SUMMER SUSPICION

「SUMMER SUSPICION」（サマー・サスピション）は、ボーカリストの杉山清貴を中心としたバンド、杉山清貴&オメガトライブのデビューシングルとして、1983年 4月21日にバップよりリリースされました。型番はEP盤の10082-07です。

制作とリリースまでの経緯

前身のアマチュアバンド「きゅうてぃぱんちょす」が、「杉山清貴＆オメガトライブ」としてプロデビューするにあたり、当初はファーストアルバム『AQUA CITY』に収められた「UMIKAZE TSUSHIN（海風通信）」や、セカンドシングルのカップリング曲となる「A.D.1959」の2曲が候補として録音されていました。しかし、これらの楽曲でRVCからのデビューという初期の計画は変更され、所属事務所トライアングル・プロダクションの社長でありプロデューサーの藤田浩一氏の求める「より日本的で哀愁を感じさせるメロディー」という要望に応える形で、改めて制作されたのがこの「SUMMER SUSPICION」です。結果として、この楽曲がバップからのデビューシングルとして世に送り出されました。

リリース初期の反響とプロモーション

シングルの発売に先立つ約1ヶ月前、1983年3月23日に中野サンプラザで開催された第12回東京音楽祭の国内大会で、本楽曲が初めて披露されました。そのパフォーマンスは高く評価され、「ゴールデンアップル賞」（国内大会大賞）を受賞。続く3月27日に日本武道館で行われた世界大会でもTBS賞を獲得し、リリース前から大きな注目を集めました。

また、当時TBSテレビで放送されていた番組『アップルシティ500』にも出演し、積極的にプロモーション活動を展開していました。しかし、本楽曲のリリース当日に、番組の公開放送が行われていた新宿NSビル内のレコード店にメンバーが立ち寄った際、店頭に彼らのレコードが並んでいなかったという逸話も残されています。このエピソードは、後にリリースされた20周年記念ライブDVD『FIRST FINALE2』にも収録されています。

チャート成績と音楽番組への出演

オリコンチャートでは、発売から約1ヶ月後の1983年5月23日付で100位に初登場。その後、約3ヶ月後の8月22日付のチャートで念願のベストテン入りを果たしました。

テレビの音楽番組では、TBSテレビ系の人気番組『ザ・ベストテン』に1983年8月4日放送回で「今週のスポットライト」コーナーに初出演。日本テレビ系の『ザ・トップテン』にも1983年7月11日放送回で「話題曲」コーナーに初登場しています。その後、『ザ・ベストテン』では最高9位・10位、『ザ・トップテン』では最高8位・10位と、それぞれ2週にわたってランクインを記録しました。『ザ・トップテン』出演時の映像は、2011年にリリースされた杉山清貴と作曲家・林哲司氏のコラボレーションアルバム『REUNITED』に特典映像として収められており、まだサングラスをかけていない若き日の杉山の姿や、彼自身が描いたメンバーのイラストを見ることができます。

楽曲制作に携わった人々

「SUMMER SUSPICION」は、作詞を康珍化氏、作曲・編曲を林哲司氏が担当しました。このコンビは本楽曲のヒットと前後して、上田正樹氏の「悲しい色やね」、杏里氏の「悲しみがとまらない」、中森明菜氏の「北ウイング」など、他の多くのアーティストの代表作となるヒット曲を次々と生み出しました。特に林哲司氏は、1984年度には筒美京平氏らを抑えて作曲家セールス第1位に輝いています。林氏自身も、1988年のアルバム『TIME FLIES』で本楽曲をセルフカバーしています。

シングルのカップリング曲「渚のSea-dog」は、作詞がSHOW氏、作曲が杉山清貴氏、編曲が後藤次利氏によって手掛けられました。この楽曲は、前身バンド「きゅうてぃぱんちょす」時代のレパートリーであった「フラフラ夏陽気」の歌詞を改変したものです。

アルバム収録とライブでの演奏

本楽曲は、1983年 9月21日に発売されたファーストアルバム『AQUA CITY』の冒頭を飾る1曲として収録されました。その後も企画アルバムやベストアルバムに多数収録されています。また、杉山清貴氏のソロアルバム『Hula moon sessions』や『I AM ME』では、新しいアレンジによるセルフカバーバージョンを聴くことができます。

ライブにおいても、本楽曲は重要なレパートリーであり続けました。1985年に行われた解散ツアー『FIRST FINALE』では、セットリストの最後に演奏されました。この解散ツアーの模様を収めた『LIVE EMOTION』をはじめ、杉山氏のソロ活動における記念ライブアルバム（10周年『I WANNA HOLD YOU AGAIN』、20周年『FIRAST FINALE2』（DVD）、35周年再結成時『The open air live “High & High 2018”Complete』（ライブアルバム））にも様々なライブバージョンが収録されています。特に、アマチュア時代からのキーボーディスト千住明氏を迎えたコンサートを収録したDVD『Symphonic Concert』では、オーケストラアレンジによるバージョンを楽しむことができます。

カバーと影響

海外のアーティストによるカバーも存在し、Jon Otis氏のアルバム『Beach Pops for You』やJoey McCoy & Friends氏のアルバム『Summer Time Memories』には英語詞によるカバーバージョンが収録されています。

また、本楽曲のタイトルは、競走馬名としても使用されました。大種牡馬サンデーサイレンスと名牝ダイナフェアリー（重賞5勝）の間に生まれた牡馬は、父のイニシャル「SS」にかけ、「一夏を越えて見違えるような成長を遂げる馬に」という願いを込めて「サマーサスピション」と名付けられました。1995年にデビューし、ダービートライアルの青葉賞（当時GⅢ）を好タイムで差し切って勝利するなど活躍しましたが、日本ダービーを前に骨折し「幻のダービー馬」と呼ばれました。引退後は種牡馬として供用されています。

爽やかさと切なさが同居するメロディーと情景描写豊かな歌詞は、1980年代のシティポップやJ-POPシーンを彩る代表的な楽曲の一つであり、杉山清貴&オメガトライブの名を世に知らしめた、彼らにとって極めて重要な一曲と言えるでしょう。

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