ニューヨーク市立大学シティ・カレッジ
ニューヨーク市立大学シティカレッジ（The City College of the City University of New York、略称：CCNY、City）は、アメリカ合衆国ニューヨーク州ニューヨーク市マンハッタン区ハーレム地区にキャンパスを構える公立大学です。ニューヨーク市立大学（CUNY）システムを構成する主要な四年制大学の一つであり、その起源は1847年に創立されたフリーアカデミー（Free Academy of the City of New York）に遡る、米国でも有数の歴史を持つ公立高等教育機関です。
歴史
大学の前身であるフリーアカデミーは、当時のニューヨーク市教育局長であり、後に初代駐日公使として日米修好通商条約締結に尽力したタウンゼント・ハリスによって1847年に設立されました。これは、ニューヨーク市立大学システムの始まりとなる画期的な出来事でした。1866年には現在の「シティカレッジ」という名称に変更され、170年以上にわたる長い伝統を築き上げてきました。
特に19世紀後半から20世紀前半にかけて、この大学は重要な役割を果たしました。授業料が無償であったため、ヨーロッパでの迫害から逃れてきた聡明なユダヤ系移民の子弟が多く入学しました。彼らの学術的な功績が目覚ましく、当時のプロテスタント支配階級が中心だったアイビーリーグなどのトップ私立大学とは対照的に、労働者階級出身の学生が多く集まることから、ニューヨーク・タイムズ紙によって「プロレタリアのハーバード（“Harvard of the Proletariat”）」と称されるほどでした。この時期には、ユダヤ人学生による組織であるシグマ・アルファ・ミューも設立されています。
1930年代から1950年代にかけては、政治的な議論が活発に行われたことでも知られ、トロツキズムやスターリニズムに関する議論の場となり、ここから生まれた「ニューヨーク知識人」と呼ばれる思想家集団は、後のアメリカにおける新保守主義（ネオコン）に大きな影響を与えました。
現在、シティカレッジの学生構成はさらに多様化しており、ユダヤ系に加え、アフリカ系やラテン系のアメリカ人、東欧、アフリカ、アジアなど世界各地からの移民や留学生が学んでいます。創設者ハリスが掲げた「社会に開かれた大学」という建学の理念は、現代にもしっかりと受け継がれています。キャンパス内には、1969年に設立され「ハーレム大学（“Harlem University”）」の名を冠する学生自治会も活動しています。
シティカレッジは、その歴史の中で多くの著名な卒業生を輩出しており、特にノーベル賞受賞者は2014年時点で10人を数えます（ニューヨーク市立大学全体では13人）。ノーベル経済学賞を受賞したロバート・オーマン博士（2005年）や、生理学・医学賞のジュリアス・アクセルロッド博士（1970年）などが含まれます。
キャンパス
メインキャンパスは、マンハッタンの北西、ハーレム地区の高台に位置しており、セントニコラス公園に隣接しています。緑豊かなキャンパスの東側からはハーレムの街並みを望むことができます。当初は現在の場所とは異なるダウンタウンにありましたが、都市の発展に伴い1906年に現在の地（当時はマンハッタンビルという村）に移転しました。1907年に完成したネオ・ゴシック様式のシェパード・ホールを始め、1920年代のハーレム・ルネサンス期から変わらないアカデミックな雰囲気を保つ校舎群が現存しており、シェパード・ホールは尖塔が特徴的なキャンパスの象徴です。これらの歴史的建造物は、1980年代に市の記念建築物や国・州の歴史建築物に指定され、ハーレム地区の観光名所の一つとなっています。
キャンパス周辺は、デューク・エリントンの楽曲でも歌われたハーレムの高級住宅街であるシュガーヒルにも近く、地下鉄の最寄り駅「137th Street City College」からはコロンビア大学もわずか2駅の距離にあります。また、ダウンタウンには社会人向けのプログラムが行われるキャンパスや、ニューヨーク市立大学大学院センターも存在します。
学内には、ジャズや演劇などが上演されるニューヨーク市管轄のアーロン・デービス・ホールや、2006年に竣工した学生寮も整備されています。
