ジェリー・ロス

ジェリー・ロス：宇宙への7つの旅路

ジェリー・ロス（Jerry Lynn Ross、1948年1月20日生まれ）は、アメリカ合衆国インディアナ州クラウンポイント出身のアメリカ空軍軍人であり、アメリカ航空宇宙局（NASA）の宇宙飛行士です。彼は7回もの宇宙飛行ミッションを経験し、フランクリン・チャン＝ディアスと共に、宇宙飛行回数の最多記録を保持しています。彼の業績は、宇宙開発における重要な貢献として高く評価されています。

生い立ちと教育

ロスは1966年にインディアナ州のクラウンポイント高校を卒業後、パデュー大学に進学。1970年に機械工学の学士号、1972年には修士号を取得しました。大学では予備役将校訓練課程（ROTC）に参加し、卒業時にアメリカ空軍への入隊許可を得ています。

軍人としてのキャリア

1972年に空軍に入隊したロスは、オハイオ州のライトパターソン空軍基地に配属され、ラムジェットエンジン部門で研究開発に携わりました。その後、テストパイロット学校を卒業し、カリフォルニア州のエドワーズ空軍基地でRC-135Sの評価やB-1の飛行試験などに従事。自家用飛行機の免許も取得し、様々な機体での飛行経験を積みました。2000年3月31日に空軍を退役しています。

NASAでのキャリア

1979年2月、ロスはジョンソン宇宙センターのペイロード運用部門に配属され、スペースシャトルのペイロードを担当。1980年5月には宇宙飛行士に選ばれました。宇宙遊泳やシャトル・リモート・マニピュレータ・システムなどのチームに所属し、複数のミッションのサポートやCAPCOM（交信担当官）を務めました。また、宇宙飛行士選考委員会の一員としても活動しています。

ロスは、スペースシャトルで7回の宇宙飛行を経験しました。

STS-61-B (1985年): ミッションスペシャリストとして、通信衛星の展開や宇宙ステーション建設技術の実証実験に従事。2回の宇宙遊泳も行いました。
STS-27 (1988年): 国防総省のペイロードを運搬するミッションに参加。詳細な内容は非公開となっています。
STS-37 (1991年): コンプトンガンマ線観測衛星の展開ミッション。2回の宇宙遊泳で衛星のアンテナ展開作業や、宇宙ステーションのプロトタイプハードウェアの試験を行いました。
STS-55 (1993年): ペイロードコマンダーとして、生命科学、材料科学、物理学、ロボティクスなど、多岐にわたる分野の実験を実施しました。
STS-74 (1995年): ロシアの宇宙ステーション「ミール」とのドッキングミッション。ドッキングモジュールの取り付けや物資の輸送を担当しました。
STS-88 (1998年): 国際宇宙ステーション（ISS）の組み立てミッション。アメリカ製の「ユニティ」とロシア製の「ザーリャ」を結合する作業を行い、3回の宇宙遊泳でケーブルや機器の取り付けを行いました。
* STS-110 (2002年): ISSへの13回目の訪問ミッション。S0トラスの運搬・設置やロボットアームの利用など、ISS組み立ての最終段階のミッションに貢献しました。

7度のミッションで、ロスは合計1,393時間を宇宙で過ごし、そのうち57時間55分を宇宙遊泳に費やしました。

記録と栄誉

ロスの宇宙飛行回数は、フランクリン・チャン＝ディアスと並ぶ最多記録です。また、かつては宇宙遊泳回数でもアメリカ記録を持っていました（後にマイケル・ロペス＝アレグリアに更新されました）。

彼の功績は高く評価され、2014年5月にはAstronaut Hall of Fame（宇宙飛行士の殿堂）入りを果たしました。

引退後

2012年1月にNASAを引退するまで、ヒューストンのジョンソン宇宙センターにあるVehicle Integration Test Officeの長を務めました。引退後も、宇宙開発の分野で講演や執筆活動を続けています。著書に、ヨハン・ノルベリとの共著である「Spacewalker: My Journey in Space and Faith as NASA's Record-Setting Frequent Flyer」があります。

同僚の宇宙飛行士クリス・ハドフィールドは、自伝の中でロスを「信頼でき、忠実で、礼儀正しく、勇敢な宇宙飛行士の典型」と評しています。ジェリー・ロスの宇宙への情熱と貢献は、これからも多くの人々に感動と刺激を与え続けるでしょう。

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