1972年の鉄道

1972年（昭和47年）の鉄道

1972年は、日本の鉄道にとって極めて意義深い一年となりました。新橋～横浜間の鉄道開業から数えて100周年という記念すべき年にあたります。全国各地で記念行事が行われたほか、近代化を象徴する新しい幹線鉄道の開業や新型車両の登場がありました。一方で、地方交通線や都市内の軌道線など、多くの鉄道路線がその歴史に幕を下ろした年でもあり、日本の鉄道網が大きく再編された時代の一コマを映し出しています。

記念イベントと主要な動き

鉄道開業100周年の中心イベントとして、10月14日・15日には、かつての起点駅である汐留駅（旧新橋駅）と、初代横浜駅に隣接する東横浜駅の間で、C57形蒸気機関車が牽引する記念列車「鉄道100年記念号」が特別運行されました。また、10月10日には京都の梅小路機関区内に、蒸気機関車の動態保存を目的とした「梅小路蒸気機関車館」が開館し、多くの鉄道ファンや一般市民に親しまれる施設として誕生しました。

この年は、インフラの拡張も進みました。特に注目されるのは、3月15日の山陽新幹線新大阪～岡山間開業です。これにより、京阪神と岡山間の所要時間が大幅に短縮され、西日本における高速鉄道ネットワークの基盤が築かれました。また、東京では総武本線の東京駅乗り入れ（7月15日）が実現し、都心部の鉄道網がさらに強化されました。

地下鉄ネットワークも拡充しました。帝都高速度交通営団（現在の東京メトロ）千代田線が霞ヶ関から代々木公園まで（10月20日）、東京都交通局（都営地下鉄）三田線（旧6号線）が日比谷から巣鴨まで（6月30日）、大阪市営地下鉄（現在のOsaka Metro）四つ橋線が玉出から住之江公園まで（11月9日）それぞれ延伸開業しています。また、横浜市では12月16日に横浜市営地下鉄1号線の伊勢佐木長者町～上大岡間が開業し、大都市圏における地下鉄整備が着実に進みました。

地方においても新たな動きが見られました。国鉄岩泉線（2月6日）、宮古線（2月27日）、高千穂線（7月22日）、白糠線（9月8日）、大隅線（9月9日）、越美北線（12月15日）などで既存路線の延伸が開業し、地域交通の便が向上しました。

相次ぐ路線の廃止

近代化やモータリゼーションの進展に伴い、多くの鉄道路線や軌道線が役割を終えました。都市交通では、京都市電（1月23日）や横浜市電、横浜市営トロリーバス（共に4月1日）、東京都電の一部区間（11月12日）が姿を消し、都市の景観や交通体系が大きく変わりました。

地方の国鉄路線も廃止が進みました。1月には鍛冶屋原線が、2月には細島線（旅客営業）、3月には三国線と篠山線が、4月には宇品線が、6月には札沼線の一部区間と、多くのローカル線が廃止となりました。私鉄においても、岩手中央バス鉄道線（2月16日）、三国線と接続していた福井県の三国線（3月1日）、玉野市営電気鉄道（4月1日）、下津井電鉄の一部区間（4月1日）、加越能鉄道加越線（9月16日）、北陸鉄道能登線の一部区間（6月25日）、富山地方鉄道東部線の一部区間（9月21日）、福島臨海鉄道本線（旅客営業）（10月1日）、舞鶴線の一部区間（11月1日）など、全国各地で鉄路が失われました。これらの廃止は、地域の交通や生活に大きな影響を与えました。

事故と災害

この年は、鉄道の安全に関わる痛ましい事故も発生しました。7月5日には高知県の土讃本線繁藤駅で、土石流により列車が押し流される繁藤災害が発生しました。また、11月6日には福井県の北陸トンネル内で、走行中の急行列車から出火し、多くの死傷者を出した北陸トンネル火災事故が発生。日本の鉄道史に残る重大事故として、その後の安全対策に大きな教訓を残しました。

新型車両の登場

1972年には、後に日本の鉄道輸送を支えることになる多くの新型車両が誕生しました。国鉄では、特急用電車の183系や試験用気動車のキハ391系などが登場。私鉄においても、京成電鉄の初代AE形（スカイライナー用）や3500形、京王帝都電鉄（現在の京王電鉄）の6000系、小田急電鉄の9000形、近畿日本鉄道の1000系、1010系、2610系、2800系、京阪神急行電鉄（現在の阪急電鉄）の5300系など、都市間輸送や通勤輸送を担う多くの新型車両が投入されました。

これらの出来事を通して、1972年は日本の鉄道が近代化の波に乗って発展する一方で、地方交通の衰退という課題にも直面した、まさに変革の時代であったことが見て取れます。

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