インドネシアの地理

インドネシアは、インド洋と太平洋にまたがる東南アジアの島嶼国家です。その地理的特徴は、多様な島々からなる国土、複雑な地質構造、活発な火山活動、そして豊かな自然環境に特徴づけられます。

国土

インドネシアは、スマトラ島、ジャワ島、カリマンタン島、スラウェシ島、ニューギニア島の主要5島を中心に、小スンダ列島やマルク諸島を含む1万を超える島々から構成されています。島嶼国家であるため、陸続きで国境を接するのはマレーシア、パプアニューギニア、東ティモールの3か国のみです。海岸線は世界第3位の長さですが、その一部で侵食が進んでいます。

国土は南北約1888キロメートル、東西約5110キロメートルに広がり、島ごとに異なる経済社会環境や自然生態系が見られます。国土面積は約191万平方キロメートルで、農地と森林がその大部分を占めています。

地形・地質

インドネシアの地質は、中生代にゴンドワナ大陸から分離した大陸片がスンダランドに衝突した結果形成された弧状列島です。この地域は地球上で最も複雑な変動が進んでいる場所の一つで、複数の衝突帯や沈み込み帯、海溝が見られます。

山地は古生代や中生代の岩盤、あるいは第四紀の活[[火山]]から成り、丘陵地は第三紀の火山岩や堆積岩、平野は沖積層から形成されています。特に沖積層は広範囲に分布しており、地盤が軟弱であることが開発上の課題となっています。高温多湿な気候のため岩石の風化侵食が著しい一方、火山活動が活発な地域では肥沃な土壌が形成されています。

地震

インドネシアは、インド・オーストラリアプレート、ユーラシアプレート、太平洋プレート、フィリピン海プレートが複雑に交わる場所に位置しており、地震活動が非常に活発です。特にスマトラ島からバリ島にかけてのインド洋側や、ニューギニア島北側ではプレートの沈み込みが頻繁に発生し、大津波を伴う地震も起こりやすいです。2004年のスマトラ島沖地震は、マグニチュード9クラスの大地震であり、甚大な被害をもたらしました。建築物の耐震化が課題となっています。

山

インドネシアは、世界有数の火山保有国であり、約400の火山が存在します。このうち約130が活[[火山]]であり、年間10ほどの火山が噴火しています。特にスマトラ島から小スンダ列島にかけては、標高1000メートルから3000メートル級の火山が連なっており、活発な火山活動が見られます。過去には大規模な噴火による火砕流や火山泥流によって、数千人から数万人の死者を出した火山も存在します。

森林

インドネシアは、世界第3位の熱帯林保有国であり、2015年時点で国土の53%を森林が占めています。森林は天然林、天然生林、植林地に分けられ、それぞれ異なる生態系が見られます。熱帯多雨林、モンスーン林、山地多雨林、マングローブ林など、多様な森林タイプが存在し、特にマングローブ林は世界のマングローブ林面積の5分の1を占めるほど広大です。

しかし、森林面積は年々減少しており、森林減少は温室効果ガスの主要な排出源となっています。政府は森林減少を抑制するため、REDD+（途上国の森林保全活動に基づく温室効果ガスの排出削減）に取り組んでいます。

河川・湖沼

インドネシアは、湖沼の多い国でもあり、国内最大のトバ湖や最深のマタノ湖など、多数の湖や池が存在します。また、多数の河川が国土を流れ、流域では人々の生活が営まれています。しかし、下水道の普及が遅れているため、未処理の汚染水が河川に流入し、水質汚染が深刻な問題となっています。

島嶼

インドネシアの島嶼は、スマトラ島、ジャワ島、カリマンタン島、スラウェシ島、ニューギニア島の主要5島と、小スンダ列島やマルク諸島といった群島で構成されています。島の総数は、潮の満ち引きによって見え隠れする砂地や岩礁を含めると1万7508とされてきましたが、近年では1万3466島と下方修正されています。

気候

インドネシアの気候は、多くの地域が熱帯雨林気候に属し、一部地域では熱帯モンスーン気候やサバナ気候が見られます。年間を通して気温は高く、年較差は小さいですが、降水量は地域によって大きく異なり、乾季と雨季がはっきり分かれています。特に雨季には豪雨が多く、洪水や土砂災害が発生しやすいです。

気候変動

気候変動の影響として、降水量の増加やそれに伴う洪水・土砂災害の増加・激化、そして海面上昇が懸念されています。政府は気候変動対策計画を策定し、二酸化炭素排出抑制や緑化推進、災害対策などの取り組みを進めています。

生物相

インドネシアは、約32万5000種もの野生動植物が生息するメガダイバーシティ国家です。しかし、熱帯雨林の減少により、多くの種が絶滅の危機に瀕しています。生物地理区では東洋区とオーストラリア区にまたがり、ウォーレス線を境に生物相が大きく異なります。

動物相は、哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、昆虫類、軟体動物など、多岐にわたります。植物相は、種子植物、シダ類、苔類、海草などで構成され、多様な森林タイプが見られます。

行政区画

インドネシアは、州・特別州、県・市、郡、区・村の行政区分に分割されています。州には州知事と州議会があり、県や市には県知事・県議会、市長・市議会が置かれています。地方分権化が進められていますが、地方行政能力には地域差が見られます。

人口

2020年の国勢調査によると、インドネシアの総人口は約2億7020万人で、世界で4番目に人口が多い国です。人口の大部分はジャワ島に集中しており、地域間の人口密度には大きな差があります。

環境保全

インドネシアの環境保全行政は、1970年代から始まりました。環境省の設置や環境管理法の制定など、環境政策に力を入れていますが、法執行や専門技術者の育成、市民の意識改革など、課題も多く残されています。

インドネシアは、その多様な地理的特徴、豊かな自然、そして活発な社会活動が交錯する、興味深い国です。

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