テキサス (BB-35)

戦艦テキサス (USS Texas, BB-35) の生涯：革新と激戦の歴史

戦艦テキサス (USS Texas, BB-35) は、アメリカ海軍のニューヨーク級戦艦の2番艦として、その名をテキサス州にちなんで命名されました。本艦は、アメリカ海軍が初めて14インチ砲を搭載した超弩級戦艦であり、その革新的な試みと、二度にわたる世界大戦での活躍は、アメリカ海軍史における重要な位置を占めています。

概要

ニューヨーク級戦艦は、ワイオミング級戦艦の拡大改良型として設計され、テキサスはネームシップであるニューヨークよりも早く建造、就役しました。その艦歴は、タンピコ事件時にメキシコ領海へ出動したことに始まり、第一次世界大戦では大西洋を横断する連合軍の輸送船団護衛任務に従事。イギリス派遣時には、イギリス海軍のグランドフリートと行動を共にしました。

海軍休日時代には、籠マストから三脚マストへの改造など、数々の改装を実施。旧式化が進むと練習艦として使用されましたが、第二次世界大戦の勃発により現役復帰。太平洋戦争勃発時も大西洋艦隊に所属し、再び大西洋を横断する連合軍輸送船団の護衛任務に就きました。北アフリカ戦線、ノルマンディー上陸作戦、南フランス上陸作戦では、枢軸国軍撃退のため沿岸砲撃に従事。1944年後半からは太平洋戦線に移動し、硫黄島や沖縄戦において海上からの火力支援を行いました。

1946年に戦艦としての役目を終え、1948年4月21日よりテキサス州ヒューストンにあるサン・ジャシント州立公園で、博物館を兼ねた記念艦として静態保存されています。

テキサスは、現存する最古の超弩級戦艦であり、両大戦に参加した数少ない艦艇の一つ。また、アメリカで建造されたレシプロ蒸気機関を主機とする唯一現存する軍艦でもあります。

さらに、最初に対空砲が装備された戦艦、初の射撃管制装置設置艦、初の艦上からの航空機射出艦、アメリカ海軍初の量産型レーダー設置艦、そして初の博物館船となった戦艦でもあり、数々の「初」を記録した、アメリカ海軍史上特筆すべき存在です。

艦歴

建造

1910年6月24日、ニューヨーク級戦艦の2番艦として建造が承認。ニューポート・ニューズ造船株式会社によって建造され、1911年4月17日に起工。予算承認の関係から、2番艦であるテキサスの方が、ネームシップのニューヨークよりも先に建造が進められました。1912年5月18日に進水。

1914年3月12日、アルバート・W・グラント大佐が初代艦長に就任。主武装は、主砲塔に各2門ずつ備えられた45口径35.6cm（14インチ）マーク8砲10門。副武装として51口径12.7cm（5インチ）砲21門を装備。建造当初は、53.3cm（21インチ）魚雷発射管も4基装備していました。

1914年から1917年まで

1914年3月24日、バージニア州ポーツマスからニューヨークへ向け出航。ブルックリン海軍工廠で射撃管制装置の取り付けを実施。メキシコ東部沿岸でのタンピコ事件発生を受け、メキシコ領海へ派遣。ベラクルス占領作戦に参加し、陸上部隊を支援しました。その後、大西洋艦隊に復帰し、メキシコ沿岸での任務に従事。1916年には、対空砲と射撃管制装置がアメリカ戦艦として初めて設置されました。

第一次世界大戦

ニューイングランド海岸沖での訓練後、バージニア岬から西インド諸島へ赴き、砲術と艦隊戦術の訓練を実施。アメリカが第一次世界大戦に参戦すると、テキサスは大西洋艦隊と共に、ヨーク川河口に停泊。その後、商船での防衛任務に就く兵員を訓練するため、バージニア岬とハンプトン・ローズ周辺に留まりました。修理後、1918年1月30日にニューヨークを出港し、2月11日にスコットランド沖のスカパ・フローに到着。グランド・フリートの第6戦艦戦隊として、輸送船団の護衛を主な任務とし、北海を封鎖しているイギリス艦隊に対するドイツ軍の来襲に備えました。終戦まで大きな戦闘には参加せず、1918年11月20日、降伏するドイツ艦隊に接触するためグランド・フリートと共に行動しました。

