多田武彦
多田武彦（1930年11月22日 - 2017年12月12日）は、大阪府大阪市出身の日本の作曲家です。特に男声合唱曲を中心に、数多くの合唱作品を手がけました。その作品数は、113の組曲（うち95が男声合唱組曲）を含む、全719曲にも及びます。男声合唱に関わる人々の間では、「タダタケ」の愛称で親しまれていました。
多田武彦は、旧制大阪高校在学中に合唱を始めました。先輩には、東京混声合唱団の桂冠指揮者である田中信昭がいます。京都大学法学部を卒業後、大学在学中は京都大学男声合唱団の指揮者として活躍しました。この時期に、作曲家の清水脩から作曲の指導や助言を受けました。
当初、多田は映画監督を志望していましたが、家庭の事情により断念。その後、富士銀行（現在のみずほフィナンシャルグループ）に入行し、会社再建のエキスパートとして活躍しました。
1954年、北原白秋の詩による男声合唱組曲『柳河風俗詩』を発表。当時としては珍しい男声合唱のレパートリーとして、広く受け入れられました。銀行員として勤務する傍ら、日曜作曲家として多数の作品を発表し続けました。1961年には、男声合唱曲「雨の来る前」が全日本合唱コンクールの課題曲に選ばれ、後に組曲「雨」の第1曲となりました。1963年には、混声合唱組曲『京都』で芸術祭に参加し、文部大臣奨励賞を受賞しました。
銀行退職後も作曲活動や、独自の理論に基づく合唱指導を精力的に行いました。2017年12月12日、87歳で逝去。葬儀は故人の遺志により、親族のみで執り行われました。死去の事実は、当初、日本音楽著作権協会の会報で公表する予定でしたが、インターネット上での情報流出により、2018年1月8日に熊本県立劇場での演奏会で公表されました。
多田武彦の作品の大部分は、ア・カペラによる合唱曲、特に男声合唱曲です。その作風は、抒情性が高く、華美ではない和声を使い、日本の近代詩に寄り添うような表現が特徴です。男声合唱においては、限られた音域の中で、より良いハーモニーと表現を追求しました。「詩に寄り添うように」をモットーとし、詩の世界観を音楽で表現することを大切にしました。
女声合唱作品では、ピアノ伴奏付きの組曲「白き花鳥図」「観音」や、三部作「京都」の「京おんな」などがあります。男声合唱版「白き花鳥図」の初演プログラムには、清水脩から「ア・カペラだけを書くように」と助言されたことが記されており、実際、それ以降はピアノ伴奏付きの合唱曲はほとんど発表していません。ただし、組曲「白き花鳥図」は、後に改作され、2006年にピアノ伴奏付きの女声合唱版が出版されています。
多田の作品には、聴衆の意表を突くような技巧が用いられていることも特徴です。
音程のない語り
男声/混声合唱組曲「中勘助の詩から」第6曲「ふり売り」の呼び声
男声合唱組曲「蛙」第3曲「五匹のかえる」の絶叫
男声合唱組曲「蛙・第二」第5曲「勝手なコーラス」の名乗り声
口笛を用いた曲
男声合唱組曲「中原中也の詩から・第二」第6曲「漂々と口笛を吹いて」
声部が12に分かれる曲
男声合唱組曲「草野心平の詩から・第二」第3曲「鬼女」
歌が終始ユニゾンの曲
男声合唱組曲「草野心平の詩から・第二」第6曲「龍安寺方丈の庭」
リピートとフェードアウトで終わる曲
男声合唱組曲「中原中也の詩から・第二」第1曲「砂漠」
原詩を歌う独唱とハミングのバックコーラス
混声合唱組曲「季節のたより」第4曲「祖母」
男声合唱組曲「小学生の詩による男声合唱組曲」第6曲「死んだおかあちゃん」
男声合唱組曲「草野心平の詩から・第二」第8曲「竹」
同じタイトルの曲をアタッカで繋ぐ
男声合唱組曲「追憶の窓」第1,2曲「村」「村」
男声合唱組曲「草野心平の詩から・第二」第7,8,9曲「竹」「竹」「竹」
原詩を歌う独唱と既存曲の合唱編曲のバックコーラス
男声合唱組曲「樅の木の歌」第5曲「樅の木の歌」
男声合唱組曲「秋の流域」第1曲「夏の最後の薔薇」
男声合唱組曲「尾崎喜八の詩から・第二」第5曲「夕暮の歌」
多田武彦の作品は、多くが音楽之友社やメロス楽譜から出版されています。
男声合唱
柳河風俗詩（北原白秋） - 初演：京都大学男声合唱団 (1954年12月5日)
合唱組曲第1作。白秋の第2詩集『思ひ出』から4篇がテキスト。
第1曲「柳河」は、全日本合唱コンクール課題曲の佳作として先行発表。
