近東の紛争一覧

近東の紛争史：古代から中世まで

近東、現代で言う中東地域は、歴史を通じて数多くの紛争の舞台となってきました。本稿では、青銅器時代から中世に至るまでの主要な紛争を概観し、その背景と影響を掘り下げます。

青銅器時代の紛争

古代エジプト

エジプト初期王朝時代には、上エジプトと下エジプトが統合（紀元前3100年頃）され、統一国家が成立しました。しかし、エジプト第2中間期には、ヒクソスがエジプトを征服（紀元前1600年頃）し、一時的に支配しました。その後、エジプト新王国時代には、トトメス3世がメギドの戦い（紀元前1457年）でカナン連合軍を破り、勢力を拡大しました。

古代メソポタミア

シュメール初期王朝時代には、都市国家間の抗争が頻発しました。キシュのエンメバラゲシ王はエラムを征服（紀元前2500年頃）し、その息子アッガはウルクを包囲しました。ウルクのエンメルカルはアラッタ市を包囲し、エンシャクシュアンナはシュメール全土の覇権を主張しました。ラガシュのエアンナトゥムはウル、ニップルなどを征服し、一時的に覇権を握りました。

アダブ市のLugal-Anne-Munduは地中海からザグロス山脈に至る広大な地域を服従させました（紀元前2500年頃）。ウンマのルガルザゲシはキシュ、ラガシュ、ウルなどを征服しました（紀元前2295-2271年）。

アッカド帝国

サルゴン王はメソポタミアの大部分を征服し、広大な帝国を建設しました（紀元前2270年頃）。しかし、グティ人の侵入により、アッカド帝国は衰退しました。

ウル第三王朝

ウル・ナム王はラガシュを征服し、ウル第三王朝を築きましたが、エラムの侵攻により滅亡しました（紀元前1940年頃）。

バビロン第一王朝

アムル人のスム・アブムはカザールからの独立を勝ち取り、ハンムラビ王は近隣の王国との戦争に勝利し、バビロンの支配を拡大しました（紀元前1728-1686年）。

古代レバントとアナトリア

レバントでは、シディムの谷の戦い（紀元前2000年頃）が知られています。アナトリアでは、ハイクとニムロドの戦い（紀元前2492年頃）、ハットゥシリ1世とムルシリ1世の征服活動（紀元前1650-1600年頃）がありました。

鉄器時代の紛争

古代エジプト

ラムセス2世は近東で戦役を展開し、カデシュの戦い（紀元前1274年）でヒッタイトと衝突しました。エジプト第3中間期には、クシュがエジプトに侵攻（紀元前727年）し、メギドの戦い（紀元前609年）ではエジプトとユダ王国が戦いました。

古代メソポタミア

アッシリアのトゥクルティ・ニヌルタ1世はバビロンを占領し、メソポタミアでの覇権を確立しました（紀元前1232-1225年頃）。新アッシリア時代には、カルカルの戦い（紀元前853年）やイスラエル征服（紀元前721年）などがありました。

新バビロニア時代には、ニネヴェの戦い（紀元前612年）やカルケミシュの戦い（紀元前605年）が起こりました。ユダヤ・バビロニア戦争では、ネブカドネザル2世がエルサレムを包囲しました（紀元前597年、587年）。

アケメネス朝の征服

キュロス大王はメディア王国を滅ぼし、アケメネス朝を築きました。プテリアの戦い（紀元前547年）やサルディス包囲戦（紀元前547年）、オピスの戦い（紀元前539年）を経て、広大な帝国を築き上げました。

古代の紛争：ギリシャ・ペルシア支配

イオニアの反乱（紀元前499-493年）やペルシアのギリシャ侵攻（紀元前492-478年）がありました。ディアドコイ戦争（紀元前322-275年）やシリア戦争（紀元前274-168年）など、ヘレニズム時代も紛争が続きました。

ローマ、パルティア、サーサーン朝の支配

ミトリダテス戦争（紀元前88-63年）やパルティア戦争、ユダヤ・ローマ戦争（紀元66-136年）、ローマ・サーサーン朝戦争などが起こりました。東ローマ・サーサーン戦争（421-628年）では、アンティオキアやエルサレムが包囲され、激しい戦いが繰り広げられました。

中世の紛争

イスラーム教徒の征服

7世紀には、イスラーム教徒がレバント、エジプト、ペルシアを征服しました。ヤルムークの戦い（636年）やカーディシーヤの戦いなどが重要な転換点となりました。アッバース朝時代には、アラブ・東ローマ戦争が頻発し、セルジューク・東ローマ戦争も起こりました。

十字軍

11世紀末から13世紀にかけて、十字軍が派遣され、エルサレムやアッコが占領されました。アイユーブ朝のサラディンは十字軍に対抗し、ヒッティーンの戦い（1187年）で勝利しました。モンゴル帝国の侵攻もこの地域に大きな影響を与え、アイン・ジャールートの戦い（1260年）でマムルーク朝がモンゴル軍を破りました。

オスマン帝国の台頭

15世紀には、オスマン帝国が台頭し、東ローマ帝国を滅ぼしました。オスマン・ペルシア戦争が16世紀から19世紀にかけて繰り広げられ、ジェラーリーの反乱やクレタ戦争なども起こりました。18世紀から19世紀にかけては、ムハンマド・アリーの戦役やエジプト・トルコ戦争が起こりました。

近代への移行

19世紀には、ロシア・ペルシャ戦争や露土戦争が起こり、オスマン帝国のタンジマート時代には、各地で蜂起や紛争が頻発しました。20世紀初頭には、サウジアラビアの統一が進み、第一次世界大戦では中東戦域が重要な舞台となりました。

以上のように、近東地域は古代から中世にかけて、絶え間ない紛争の歴史を刻んできました。これらの紛争は、地域の政治、経済、文化に大きな影響を与え、現代の中東情勢にも深く関わっています。

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