テキサス (BB-35)

アメリカ海軍戦艦「テキサス」（USS Texas, BB-35）

概要

戦艦「テキサス」は、アメリカ海軍が最初に建造した超弩級戦艦であり、ニューヨーク級戦艦の2番艦として、その名を歴史に刻みました。1914年に就役した本艦は、アメリカ海軍の戦艦として初めて14インチ砲を搭載し、その後のアメリカ海軍の戦艦設計に大きな影響を与えました。姉妹艦の「ニューヨーク」よりも先に建造され、就役しています。

「テキサス」の艦歴は、タンピコ事件でのメキシコ領海への出動から始まりました。第一次世界大戦では、大西洋を横断する連合軍の輸送船団護衛任務に従事し、イギリス海軍のグランド・フリートと共同作戦を展開しました。戦間期には、幾度かの改装を経て練習艦として活用されましたが、第二次世界大戦の勃発により現役復帰を果たします。

第二次世界大戦では、再び大西洋で輸送船団の護衛任務にあたり、北アフリカ戦線やノルマンディー上陸作戦、南フランス上陸作戦では、沿岸砲撃により枢軸国軍を圧倒しました。太平洋戦線に転戦後は、硫黄島と沖縄の戦いでも海上からの火力支援を行い、その勇名を轟かせました。

1946年に戦艦としての役目を終えた「テキサス」は、1948年以降、テキサス州ヒューストンで博物館を兼ねた記念艦として静態保存されています。現存する超弩級戦艦としては最古であり、両大戦に参加した数少ない艦艇の一つです。また、アメリカで建造されたレシプロ蒸気機関を搭載する唯一現存する軍艦でもあります。

さらに「テキサス」は、アメリカ海軍の戦艦として数々の「初」を記録しました。最初に対空砲を装備した戦艦、初めて射撃管制装置を設置した戦艦、初めて艦上から航空機を発進させた戦艦、そして初めて量産型レーダーを搭載した戦艦でもあります。また、アメリカ合衆国国定歴史建造物に選ばれた最初の戦艦、そして博物館船となった最初の戦艦でもあります。

艦歴

建造

1910年6月24日、ニューヨーク級戦艦2番艦として建造が承認された「テキサス」は、同年12月17日にニューポート・ニューズ造船株式会社との契約が成立し、1911年4月17日に起工しました。予算の関係で、2番艦の「テキサス」がネームシップの「ニューヨーク」よりも先に建造されました。1912年5月18日に進水し、1914年3月12日には初代艦長としてアルバート・W・グラント大佐が着任しました。

「テキサス」の主武装は、45口径35.6cm（14インチ）マーク8砲10門で、副武装として51口径12.7cm（5インチ）砲21門、そして53.3cm（21インチ）魚雷発射管4基を装備していました。

1914年から1917年まで

1914年3月24日、「テキサス」はノーフォーク海軍造船所からニューヨークへ向け出航し、ブルックリン海軍工廠で射撃管制装置を取り付けました。この時期、メキシコ東部沿岸でタンピコ事件が発生し、「テキサス」は急遽メキシコ領海へ派遣されました。

1914年5月13日、作戦に加わった「テキサス」は、ベラクルス沖で陸上部隊を支援し、2ヶ月以上にわたりメキシコ領海内に留まりました。その後、キューバを経てニューヨークに帰還し、大西洋艦隊に復帰しました。

同年10月には再びメキシコ沿岸に戻り、任務を遂行した後、テキサス州ガルベストンへ向かいました。ガルベストン滞在中には、銀食器セットが贈呈され、テキサス州民との交流を深めました。

1915年5月25日には、客船リンダムの乗客救助活動にも参加しました。1916年には、アメリカ戦艦として初めて対空砲と射撃管制装置が設置されました。

第一次世界大戦

1917年4月、アメリカが第一次世界大戦に参戦すると、「テキサス」はニューイングランド海岸沖での訓練を再開しました。その後、修理のためニューヨークへ向かいましたが、浅瀬に座礁する事故が発生し、修理が必要となりました。