両大戦間期

1918年12月12日、パリ講和会議に出席するウィルソン大統領が乗船するジョージ・ワシントン (USS George Washington) と合流するため、第6及び第9艦隊と共に出港。大統領を護衛し、フランスのブレストに到着。その後、オーバーホールを行い、1919年初頭には太平洋艦隊に復帰。同年3月9日、イギリス製のソッピース キャメルがテキサス艦上からの飛行に成功。アメリカで最初の航空機を発進させた戦艦となりました。1924年には、標的艦として指定されていた戦艦「ワシントン」を砲撃により沈めました。

1925年、ノーフォーク海軍造船所にて大規模な近代化オーバーホールを実施。籠型のマストが三脚式の前檣（フォアマスト）と交換され、石炭を燃料とするボイラーは石油を燃料とするものに交換。射撃管制装置も最新式の物に改められました。オーバーホール終了後、合衆国艦隊旗艦に任命され、東海岸周辺での任務を再開。1927年には乗員のための娯楽として映画がアメリカ海軍として初めて艦上で上映されました。1931年1月には合衆国艦隊旗艦としてニューヨークを出航し、カリフォルニア州サンディエゴへ。6年間、サンディエゴがテキサスの母港となりました。1939年にはアメリカ海軍では初の量産型レーダーを装備した戦艦となりました。

第二次世界大戦

1939年9月、ヨーロッパで第二次世界大戦が始まると、中立パトロールを開始。1941年2月には、アーネスト・キング提督が再編成された大西洋艦隊の最高司令官としてテキサスに乗艦し、艦隊の指揮を執りました。同年、大西洋にて中立パトロールを行っていたテキサスはドイツ潜水艦U-203に発見されたものの、追跡を逃れました。1942年10月23日、北アフリカへの連合国軍の進攻作戦であるトーチ作戦に参加。モロッコの海岸沖で火力支援を実施。従軍記者ウォルター・クロンカイトがテキサスによりアフリカへ上陸しています。

オーバーロード作戦

1944年4月22日、ノルマンディー上陸作戦に備え訓練を開始。6月6日のD-Dayには、オマハ・ビーチ西部における砲撃艦隊旗艦として参加。ドイツ軍の陣地に対し砲撃を行い、上陸部隊を支援しました。6月25日にはシェルブール攻撃に参加。敵の砲撃を受け、艦に損害と犠牲者が出ましたが、砲撃を継続しました。7月にはフランス南部への進攻作戦に参加。サントロペ沖で砲撃支援を実施。9月14日、ニューヨークに帰還しました。

硫黄島および沖縄での砲撃

11月にニューヨークを出航し、パナマ運河経由で太平洋へ。1945年2月16日に硫黄島に到着すると、上陸前の艦砲射撃を開始。上陸部隊の援護射撃を行い、海兵隊が島を制圧するのを支援しました。3月26日には沖縄水域に到着。沖縄本島への上陸に先駆けて行われた艦砲射撃に参加し、地上部隊への支援砲撃を行いました。5月末にフィリピンのレイテ島へ退き、8月15日の日本降伏後まで同所に留まりました。

戦後

8月の終わりに沖縄へ戻り、帰還兵を乗せて帰国の途へ。10月15日にカリフォルニア州サンペドロに到着。1946年1月21日にサンペドロを出航し、ノーフォークへ。2月13日に到着し、不活性化の準備に入りました。第二次世界大戦の戦功により5個の従軍星章を受章。

記念艦へ

1948年3月17日にテキサスの曳航作業は開始され、4月20日にテキサスはサンジャッキント州立公園のサンジャッキント記念碑近くの係留予定地に到着。1948年4月21日に退役、4月30日に除籍。アメリカ初の常設記念艦となりました。

現在

テキサスは、テキサス州ヒューストン郊外にある「San Jacinto Museum of History」に保存されています。2019年5月、テキサス州議会はテキサスの修繕に3,500万ドルを投じる法案を可決。2022年8月31日、ガルベストンに曳航され、大規模な修理が行われる予定です。

大衆文化

戦艦テキサスは、その引退後、いくつかの映画に出演しています。

『砲艦サンパブロ』(1966年)
『パール・ハーバー』(2001年)
『父親たちの星条旗』(2006年)
『硫黄島からの手紙』(2006年)

まとめ

戦艦テキサスは、アメリカ海軍の技術革新の象徴であり、二つの世界大戦を生き抜いた英雄的な艦艇です。博物館船として、その歴史と遺産は次世代へと語り継がれていきます。

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