馬騰

馬騰（ば とう）

後漢末期の武将、字は寿成。

生涯

馬騰は、後漢初期の名将である馬援を祖先に持つとされています。父の馬平は天水郡の役人でしたが、官位を失い、隴西郡で暮らすことになります。貧困のため、馬騰は幼少期から材木を売って生計を立てていました。成人すると、身長は8尺を超え、容貌も雄々しく、温厚で賢明な性格だったため、多くの人々から尊敬を集めたといいます。

中平元年（184年）、涼州で反乱が起こると、馬騰は勇敢な者を募る官軍に応じました。その際、並外れた才能を見込まれて軍従事に抜擢され、部隊を率いて功績を挙げ、軍司馬に任じられます。しかし、耿鄙が部下の裏切りによって殺害されると、馬騰は韓遂ら反乱勢力に加わります。

その後、反乱勢力は内部分裂し、馬騰は一時的に董卓の勢力下に入り、偏将軍に任じられます。董卓の死後、李傕や郭汜が政権を握ると、馬騰は彼らに恭順の意を示し、征東将軍に任じられました。しかし、その後、兵糧問題から李傕らと対立し、長安を襲撃しようとしますが、計画が事前に漏洩し、敗走します。

涼州に戻った馬騰は、韓遂と義兄弟の契りを結びますが、後に両者は対立し、激しい戦いを繰り広げることとなります。この争いは曹操の仲介によって一時的に収まりますが、両者の関係が修復することはありませんでした。その後、馬騰は曹操の勢力下に入り、前将軍・仮節・槐里侯に任じられ、胡族の侵入に備えました。この間、賢者を推挙し、民衆を労わったため、人々から敬愛されたといいます。

袁紹と曹操が対立すると、馬騰は曹操の援軍要請に応じ、子の馬超や龐徳らを派遣して、袁紹軍を撃破しました。建安13年（208年）、曹操は馬騰らの勢力を警戒し、入朝を促します。馬騰はこれを受け入れ、長楽衛尉に任じられ、一族と共に鄴に移住しました。

しかし、馬騰の軍を引き継いだ馬超が、曹操に反旗を翻すと、馬騰は連座して処刑され、一族も皆殺しとなりました。馬騰の死後、馬家は衰退し、馬超や甥の馬岱など、ごく一部の者だけが生き残ることになります。

『三国志演義』における馬騰

小説『三国志演義』では、馬騰は朝廷に忠実な正義漢として描かれています。曹操暗殺計画に加担するも失敗し、涼州に帰還。その後、許昌に呼び出された際に再び曹操暗殺を企てますが、計画が漏れて一族皆殺しに遭います。この父の死が、馬超が曹操に反旗を翻すきっかけとなります。

馬騰の人物像

馬騰は、貧しい出自ながらも、その才能と人柄で人々を惹きつけ、武将として頭角を現しました。激動の時代を生き抜き、一時は涼州の一大勢力を築き上げますが、最終的には一族の悲劇的な末路を迎えることになります。その生涯は、後漢末期の混乱を象徴する出来事の一つと言えるでしょう。

配下

馬超
馬休
馬鉄
馬岱
龐徳

脚注

飯田祥子「後漢後期・末期の西北辺境漢族社会——韓遂の生涯を手がかりに——」『漢新時代の地域統治と政権交替』汲古書院〈汲古叢書〉、2022年、89-128頁。
白亮「東漢末年馬騰、韓遂軍事集団述論」『蘭州大学学報(社会科学版)』第6期、2013年、160-164頁。
張寅瀟「《典略》“東備白騎”釈疑」『史志学刊』第3期、2023年、33-37頁。
de Crespigny, Rafe (2018) [1984]. Northern Frontier: The policies and strategy of the Later Han Empire. The Australian National University, Faculty of Asian Studies.

関連項目

『三国志』
* 馬雲騄 - 『反三国志演義』に登場する架空の人物。馬騰の娘で後に趙雲の妻となる。

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