修理を終えた「テキサス」は、1918年1月30日にニューヨークを出港し、2月11日にはイギリスのスカパ・フローに到着し、第9艦隊に再合流しました。この艦隊は後にグランド・フリートの第6戦艦戦隊として知られるようになりました。

「テキサス」は主に輸送船団の護衛任務に従事し、北海を封鎖するイギリス艦隊を支援しました。ドイツ海軍との戦闘機会は少なかったものの、休戦協定締結まで任務を全うしました。

1918年11月20日には降伏するドイツ艦隊に接触するため、グランド・フリートと共に行動し、12月にはパリ講和会議に出席するウィルソン大統領を護衛しました。

両大戦間期

1919年、太平洋艦隊に転属となった「テキサス」は、同年3月9日に艦上から航空機の発進に成功し、アメリカ初の航空機を発進させた戦艦となりました。同年5月には飛行艇の護衛任務にも参加しました。

1924年には、ワシントン海軍軍縮条約に基づき標的艦となった戦艦「ワシントン」を砲撃により沈めました。1925年には、大規模な近代化改装が行われ、籠マストから三脚マストへの換装、石炭ボイラーから石油ボイラーへの換装、最新式の射撃管制装置の導入などが実施されました。

改装後、合衆国艦隊旗艦に任命された「テキサス」は、東海岸周辺での任務を再開しました。1927年には、アメリカ海軍として初めて艦上で映画が上映されました。1928年には、カルビン・クーリッジ大統領をキューバへ送り届け、その後、パナマ運河を通過してハワイ近海で艦隊大演習に参加しました。

1931年、高松宮宣仁親王と喜久子后がテキサスに乗艦し、アメリカ海軍との親善交流が図られました。1936年には、海軍兵学校の生徒の訓練航海に参加しました。

1937年には旧式艦と扱われるようになり、訓練艦隊の旗艦となり東海岸に配属されました。1939年にはアメリカ海軍で初の量産型レーダーを装備しました。

第二次世界大戦

1939年9月、ヨーロッパで第二次世界大戦が勃発すると、「テキサス」は中立パトロール任務に従事しました。その後、連合国への積極的な支援活動に伴い、イギリスへの物資輸送護衛を開始しました。

1941年2月には、アーネスト・キング提督が大西洋艦隊の最高司令官としてテキサスに乗艦し、艦隊の指揮を執りました。同年、ドイツ潜水艦の追跡を逃れるなど、戦火の中での活動が本格化しました。

1942年10月23日には、北アフリカへの連合軍進攻作戦であるトーチ作戦に参加しました。上陸部隊の支援として沿岸砲撃を実施し、作戦の成功に貢献しました。

1943年には、大西洋での船団護衛任務に従事し、1944年4月にはノルマンディー上陸作戦に向けた訓練を開始しました。

オーバーロード作戦

1944年6月6日、ノルマンディー上陸作戦（D-Day）では、オマハ・ビーチにおける砲撃艦隊旗艦として参加しました。ポワント・デュ・オックのドイツ軍砲台への砲撃を皮切りに、海岸線や内陸部の敵陣地への攻撃を行い、上陸部隊を支援しました。

6月7日には、レンジャー大隊の負傷兵を回収し、翌日にはイシグニー＝シュル＝メールへの砲撃を実施しました。その後、シェルブール攻撃にも参加しましたが、敵からの反撃で損傷し、死傷者も出ました。

フランス南部侵攻作戦にも参加し、リビエラへの上陸作戦を支援しました。その後、ニューヨークへ帰還し、修理を受けました。

硫黄島および沖縄での砲撃

修理後、「テキサス」は太平洋戦線に転じ、硫黄島と沖縄の戦いにおいて、上陸前の艦砲射撃や上陸部隊の援護射撃を行いました。硫黄島の戦いでは、2週間に及ぶ援護射撃を行い、海兵隊の島制圧を支援しました。沖縄戦でも、長期間にわたって地上部隊への支援砲撃を行いました。

