ニオブララ累層

ニオブララ累層：白亜紀の海を物語る地層

ニオブララ累層は、約8700万年から8200万年前の後期白亜紀に形成された北アメリカの地層です。この地層は、コニアシアン期、サントニアン期、カンパニアン期に相当し、西部内陸海路という当時北アメリカ大陸を分断していた内海に堆積しました。ニオブララ累層は主に、微生物由来の円石から構成されており、アメリカとカナダの広大なグレートプレーンズ地域下に広がっています。

地層の構造

ニオブララ累層は、大きく2つの構造ユニットに分かれています。下層には硬質なフォートヘイズ石灰岩部層があり、その上にはスモーキーヒルチョーク部層が重なっています。スモーキーヒルチョーク部層は、ニオブララ累層で見つかる化石の大部分を含んでおり、特に脊椎動物の化石が豊富です。これらの化石は、かつては異なる層序単位のものと考えられていましたが、後の研究により同じ露頭における風化の差であることが判明しました。ニオブララ累層は海洋性のピエール頁岩の上に位置し、下にはカーライル累層やベントン頁岩があります。

探査の歴史

ニオブララ累層の探査は、1870年にイェール大学のオスニエル・チャールズ・マーシュが率いた遠征によって始まりました。その後の数年間で、数多くの脊椎動物化石が発見され、この地層の重要性が認識されました。マーシュの指揮下で、ベンジャミン・フランクリン・マッジやサミュエル・ウェンデル・ウィリストンといった専門家が調査を行い、その後も、チャールズ・ヘイゼリアス・スタンバーグの息子であるジョージ・フライヤー・スタンバーグやカンザス大学のH・T・マーティンらが、この地層から貴重な標本を発見しています。現在、カンザス州ヘイズのスタンバーグ自然史博物館には、ニオブララ累層から出土した優れた化石が展示されています。

生物相

ニオブララ累層が堆積した時期、西部内陸海路には多種多様な生物が生息していました。モササウルス類をはじめ、中生代の終わり頃に進化した多くの水生生物が、白亜紀後期まで繁栄していました。ニオブララ累層の生物相は、約1000万年前のセノマニアン期に堆積したダコタ累層のものと比較することができます。しかし、ニオブララ累層の生物相は、ダコタ累層のものより多様であり、より発達していました。

無脊椎動物

二枚貝、カキ、ウミユリ、アンモナイト、イカなどがニオブララ累層から多く発見されており、当時の生物相の大部分を占めていました。一方で、海綿動物、環形動物、甲殻類の化石証拠は少ないです。

脊椎動物

ニオブララ累層からは多種多様な脊椎動物の化石が見つかっています。以下に主なものを紹介します。

魚類

ニオブララ累層で最も一般的な化石は魚類であり、サメ、条鰭綱、肉鰭綱の化石が豊富です。小型の魚だけでなく、シファクティヌスのような大型の肉食魚も生息していました。また、原始的なシーラカンスやヒウチダイ科、ミズウオ、レピソステウス属、サケ科など、現生種に近い魚類も発見されています。

軟骨魚類: クレトキシリナ、クレトラムナ、ジョンロンギア、スクアリコラックス、プチコドゥス、エダフォドン
硬骨魚類: ミクロピクノドン、レピソステウス、プロトスフィラエナ、シファクティヌス、イクチオデクテス、ギリクス、サウロドン、サウロケファルス、バナノギミウス、トリプトドゥス、マルティニクティス、ニオブララ、ザンクリテス、パキリゾドゥス、アプソペリックス、フェリフロンス、アエソケファリクチス、キモリクチス、エンコドゥス、アパテオドゥス、ストラトドゥス、レプテコドン、カンシウス、カプロベリクス、オモソマ

カメ

大型のウミガメも発見されており、アンモナイトやイカなどの頭足類を捕食していたと考えられています。

ポルソケリス、トクソケリス、プロトステガ

首長竜

ニオブララ累層の首長竜は、首の長いエラスモサウルス科と首の短いポリコチルス科の2科に属しています。ポリコチルス科はプリオサウルス亜目に似ていますが、直接的な系統関係はありません。ポリコチルス科はエラスモサウルス科よりも速く泳ぐことができたと考えられています。ニオブララ累層では首長竜の化石は比較的少なく、上層のピエール頁岩でより多く発見されています。

ポリコチルス、ドリコリンコプス、スティクソサウルス、エラスモサウルス

モササウルス科

ニオブララ累層で最も一般的な海生爬虫類はモササウルス科であり、当時最も繁栄していました。ティロサウルス亜科、プリオプラテカルプス亜科、モササウルス亜科、ハリサウルス亜科の4亜科が存在し、頭足類、魚類、カメ、翼竜、鳥類、首長竜などを捕食する頂点捕食者でした。また、小型のモササウルス類を捕食した化石証拠も見つかっています。しかし、クレトキシリナのような大型のサメに襲われることもありました。ニオブララ累層が西部内陸海路の中央に位置していたことから、この地域にモササウルス類の幼体が生息していたことは、彼らが沖合で出産していた可能性を示唆しています。

ティロサウルス、プラテカルプス、プレシオプラテカルプス、クリダステス、エオナタトル

翼竜

ニオブララ累層からは2〜4属の翼竜の化石が発見されています。ニクトサウルス以外は、翼指竜亜目プテラノドン科に属しています。これらの翼竜は、頭部に巨大な鶏冠を持ち、海上での生活に適応していました。ニクトサウルスは翼を支える第4指節骨以外の指を欠いており、陸上での活動は制限されていたと考えられています。

ダウンドラコ、ゲオステルンベルギア、ニクトサウルス、プテラノドン

非鳥類型恐竜

ニオブララ累層は海岸から遠く離れた海域ですが、陸から流れてきたと考えられる非鳥類型恐竜の化石も発見されています。これらの化石は、潮汐や洪水によって海に運ばれ、体内のガスで浮力を得て沖に運ばれたと考えられています。ハドロサウルス類の尾椎にはサメによる噛み跡が見つかっており、サメが恐竜の死体を捕食していた証拠となっています。ニオブララ累層で見つかる恐竜化石の多くはノドサウルス科のもので、角竜や鳥類以外の獣脚類の化石は見つかっていません。

クラオサウルス、未同定のハドロサウルス科恐竜、ニオブララサウルス、ヒエロサウルス

鳥類

ニオブララ累層からは3属の鳥類の化石も発見されています。これらの鳥類は現生鳥類を含むクレードの外側に位置しており、まだ歯を持っていました。バプトルニスとヘスペロルニスは水中に潜る海鳥であり、イクチオルニスは現代のカモメに似た生態的地位にいたと考えられています。これらの鳥類は、シファクティヌス、サメ、モササウルス類などの捕食者によって捕食されていました。

バプトルニス、ヘスペロルニス、イクチオルニス

資源

ニオブララ累層は、商業用の炭化水素が豊富に含まれています。東部のデンバー盆地からは天然ガス、ノースパーク盆地からは石油が産出されています。新しい破砕技術により、広い範囲での石油資源開発が可能になっています。

参考文献

AAPG Datapages: "Stratigraphy of the Upper Carlile Shale and Lower Niobrara Formation (Upper Cretaceous), Fremont and Pueblo Counties, Colorado"
Bennett, S. C. 2000. Inferring Stratigraphic Position of Fossil Vertebrates from the Niobrara Chalk of Western Kansas. College of Chiropractic, University of Bridgeport, Bridgeport, CT 06601-2449.
* Discovery-group.com; "Niobrara and Greenhorn Formations, Geological and Petrophysical Database for DJ and Raton Basins"

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