組織と研究
シティカレッジは、人文科学・自然科学、教育学、工学、建築学、医学の5つの主要なスクールで構成されています。特にグローヴ工学部は、卒業生でありインテルの共同創業者であるアンドルー・グローヴ氏からの多額の寄付を受けてその名を冠しており、著名な卒業生が大学の発展に貢献している例です。
大学には、生医工学、水源環境調査、地震工学、燃料清掃、政策学（コリン・パウエル・センター）、ドミニカ学、フランス言語文化、社会人教育など、多岐にわたる研究センターや研究所が設置されています。注目すべきは、北学術センター内に設けられた日本文化資料室です。ここには、創設者タウンゼント・ハリスが日本滞在中に作成させたと言われる最初の日本製星条旗など、貴重な資料が展示・保存されており、ハリスと日本の関係を示す重要な場所となっています。資料室は一般公開されており、毎年春には日本の文化を紹介する「シティカレッジ桜祭り」が開催され、静岡県下田市との交流も続いています。
大衆文化における登場
シティカレッジとそのキャンパスは、様々な映画やテレビ番組、文学、音楽作品の舞台や言及の対象となっています。例えば、映画「ウォール街」、「カクテル」、「ザ・ロイヤル・テネンバウムズ」、「25時」、テレビシリーズ「ロー&オーダー」、作家アプトン・シンクレアやアレン・ギンズバーグの作品、ミュージシャンであるルー・リードの歌詞などに登場しています。
主な関係者
前述のノーベル賞受賞者に加えて、政界では元ニューヨーク市長のエイブラハム・ビームやエド・コッチ、元国務長官のヘンリー・キッシンジャー（他大学へ転校）やコリン・パウエル、実業界ではインテル共同創業者のアンドルー・グローヴなど、各分野でリーダーシップを発揮した人物を輩出しています。学術界からはポリオワクチンの開発者ジョナス・ソークや、TCP/IPプロトコルの共同開発者ロバート・カーンなどがいます。文化・芸術分野では、作詞家のアイラ・ガーシュウィン、俳優のイーライ・ウォラック、映画監督のスタンリー・キューブリック（中退）、写真家アルフレッド・スティーグリッツなど、幅広い才能を育んでいます。日本関連では、BENIHANA創業者の青木廣彰氏や、物理学者のミチオ・カク教授（現職）などがいます。また、過去には哲学者バートランド・ラッセル、数学者ジェス・ダグラス、作家ベル・フックスといった著名な学者も教鞭をとっていました。
その他
キャンパスの北正門近くには、アメリカ建国の父の一人であるアレクサンダー・ハミルトンの邸宅があり、歴史的な雰囲気を共有しています。キャンパス内の歴史的建造物の設計には、ボザール様式で知られる建築家ジョージ・B・ポストが携わっています。体育会チームは「CCNYビーバーズ」と呼ばれ、マスコットはビーバーです。
歴史
大学の前身であるフリーアカデミーは、当時のニューヨーク市教育局長であり、後に初代駐日公使として日米修好通商条約締結に尽力したタウンゼント・ハリスによって1847年に設立されました。これは、ニューヨーク市立大学システムの始まりとなる画期的な出来事でした。1866年には現在の「シティカレッジ」という名称に変更され、170年以上にわたる長い伝統を築き上げてきました。
特に19世紀後半から20世紀前半にかけて、この大学は重要な役割を果たしました。授業料が無償であったため、ヨーロッパでの迫害から逃れてきた聡明なユダヤ系移民の子弟が多く入学しました。彼らの学術的な功績が目覚ましく、当時のプロテスタント支配階級が中心だったアイビーリーグなどのトップ私立大学とは対照的に、労働者階級出身の学生が多く集まることから、ニューヨーク・タイムズ紙によって「プロレタリアのハーバード（“Harvard of the Proletariat”）」と称されるほどでした。この時期には、ユダヤ人学生による組織であるシグマ・アルファ・ミューも設立されています。
1930年代から1950年代にかけては、政治的な議論が活発に行われたことでも知られ、トロツキズムやスターリニズムに関する議論の場となり、ここから生まれた「ニューヨーク知識人」と呼ばれる思想家集団は、後のアメリカにおける新保守主義（ネオコン）に大きな影響を与えました。