戦後

1945年8月15日に終戦を迎えた「テキサス」は、帰還兵輸送任務に従事し、1946年2月に不活性化の準備に入りました。同年6月にはメリーランド州ボルティモアに移され、1948年初めまで同所に留まりました。第二次世界大戦での功績により、5個の従軍星章を受章しました。

1948年3月17日、テキサス州議会が設立した戦艦テキサス委員会によって「テキサス」の曳航が開始され、4月20日にサンジャッキント州立公園に到着しました。1948年4月21日に退役し、4月30日に除籍されました。同日、「テキサス」はアメリカ初の常設記念艦となりました。

しかし、記念艦としての運営は困難を極め、船体の腐食が進行しました。1983年には、戦艦テキサス委員会の運営が不適切であるとして、Texas Parks and Wildlife Department (TPWD) に管理運営が移管されました。TPWDは海軍の専門家を雇用し劣化の調査を行い、大規模な修繕が必要と判断しました。

1990年9月8日、一般公開が再開されました。テキサスの主機は国定歴史工業製品に指定されています。テキサスは記念艦として公開されている8隻のアメリカ戦艦の中で唯一、二つの世界大戦に参加した戦艦です。

慢性的な維持管理費の不足に悩まされながらも、2019年5月にはテキサス州議会によって修繕費用が可決され、大規模な修繕が行われることになりました。2022年8月31日には74年間を過ごした係留地から曳航され、ガルベストンにて大規模な修理が行われる予定です。

大衆文化

戦艦「テキサス」は、映画『砲艦サンパブロ』(1966年)、『パール・ハーバー』(2001年)、『父親たちの星条旗』と『硫黄島からの手紙』(2006年)など、いくつかの映画に登場しています。

脚注

注釈

[ここに注釈を記述]

出典

[ここに参考文献を記述]

参考文献

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ミリタリー・クラシックス編集部、執筆（松代守弘、瀬戸利春、福田誠、伊藤龍太郎）、図面作成（田村紀雄、こがしゅうと、多田圭一）「第二章 アメリカの戦艦」『第二次大戦 世界の戦艦』イカロス出版〈ミリタリー選書6〉、2005年9月。ISBN 4-87149-719-4。
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歴史群像編集部編『アメリカの戦艦 「テキサス」から「アイオワ」級まで四〇余年にわたる発達史』学習研究社〈歴史群像太平洋戦史シリーズ Vol.58〉、2007年5月。ISBN 978-4-05-604692-2。
国立国会図書館デジタルコレクション - 国立国会図書館
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関連項目

USS Texas Historic Site
アメリカ合衆国が関与した戦争一覧
アメリカ海軍の艦隊一覧

外部リンク

Maritimequest USS Texas BB-35 photo gallery
Texas Navy － The Portal to Texas History より。テキサス革命およびテキサス共和国時代に関するテキサス海軍の情報サイト。当時の地図、スケッチ、テキサス海軍の艦船の一覧と年表がある。また、テキサス人かテキサスの地名にちなんで名付けられた20世紀のアメリカ海軍の写真が掲載されている。戦艦テキサスの画像もあり。
http://www.usstexasbb35.com/introduction.htm
バトルシップテキサス（Battleship Texas）－アメリカ合衆国公式観光ウェブサイト「Discover America」より。
USS Texas (Battleship Number 35, later BB-35), 1914-1948 - ウェイバックマシン（2001年2月18日アーカイブ分）－米海軍歴史センターのウェブサイト
“Battleship Texas (BB-35), Special Feature, July 6, 2002”. NavSource Naval History. 2008年7月14日閲覧。 進水式から90周年を迎えた時のテキサスの記念式典の画像がある。
USS Texas Hard Hat Tour: テキサスへのツアー時の写真や画像などがある。
NavSource Online: Battleship Photo Archive BB-35 USS TEXAS 1911 - 1919
HNSA Ship Page: USS Texas
ASME National Engineering Historic Landmark Page
記念艦テキサス(Googleマップ）

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