1970年の日本公開映画

1970年の日本公開映画

本項では、1970年（昭和45年）の1月1日から12月31日までの期間に、日本国内で商業的に封切られた映画作品について記述します。この年は、邦画・洋画ともに非常に多様な作品が劇場にかけられ、娯楽としての映画が広く楽しまれていた時代の特徴をよく示しています。

多彩な日本映画

1970年の日本映画界は、特定のジャンルやシリーズが安定した人気を誇る一方、新しい試みも見られました。年間を通して複数の作品が公開された人気シリーズには、山田洋次監督の「男はつらいよ」シリーズ（『フーテンの寅』、『新・男はつらいよ』、『望郷篇』と3本公開）や、「社長学ABC」「続・社長学ABC」といった喜劇、さらには東宝の「若大将」シリーズ（『ブラボー!若大将』）や「クレージー」シリーズ（『クレージーの殴り込み清水港』）、そして勝新太郎主演の「座頭市」シリーズ（『座頭市と用心棒』、『座頭市あばれ火祭り』）などがあります。

また、東映を中心に任侠・ヤクザ映画が依然として盛んで、「日本女侠伝」「緋牡丹博徒」「昭和残侠伝」「日本侠客伝」といった人気シリーズが製作され、その系譜を継ぐ作品が多数公開されました。加えて、「不良番長」や「やくざ刑事」といったアクション色の強い作品、あるいは「女番長」「野良猫ロック」シリーズに見られるような、後の日活ロマンポルノにつながるような路線も現れています。文芸作品としては、熊井啓監督の「地の群れ」、山本薩夫監督の超大作「戦争と人間 第一部 運命の序曲」などが公開されています。

子供向け映画としては、春休みや夏休み恒例となった「東映まんがまつり」「東宝チャンピオンまつり」が開催され、人気テレビアニメの劇場版（「タイガーマスク」「ちびっ子レミと名犬カピ」「アタックNo.1」「巨人の星」「ひみつのアッコちゃん」など）や、特撮作品（東宝特撮怪獣映画の旧作『キングコング対ゴジラ』『モスラ対ゴジラ』や新作『ゲゾラ・ガニメ・カメーバ 決戦!南海の大怪獣』など）が上映され、多くの観客を集めました。

世界各国の作品

外国映画もバラエティに富んでおり、特にアメリカ映画が存在感を示しました。社会現象ともなったロードムービーの傑作「イージー・ライダー」、鮮烈な印象を残した「明日に向って撃て!」、ブラックユーモアあふれるコメディ「M★A★S★H マッシュ」、大迫力の戦争映画「パットン大戦車軍団」、そして日米合作の真珠湾攻撃を描いた大作「トラ・トラ・トラ!」など、現在も語り継がれる名作が多数公開されています。青春の葛藤を描いた「いちご白書」なども、当時の若者に影響を与えました。

ヨーロッパ映画も多様な作品が紹介されています。イタリアからは、マカロニウェスタン（「復讐の用心棒」「西部悪人伝」など）や、ヴィットリオ・デ・シーカ監督の名作「ひまわり」、フェデリコ・フェリーニ監督の「サテリコン」といった文芸作品、合作映画（「地獄に堕ちた勇者ども」「狼の挽歌」など）が公開されました。フランスからは、社会派サスペンスの傑作「Z」や、アラン・ドロン、ジャン＝ポール・ベルモンド共演のギャング映画「ボルサリーノ」、クロード・ルルーシュ監督の「暗くなるまでこの恋を」などが話題を呼びました。イギリスからは、時代劇「冬のライオン」、歴史劇「ジュリアス・シーザー」、スパイアクション「ミニミニ大作戦」、文芸作品「1000日のアン」などが公開されています。さらに、ソビエト連邦製作の歴史大作「ヨーロッパの解放」や伝記映画「チャイコフスキー」、さらにはイタリアとの合作大作「ワーテルロー」、ポーランドのアニメーション「太陽の王子 ファラオ」、アルジェリアとの合作「Z」など、幅広い国・地域の作品が日本で紹介されました。

1970年は、日本国内外から多種多様な映画が劇場にもたらされ、映画というメディアが社会に深く根ざした娯楽・芸術として機能していた時代でした。ここで挙げた作品はごく一部ですが、当時の映画界の活況と観客の多様なニーズに応えようとする姿勢を垣間見ることができます。

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