富士山（草野心平） - 初演：京都大学男声合唱団 (1956年2月2日)
合唱組曲第2作。同名の詩集から5篇を作曲。
雨 - 初演：明治大学グリークラブ (1967年5月28日)
数年の休筆後に書かれた作品。技巧的な作品への反省から、平易で分かりやすい作品を目指した。
全曲が単曲としても完成度が高く、親しみやすい。特に終曲「雨」は代表作として愛唱。
多田自身が「芸術の神が宿った」と語るほど特別な作品で、「私自身の鎮魂歌である」とも語っている。
当初「十一月に降る雨（堀口大學）」であった第4曲は、後に「雨 雨（尾形亀之助）」に差し替えられた。
雪と花火 - 初演：同志社グリークラブ (1957年3月16日)
北陸にて（田中冬二） - 初演：上智大学グリークラブ (1962年11月24日)
海に寄せる歌（三好達治） - 初演：崇徳高校グリークラブ (1977年9月14日)
わがふるき日のうた（三好達治） - 初演：明治大学グリークラブ (1977年5月7日)
草野心平の詩から - 初演：慶應義塾ワグネル・ソサィエティー男声合唱団 (1961年12月16日)
山村暮鳥の詩から - 初演：城北高等学校合唱団 (1983年6月27日)
父のゐる庭（津村信夫） - 初演：京都大学男声合唱団 (1961年12月3日)
中勘助の詩から - 初演：関西学院グリークラブ (1959年1月31日)
山の印象 - 初演：上智大学グリークラブ・早稲田大学コールフリューゲル (1967年10月27日)
中原中也の詩から - 初演：関西学院グリークラブ (1967年6月18日)
中原中也の詩から・第二 - 初演：神戸大学グリークラブ (1985年12月12日)
みどりの水母（大手拓次） - 初演：京都大学グリークラブ (1976年12月6日)
尾崎喜八の詩から - 初演：関西学院グリークラブ (1975年1月18日)
尾崎喜八の詩から・第二 - 初演：神奈川大学フロイデコール (1986年12月7日)
尾崎喜八の詩から・第三 - 初演：城北学園グリークラブ (1993年6月27日)
三崎のうた（北原白秋） - 初演：明治大学グリークラブ (1969年5月18日)
三崎のうた・第二（北原白秋） - 初演：西南シャントゥール (1997年11月8日)
北斗の海（草野心平） - 初演：早稲田大学グリークラブ (1968年12月7日)
組曲のタイトルは草野心平が考案。
多田は心平邸訪問時、蛙の詩の朗読を聞き、それが組曲「蛙」「蛙・第二」の誕生につながった。
雪国にて（堀口大學） - 初演：上智大学グリークラブ (1978年)
若しもかの星に（百田宗治） - 初演：東京オルフェオン (1978年9月17日)
優しき歌（立原道造） - 初演：立命館大学メンネルコール (1971年6月29日)
吹雪の街を（伊藤整） - 初演：小樽商科大学グリークラブ (1979年2月19日)
東京景物詩（北原白秋） - 初演：東京大学音楽部コールアカデミー・東京大学コールアカデミーOB合唱団アカデミカコール(1991年12月14日)
遠い母に（大木惇夫） - 初演：FACE：北村協一バースデイ記念コンサート男声合唱団 (2001年9月8日)
遠いふるさと（山村暮鳥） - 初演：崇徳高校グリークラブ・30年記念合唱団 (2000年9月10日)
混声合唱
潮風のうた（中村千栄子） - 初演：京大合唱団 (1979年12月21日)
太海にて（間所ひさこ） - 初演：コール・シャンティー (1968年10月)
京都（安水稔和） - 初演：大阪放送合唱団 (1963年11月14日)
季節のたより（三好達治） - 初演：混声合唱団京都木曜会 (1979年)
柳河風俗詩（北原白秋） - 初演：混声合唱団京都木曜会(1986年7月13日)
雨
海鳴りをきく（中山正善） - 初演：天理教音楽研究会合唱団 (1977年12月10日)
わが心の詩（山本伸一） - 初演：創価合唱団
信濃の民話による三つのバラード - 初演：東京混声合唱団 (1961年10月23日)
観音（山崎澍朗） - 初演：龍谷混声合唱団 (2005年12月18日)
女声合唱
白き花鳥図（北原白秋）
当初はピアノ付き同声合唱（初演は男声）。後にアカペラ混声・男声合唱に改作。
混声・男声合唱版を基に、ピアノ付き女声合唱に再び改作。
