ACTミニ・シアター

ACTミニ・シアターとは

ACTミニ・シアターは、1970年代に開館し、2000年頃に閉館した日本の映画館です。単なる新作上映ではなく、名画座として知られ、特に16mmフィルムによるサイレント映画のアーカイブを所蔵していたことが特徴です。このアーカイブは、映画史における貴重な作品群を保存し、上映することで、多くの映画ファンに古典映画の魅力を伝えてきました。

開館の経緯

正確な開館年月日は不明ですが、1970年代のある時期に、映画関係者や映画愛好家からの資金援助を受けて開館しました。経営は、沢健司氏が代表を務める有限会社アクトが行っていました。映画館は早稲田通りに面した雑居ビルの2階にあり、1階には早稲田通郵便局がありました。特徴的なのは、客席が椅子席ではなく、カーペット敷きのフラットフロアであったことです。観客は靴を脱いで入場し、寝そべったり、自由に座って映画を鑑賞するスタイルでした。また、定期的に「ACT」というプログラムを会員や観客向けに発行していました。

会員制度とプログラム

「ACT シネ・フレンド」という会員制度があり、年会費によってフリーパスや割引などの特典が受けられました。上映作品は、古典映画からアート系の作品まで幅広く、独自の選定基準によるプログラムが組まれていました。1977年には、映画雑誌『シネ・フロント』で紹介され、その存在が広く知られるようになりました。

映画資料館の開設と文化活動

1986年には、フィルム・アーカイブに加え、映画資料館も開設されました。今井正、新藤兼人、山田洋次、能登節雄ら著名な映画人が世話人となり、書籍などの資料を収蔵しました。また、同時期に漫画『大東京ビンボー生活マニュアル』に、同館をモデルにしたとされるフラットフロアの映画館が登場し、話題となりました。1988年には、映画雑誌『シネマ・ジャーナル』で、代表の沢健司氏がインタビューを受け、映画館の活動が紹介されています。

特集上映と閉館

1990年代には、俳優や監督別に特集上映を行う「日本映画をおもしろくした100人」という企画を長期にわたって実施しました。しかし、2000年には、西早稲田にあった本館が閉館しました。

ACT SEIGEI THEATER

ACT SEIGEI THEATERは、1986年に池袋に開館した映画館です。オープン記念には、イギリスの映画監督デレク・ジャーマンの特集上映が行われました。こちらもACTミニ・シアターと同様に、沢健司氏が代表を務める有限会社アクトが運営していました。1999年に閉館しました。

所在地と特徴

ACT SEIGEI THEATERは、池袋の雑居ビルの地下にあり、50席の座席がありました。

上映作品とフィルムアーカイブ

ACTミニ・シアターでは、以下のような作品が上映されました。

主な上映作品:

小津安二郎監督作品: 『大学は出たけれど』, 『落第はしたけれど』, 『生れてはみたけれど』, 『浮草』, 『小早川家の秋』
成瀬巳喜男監督作品: 『めし』, 『石中先生行状記』
杉江敏男監督作品: 『香港クレージー作戦』, 『無責任遊侠伝』
坪島孝監督作品: 『クレージー作戦くたばれ!無責任』
古澤憲吾監督作品: 『ホラ吹き太閤記』, 『クレージー大作戦』
衣笠貞之助監督作品: 『ある夜の殿様』
山本嘉次郎監督作品: 『馬』
市川崑監督作品: 『プーサン』
小林正樹監督作品: 『あなた買います』
鈴木清順監督作品: 『けものの眠り』
ロベルト・ロッセリーニ監督作品: 『アモーレ』, 『無防備都市』

フィルムアーカイブ所蔵作品:

ACTミニ・シアターが所蔵していたフィルムアーカイブには、以下のようなサイレント映画を中心とした16mmフィルム版のプリントが含まれていました。これらの作品は、低料金で繰り返し上映され、「古典映画コレクション」として親しまれていました。現在、このフィルムアーカイブの所在は不明です。

セルゲイ・エイゼンシュテイン監督作品: 『戦艦ポチョムキン』, 『ストライキ』
ジャン・コクトー監督作品: 『オルフェ』
ロベルト・ヴィーネ監督作品: 『カリガリ博士』
D・W・グリフィス監督作品: 『イントレランス』
ルイス・ブニュエル監督作品: 『アンダルシアの犬』, 『忘れられた人々』
ルネ・クレール監督作品: 『幕間』
トッド・ブラウニング監督作品: 『フリークス』
ジャン・ルノワール監督作品: 『大いなる幻影』, 『どん底』
アンジェイ・ワイダ監督作品: 『灰とダイヤモンド』
ジュリアン・デュヴィヴィエ監督作品: 『舞踏会の手帖』
フェデリコ・フェリーニ監督作品: 『カビリアの夜』
ヴィットリオ・デ・シーカ監督作品: 『自転車泥棒』
カール・テオドア・ドライヤー監督作品: 『裁かるゝジャンヌ』
アルフレッド・ヒッチコック監督作品: 『暗殺者の家』
ジョルジュ・メリエス監督作品: 『月世界旅行』

まとめ

ACTミニ・シアターは、単なる映画館としてだけでなく、映画文化を支える重要な場所でした。フィルム・アーカイブの存在や、多様な作品の上映、会員制度や資料館の設立など、その活動は多岐にわたりました。また、ACT SEIGEI THEATERも独自のプログラムで映画ファンを魅了しました。これらの映画館は、映画史における重要な存在として、今もなお語り継がれています。

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