タハール州

タハール州は、アフガニスタン北東部に位置する州で、面積は12,458平方キロメートル、人口は約93万人です。州都はタールカーンです。この地域は、クワジャムハンマッド山脈の西側に広がっています。

歴史

タハール州は、古代から重要な交通路の一部でした。古代インダス文明時代には、メソポタミア文明への貴金属や木材の輸出ルートとして機能し、ガンダーラの首都であったタキシラから、ヒンドゥークシュ山脈を越えてアムダリヤ川へ至る古道が通っていました。この地域には、前21世紀頃のショルトゥガイや、前4世紀頃のアイ・ハヌムといった古代都市遺跡が存在します。

中世には、マルコ・ポーロがタールカーンを訪れ、この地が穀物やスモモ、ピスタチオの集積地であったと記録しています。また、良質な岩塩が採れる塩の山があったことも伝えられています。

冷戦時代、タハール州は1950年代に存在せず、1960年代にタールカーン州として成立し、後に現在の名称に改名されました。冷戦終結後は、イスラム協会（後の北部同盟）の拠点の一つとなり、ブルハーヌッディーン・ラッバーニーやアフマド・シャー・マスードといった指導者を輩出しました。しかし、1990年代後半にはターリバーンの侵攻を受け、一時的に支配下に置かれました。1998年には大規模な地震が発生し、多くの犠牲者を出しました。

2001年のアメリカ同時多発テロ事件後、アメリカ軍の支援を受けた北部同盟によってタールカーンは奪還されましたが、2002年には再び地震の被害に見舞われました。2004年と2009年の大統領選挙では、それぞれラシッド・ドスタムとアブドラ・アブドラが州内で最多得票を得ました。2010年には、クンドゥーズ州知事がタハール州で自爆テロにより死亡しました。2012年にはISAF軍からアフガニスタン軍へ治安権限が移譲されました。

2014年の大統領選挙でもアブドラ・アブドラが最多得票を獲得。2015年にはターリバーンが一部地域を攻撃し、同年に発生した地震によって州都タールカーンでも被害が出ました。2021年にはターリバーンが急速に勢力を拡大し、一時的にタハール州の大部分を掌握しましたが、後にアフガニスタン軍が一部地域を奪還しました。

行政区分

タハール州は、1市16郡から構成されています。主要な郡としては、バハラク郡、バンギ郡、チャハブ郡、チャル郡、ダルカッド郡、ダシュティカラ郡、ファルカル郡、ハザールスムッチ郡、イシュカミシュ郡、カラフガン郡、フワジャバハウドディン郡、フワジャガル郡、ナマクアブ郡、ルスタク郡、タルカーン郡（州都）、ワルサジ郡、ヤンギカラ郡があります。

都市

タハール州の人口は州都周辺や北部に集中しており、特にルスタク郡、チャハブ郡、フワジャガル郡の人口が多いです。主要都市としては、州都タールカーンの他、チャハブ、ルスタクなどが挙げられます。

産業

タハール州は農業が盛んで、小麦、米、大麦、綿花、桃の生産量は全国でも上位を占めています。その他、アーモンドやザクロも多く生産されています。また、金砂鉱や蒸発岩の鉱脈も確認されており、鉱業も行われています。

住民

タハール州の住民は、ウズベク人、タジク人が多く、その他パシュトゥーン人、ハザーラ人などが暮らしています。識字率は16％と低いです。

この地域は、豊かな歴史と文化を持ちながらも、常に紛争と自然災害に晒されてきました。複雑な民族構成と地政学的な位置が、タハール州の歴史と社会を形成していると言えるでしょう。

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