校歌等
京都大学応援歌「新生の息吹」（中川裕朗）
* 藤沢市立村岡小学校校歌（津田辰雄）
生涯
多田武彦は、旧制大阪高校在学中に合唱を始めました。先輩には、東京混声合唱団の桂冠指揮者である田中信昭がいます。京都大学法学部を卒業後、大学在学中は京都大学男声合唱団の指揮者として活躍しました。この時期に、作曲家の清水脩から作曲の指導や助言を受けました。
当初、多田は映画監督を志望していましたが、家庭の事情により断念。その後、富士銀行（現在のみずほフィナンシャルグループ）に入行し、会社再建のエキスパートとして活躍しました。
1954年、北原白秋の詩による男声合唱組曲『柳河風俗詩』を発表。当時としては珍しい男声合唱のレパートリーとして、広く受け入れられました。銀行員として勤務する傍ら、日曜作曲家として多数の作品を発表し続けました。1961年には、男声合唱曲「雨の来る前」が全日本合唱コンクールの課題曲に選ばれ、後に組曲「雨」の第1曲となりました。1963年には、混声合唱組曲『京都』で芸術祭に参加し、文部大臣奨励賞を受賞しました。
銀行退職後も作曲活動や、独自の理論に基づく合唱指導を精力的に行いました。2017年12月12日、87歳で逝去。葬儀は故人の遺志により、親族のみで執り行われました。死去の事実は、当初、日本音楽著作権協会の会報で公表する予定でしたが、インターネット上での情報流出により、2018年1月8日に熊本県立劇場での演奏会で公表されました。
作品の特徴
多田武彦の作品の大部分は、ア・カペラによる合唱曲、特に男声合唱曲です。その作風は、抒情性が高く、華美ではない和声を使い、日本の近代詩に寄り添うような表現が特徴です。男声合唱においては、限られた音域の中で、より良いハーモニーと表現を追求しました。「詩に寄り添うように」をモットーとし、詩の世界観を音楽で表現することを大切にしました。
女声合唱作品では、ピアノ伴奏付きの組曲「白き花鳥図」「観音」や、三部作「京都」の「京おんな」などがあります。男声合唱版「白き花鳥図」の初演プログラムには、清水脩から「ア・カペラだけを書くように」と助言されたことが記されており、実際、それ以降はピアノ伴奏付きの合唱曲はほとんど発表していません。ただし、組曲「白き花鳥図」は、後に改作され、2006年にピアノ伴奏付きの女声合唱版が出版されています。
多田の作品には、聴衆の意表を突くような技巧が用いられていることも特徴です。
音程のない語り
男声/混声合唱組曲「中勘助の詩から」第6曲「ふり売り」の呼び声
男声合唱組曲「蛙」第3曲「五匹のかえる」の絶叫
男声合唱組曲「蛙・第二」第5曲「勝手なコーラス」の名乗り声
口笛を用いた曲
男声合唱組曲「中原中也の詩から・第二」第6曲「漂々と口笛を吹いて」
声部が12に分かれる曲
男声合唱組曲「草野心平の詩から・第二」第3曲「鬼女」
歌が終始ユニゾンの曲
男声合唱組曲「草野心平の詩から・第二」第6曲「龍安寺方丈の庭」
リピートとフェードアウトで終わる曲
男声合唱組曲「中原中也の詩から・第二」第1曲「砂漠」
原詩を歌う独唱とハミングのバックコーラス
混声合唱組曲「季節のたより」第4曲「祖母」
男声合唱組曲「小学生の詩による男声合唱組曲」第6曲「死んだおかあちゃん」
男声合唱組曲「草野心平の詩から・第二」第8曲「竹」
同じタイトルの曲をアタッカで繋ぐ
男声合唱組曲「追憶の窓」第1,2曲「村」「村」
男声合唱組曲「草野心平の詩から・第二」第7,8,9曲「竹」「竹」「竹」
原詩を歌う独唱と既存曲の合唱編曲のバックコーラス
男声合唱組曲「樅の木の歌」第5曲「樅の木の歌」
男声合唱組曲「秋の流域」第1曲「夏の最後の薔薇」
男声合唱組曲「尾崎喜八の詩から・第二」第5曲「夕暮の歌」
主な作品
多田武彦の作品は、多くが音楽之友社やメロス楽譜から出版されています。
男声合唱
柳河風俗詩（北原白秋） - 初演：京都大学男声合唱団 (1954年12月5日)
合唱組曲第1作。白秋の第2詩集『思ひ出』から4篇がテキスト。
第1曲「柳河」は、全日本合唱コンクール課題曲の佳作として先行発表。
富士山（草野心平） - 初演：京都大学男声合唱団 (1956年2月2日)
合唱組曲第2作。同名の詩集から5篇を作曲。
雨 - 初演：明治大学グリークラブ (1967年5月28日)
