1987年の日本競馬

激動の一年

1987年（昭和62年）は、若駒たちのクラシックでの白熱した戦い、新旧の記録更新、施設の近代化、そして記憶に残る様々な出来事が凝縮された、日本競馬界にとって多岐にわたる出来事が展開された一年でした。記事中の馬齢は、当時の旧表記に基づき記載します。

主な出来事

開催時期の変更：冬期の降雪リスクを考慮し、これまで1月・2月に行われていた中京競馬と3月の小倉競馬の開催時期が入れ替えられました。これに伴い、中京で開催されていたきさらぎ賞は京都競馬場での施行に変更となりました。

施設の進化：小倉競馬場にダートコースが新設され、この年から運用を開始しました。また、各競馬場で大型映像ディスプレイ「ターフビジョン」の導入が進み、場内ミニFM放送網も拡大されました。有料の場外馬券発売所「エクセルフロア」も登場しています。さらに、日本中央競馬会の略称「JRA」や場外発売所の愛称「WINS」が正式に制定されました。

クラシック戦線：牡馬三冠路線では、スプリングステークスを豪脚で制したマティリアルが本命視される中、皐月賞は弥生賞勝ち馬サクラスターオーが優勝。東京優駿（日本ダービー）は朝日杯3歳ステークス勝ち馬メリーナイスが制しました。秋の菊花賞では、皐月賞以来半年間の休養を経て臨んだサクラスターオーが、多くの低評価を覆す奇跡的な復活劇を見せ、二冠を達成しました。一方、牝馬路線ではマックスビューティが圧倒的な強さで桜花賞、優駿牝馬（オークス）を連勝。メジロラモーヌに続く牝馬三冠達成への期待が高まりましたが、エリザベス女王杯で伏兵タレンティドガールに敗れ、快挙はなりませんでした。

年末のドラマ：有馬記念：年を締めくくるグランプリ、有馬記念では、クラシックを賑わせたサクラスターオー、メリーナイス、マックスビューティが人気を集めましたが、レース中にサクラスターオーとメリーナイスが相次いでアクシデントに見舞われ競走を中止するという歴史的な出来事が発生。マックスビューティも大敗を喫し、伏兵のメジロデュレンが勝利を収める大波乱となりました。

競馬界の話題：GI7勝を挙げた稀代の名馬シンボリルドルフと、史上初の牝馬三冠馬メジロラモーヌがJRA顕彰馬に選定されました。天皇賞（春）で発生した、2位入線馬ニシノライデンが斜行により失格となった出来事は、後の降着制度創設の重要な契機の一つとなりました。地方競馬では、川崎競馬所属の佐々木竹見騎手が前人未踏の通算6000勝を達成しています。中央競馬では、この年デビューした武豊騎手が新人最多勝記録（69勝）を更新。ベテランの岡部幸雄騎手も年間138勝を挙げ、自身の年間最多勝記録を塗り替え、記録づくめの年となりました。7歳となったかつてのオークス馬トウカイローマンが京都大賞典を制し、このレースで武豊騎手は中央競馬での重賞初勝利を挙げるというドラマもありました。短距離路線ではニッポーテイオーが天皇賞（秋）、マイルチャンピオンシップを連勝。マイルCS勝利は、前週のエリザベス女王杯を勝った半妹タレンティドガールに続く兄妹でのGI連勝という快挙でした。また、海外のトップジョッキーを招いた「国際騎手招待競走」（現ワールドスーパージョッキーズシリーズ）が初めて開催され、国際交流が図られました。その他、落馬事故による若手騎手斎藤仁作氏の訃報、大雪による開催中止、騎手間のトラブルなども発生するなど、様々な出来事が起こりました。

主要競走結果

1987年に施行された主要な中央・地方競馬の競走結果は以下の通りです。

中央競馬GI

桜花賞：マックスビューティ
皐月賞：サクラスターオー
天皇賞（春）：ミホシンザン
安田記念：フレッシュボイス
優駿牝馬（オークス）：マックスビューティ
東京優駿（日本ダービー）：メリーナイス
宝塚記念：スズパレード
天皇賞（秋）：ニッポーテイオー
菊花賞：サクラスターオー
エリザベス女王杯：タレンティドガール
マイルチャンピオンシップ：ニッポーテイオー
ジャパンカップ：ルグロリュー
朝日杯3歳ステークス：サクラチヨノオー
阪神3歳ステークス：サッカーボーイ
有馬記念：メジロデュレン

中央競馬・障害GI

中山大障害（春）：メジロアンタレス
中山大障害（秋）：シノンシンボリ

地方競馬主要競走

帝王賞：テツノカチドキ
楠賞全日本アラブ優駿：ダンデイダイドウ
東京ダービー：ジヨージレツクス
全日本アラブクイーンカップ：ホーエイフアスト
全日本アラブ大賞典：ローゼンホーマ
全日本アラブ争覇：テンハクリユウ
* 東京大賞典：テツノカチドキ

その他の出来事

この年には、後にクラシック戦線や古馬戦線で日本競馬史に名を残す、メジロマックイーン、アイネスフウジン、ダイタクヘリオス、メジロライアンなど、多くの名馬が誕生しています。

JRA賞年度代表馬には二冠馬サクラスターオーが輝きました。各部門のリーディングタイトルは、最多勝利騎手・調教師、最高勝率騎手・調教師、最多賞金獲得騎手・調教師などが発表されています。社台ファームがリーディングブリーダーに、ノーザンテーストがリーディングサイアーおよびリーディングブルードメアサイアーとなりました。

1987年は、新たな時代の到来を予感させる若手の台頭や施設の近代化が進む一方、クラシックでのドラマや年末の大一番での大波乱など、様々な出来事が凝縮された記憶に残る一年として、日本競馬史に刻まれています。

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