覚恕

覚恕（かくじょ）

覚恕は、戦国時代の天台宗の僧であり、天台座主を務めた人物です。後奈良天皇の皇子として生まれましたが、親王宣下は受けていません。後世では「覚恕親王」「覚恕法親王」と尊称されることもありますが、実際には親王ではありませんでした。正親町天皇の異母弟とされますが、実際には異母兄であったと考えられています。

生涯

覚恕は、後柏原天皇の皇子である知仁親王（後の後奈良天皇）の皇子として生まれました。大永5年（1525年）に延暦寺の子院である曼殊院の門跡、慈運を師として得度しました。天文6年（1537年）に慈運が亡くなると、曼殊院の門跡と北野天満宮の別当を相続しました。天文22年（1553年）には、常陸千妙寺から住持の亮珎を招き、台密三昧流の灌頂を受けています。弘治3年（1557年）には准三宮の宣下を受け、金蓮院准后と称されました。永禄5年（1562年）には、伏見宮から青蓮院に入っていた尊朝法親王の得度で戒和上を務めています。元亀元年（1570年）には、第166世天台座主に補任されました。

比叡山焼討ち

元亀2年（1571年）9月12日、織田信長による比叡山焼討ちによって、覚恕は大きな試練に見舞われました。この事件は、織田信長と対立する朝倉氏の軍兵を匿ったことが原因とされています。覚恕は事件の5日前に朝廷に相談を持ち掛け、2日後の重陽の節句にも参加していたため、事件当日は京に滞在しており難を逃れましたが、根本中堂をはじめとする比叡山の全山が攻撃を受け、焦土と化しました。この事件を受け、覚恕は天台座主の辞任を表明しましたが、実際には座主として扱われ続けました。

元亀3年（1572年）には、三塔執行代が武田氏に比叡山再興を要請する際の仲介を行っています。一説によると、武田信玄は延暦寺を身延山に移転する計画を立てていたとも言われていますが、実現には至りませんでした。同年、覚恕の斡旋により信玄は権僧正に任じられています。

その後

比叡山焼討ち後は曼殊院に戻っていたとされており、天正元年（1573年）には朝廷の行事に参加していた記録が残っています。同年末に病を発症し、竹田定加の診療を受けましたが、翌年早々に亡くなりました。その後、門弟である青蓮院尊朝が天正12年（1584年）に天台座主に補任されるまで、天台座主は空位となりました。比叡山の復興は、信長の死後、尊朝や正親町天皇らの尽力によって行われることになります。

文化人として

覚恕は、青蓮院流の書をよくし、「真如堂供養弥陀表白」「金曼表白」などの作品があります。また、和歌や連歌も好み、歌集として「覚恕百首」が残っています。正親町天皇とは親密な関係を築いており、永禄年間には誠仁親王の手習を担当しました。

登場作品

テレビドラマ

『麒麟がくる』（2020年・NHK大河ドラマ　演：春風亭小朝）

脚注

注釈

特になし

出典

特になし

参考文献

『国史大辞典』（吉川弘文館）
多賀宗隼「覚恕」第3巻（1983年）
岩沢愿彦「延暦寺の焼討」第2巻（1980年）
『日本歴史地名大系』（平凡社）
茨城県の地名（1982年）
滋賀県の地名（1983年）
『大日本史料』（東京大学）
第10編之6（1938年）
第10編之17（1982年）
第10編之19（1988年）
第10編之20（1991年）

関連項目

* 畿内・近国の戦国時代

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