数年の休筆後に書かれた作品。技巧的な作品への反省から、平易で分かりやすい作品を目指した。
全曲が単曲としても完成度が高く、親しみやすい。特に終曲「雨」は代表作として愛唱。
多田自身が「芸術の神が宿った」と語るほど特別な作品で、「私自身の鎮魂歌である」とも語っている。
当初「十一月に降る雨（堀口大學）」であった第4曲は、後に「雨 雨（尾形亀之助）」に差し替えられた。
雪と花火 - 初演：同志社グリークラブ (1957年3月16日)
北陸にて（田中冬二） - 初演：上智大学グリークラブ (1962年11月24日)
海に寄せる歌（三好達治） - 初演：崇徳高校グリークラブ (1977年9月14日)
わがふるき日のうた（三好達治） - 初演：明治大学グリークラブ (1977年5月7日)
草野心平の詩から - 初演：慶應義塾ワグネル・ソサィエティー男声合唱団 (1961年12月16日)
山村暮鳥の詩から - 初演：城北高等学校合唱団 (1983年6月27日)
父のゐる庭（津村信夫） - 初演：京都大学男声合唱団 (1961年12月3日)
中勘助の詩から - 初演：関西学院グリークラブ (1959年1月31日)
山の印象 - 初演：上智大学グリークラブ・早稲田大学コールフリューゲル (1967年10月27日)
中原中也の詩から - 初演：関西学院グリークラブ (1967年6月18日)
中原中也の詩から・第二 - 初演：神戸大学グリークラブ (1985年12月12日)
みどりの水母（大手拓次） - 初演：京都大学グリークラブ (1976年12月6日)
尾崎喜八の詩から - 初演：関西学院グリークラブ (1975年1月18日)
尾崎喜八の詩から・第二 - 初演：神奈川大学フロイデコール (1986年12月7日)
尾崎喜八の詩から・第三 - 初演：城北学園グリークラブ (1993年6月27日)
三崎のうた（北原白秋） - 初演：明治大学グリークラブ (1969年5月18日)
三崎のうた・第二（北原白秋） - 初演：西南シャントゥール (1997年11月8日)
北斗の海（草野心平） - 初演：早稲田大学グリークラブ (1968年12月7日)
組曲のタイトルは草野心平が考案。
多田は心平邸訪問時、蛙の詩の朗読を聞き、それが組曲「蛙」「蛙・第二」の誕生につながった。
雪国にて（堀口大學） - 初演：上智大学グリークラブ (1978年)
若しもかの星に（百田宗治） - 初演：東京オルフェオン (1978年9月17日)
優しき歌（立原道造） - 初演：立命館大学メンネルコール (1971年6月29日)
吹雪の街を（伊藤整） - 初演：小樽商科大学グリークラブ (1979年2月19日)
東京景物詩（北原白秋） - 初演：東京大学音楽部コールアカデミー・東京大学コールアカデミーOB合唱団アカデミカコール(1991年12月14日)
遠い母に（大木惇夫） - 初演：FACE：北村協一バースデイ記念コンサート男声合唱団 (2001年9月8日)
遠いふるさと（山村暮鳥） - 初演：崇徳高校グリークラブ・30年記念合唱団 (2000年9月10日)
混声合唱
潮風のうた（中村千栄子） - 初演：京大合唱団 (1979年12月21日)
太海にて（間所ひさこ） - 初演：コール・シャンティー (1968年10月)
京都（安水稔和） - 初演：大阪放送合唱団 (1963年11月14日)
季節のたより（三好達治） - 初演：混声合唱団京都木曜会 (1979年)
柳河風俗詩（北原白秋） - 初演：混声合唱団京都木曜会(1986年7月13日)
雨
海鳴りをきく（中山正善） - 初演：天理教音楽研究会合唱団 (1977年12月10日)
わが心の詩（山本伸一） - 初演：創価合唱団
信濃の民話による三つのバラード - 初演：東京混声合唱団 (1961年10月23日)
観音（山崎澍朗） - 初演：龍谷混声合唱団 (2005年12月18日)
女声合唱
白き花鳥図（北原白秋）
当初はピアノ付き同声合唱（初演は男声）。後にアカペラ混声・男声合唱に改作。
混声・男声合唱版を基に、ピアノ付き女声合唱に再び改作。
校歌等
京都大学応援歌「新生の息吹」（中川裕朗）
* 藤沢市立村岡小学校校歌（津田辰雄）
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