の一人となっていきます。その後も、中国と日本を往来しながら革命活動に尽力しますが、1908年には蜂起計画が発覚し、清朝によって逮捕されてしまいます。

辛亥革命と孫文との連携

1911年10月、武昌起義（辛亥革命）が勃発すると、覃振は釈放され、湖北都督の黎元洪のもとで革命の指揮に加わります。その後、黎と湖南都督の譚延闓から委任を受け、両湖の代表として南京へ赴きました。1912年、中華民国臨時政府が成立すると、臨時参議院議員に選出され、翌年には衆議院議員にも選出されました。

1913年3月、盟友の宋教仁が暗殺されると、覃振は袁世凱を暗殺の主犯として激しく非難し、警察の取り締まりを逃れるため、再び日本へ亡命しました。1914年には、黄興支持派の欧事研究会に加入しますが、その後、孫文の中華革命党に転じます。覃振は革命活動の統一を主張し、欧事研究会の解散を提唱しました。1915年、反袁活動中に日本の警察に一時拘束されています。

1915年12月に護国戦争が勃発すると、覃振は湖南に戻り、親袁派の湖南都督湯薌銘の討伐に参加し、翌年7月に彼を敗走させました。その後、中華革命党の地方機関である正誼社を湖南省に設立し、副社長に就任しています。1917年に孫文が護法運動を開始すると、覃振もこれに参加し、南方政府派の各軍と連携して安徽派の湖南都督傅良佐を駆逐することに成功しました。

その後、覃振は広州に移り孫文の側近として活躍し、1921年5月には総統府参議兼法制委員に任命されます。同年冬に孫文が北伐を開始すると、党務を委ねられ、湖南などで宣伝活動に奔走しました。1922年10月、孫文が中国国民党の改組を開始すると、覃振が党章の起草を担当しています。

国民党での活動と西山会議派

1924年1月、国民党第一回全国代表大会で、覃振は中央執行委員に選出され、以後、第四期まで連続で再選されています。大会後、漢口執行部常務委員に任ぜられ、両湖での党勢拡大に尽力しました。しかし、覃振は孫文が推進する国共合作には内心反対していました。

1925年3月に孫文が亡くなると、覃振は反共右派としての立場を鮮明にし、11月23日には西山碧雲寺で開かれた反共右派独自の会議に参加、西山会議派と見なされるようになります。翌年1月には、主流派から警告処分を受けますが、3月には西山会議派が上海で開いた独自の全国代表大会にも参加しました。

1927年に蔣介石が上海クーデター（四・一二政変）を起こして南京で国民政府を樹立すると、西山会議派は蔣介石に合流しました。同年9月、南京、上海、武漢の三派が合流し、覃振は中央特別委員会宣伝部委員に選出されました。しかし、合流後も国民党内での権力闘争は続き、同年12月には覃振を含む西山会議派幹部の多くが停職処分を受け、北平に逃れました。

1930年、反蔣各派の同盟成立に奔走し、反蔣派による北平拡大会議の開催に成功しましたが、中原大戦の敗北により反蔣派は瓦解し、覃振も下野しました。

晩年

1931年12月、満洲事変に伴う各派大同団結が実現し、蔣介石が一時的に下野すると、覃振は立法院副院長として復帰しました。この時、立法院長に就任した張継が実際には就任せず、後任の孫科も正式に就任しなかったため、覃振が院長代理を務めました。1935年には司法院副院長に転じ、中央公務員懲戒委員会委員長、国民政府委員なども兼任しました。また、中華民国法学会を創設するなど、法曹界でも活躍しました。

日中戦争終結後、覃振は喘息を患い上海で治療を受けましたが、1947年4月18日に63歳で亡くなりました。

覃振の生涯は、革命の理想に燃え、激動の時代を駆け抜けた人物の足跡を今に伝えています。

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