現在、シティカレッジの学生構成はさらに多様化しており、ユダヤ系に加え、アフリカ系やラテン系のアメリカ人、東欧、アフリカ、アジアなど世界各地からの移民や留学生が学んでいます。創設者ハリスが掲げた「社会に開かれた大学」という建学の理念は、現代にもしっかりと受け継がれています。キャンパス内には、1969年に設立され「ハーレム大学（“Harlem University”）」の名を冠する学生自治会も活動しています。
シティカレッジは、その歴史の中で多くの著名な卒業生を輩出しており、特にノーベル賞受賞者は2014年時点で10人を数えます（ニューヨーク市立大学全体では13人）。ノーベル経済学賞を受賞したロバート・オーマン博士（2005年）や、生理学・医学賞のジュリアス・アクセルロッド博士（1970年）などが含まれます。
キャンパス
メインキャンパスは、マンハッタンの北西、ハーレム地区の高台に位置しており、セントニコラス公園に隣接しています。緑豊かなキャンパスの東側からはハーレムの街並みを望むことができます。当初は現在の場所とは異なるダウンタウンにありましたが、都市の発展に伴い1906年に現在の地（当時はマンハッタンビルという村）に移転しました。1907年に完成したネオ・ゴシック様式のシェパード・ホールを始め、1920年代のハーレム・ルネサンス期から変わらないアカデミックな雰囲気を保つ校舎群が現存しており、シェパード・ホールは尖塔が特徴的なキャンパスの象徴です。これらの歴史的建造物は、1980年代に市の記念建築物や国・州の歴史建築物に指定され、ハーレム地区の観光名所の一つとなっています。
キャンパス周辺は、デューク・エリントンの楽曲でも歌われたハーレムの高級住宅街であるシュガーヒルにも近く、地下鉄の最寄り駅「137th Street City College」からはコロンビア大学もわずか2駅の距離にあります。また、ダウンタウンには社会人向けのプログラムが行われるキャンパスや、ニューヨーク市立大学大学院センターも存在します。
学内には、ジャズや演劇などが上演されるニューヨーク市管轄のアーロン・デービス・ホールや、2006年に竣工した学生寮も整備されています。
組織と研究
シティカレッジは、人文科学・自然科学、教育学、工学、建築学、医学の5つの主要なスクールで構成されています。特にグローヴ工学部は、卒業生でありインテルの共同創業者であるアンドルー・グローヴ氏からの多額の寄付を受けてその名を冠しており、著名な卒業生が大学の発展に貢献している例です。
大学には、生医工学、水源環境調査、地震工学、燃料清掃、政策学（コリン・パウエル・センター）、ドミニカ学、フランス言語文化、社会人教育など、多岐にわたる研究センターや研究所が設置されています。注目すべきは、北学術センター内に設けられた日本文化資料室です。ここには、創設者タウンゼント・ハリスが日本滞在中に作成させたと言われる最初の日本製星条旗など、貴重な資料が展示・保存されており、ハリスと日本の関係を示す重要な場所となっています。資料室は一般公開されており、毎年春には日本の文化を紹介する「シティカレッジ桜祭り」が開催され、静岡県下田市との交流も続いています。
大衆文化における登場
シティカレッジとそのキャンパスは、様々な映画やテレビ番組、文学、音楽作品の舞台や言及の対象となっています。例えば、映画「ウォール街」、「カクテル」、「ザ・ロイヤル・テネンバウムズ」、「25時」、テレビシリーズ「ロー&オーダー」、作家アプトン・シンクレアやアレン・ギンズバーグの作品、ミュージシャンであるルー・リードの歌詞などに登場しています。
主な関係者
前述のノーベル賞受賞者に加えて、政界では元ニューヨーク市長のエイブラハム・ビームやエド・コッチ、元国務長官のヘンリー・キッシンジャー（他大学へ転校）やコリン・パウエル、実業界ではインテル共同創業者のアンドルー・グローヴなど、各分野でリーダーシップを発揮した人物を輩出しています。学術界からはポリオワクチンの開発者ジョナス・ソークや、TCP/IPプロトコルの共同開発者ロバート・カーンなどがいます。文化・芸術分野では、作詞家のアイラ・ガーシュウィン、俳優のイーライ・ウォラック、映画監督のスタンリー・キューブリック（中退）、写真家アルフレッド・スティーグリッツなど、幅広い才能を育んでいます。日本関連では、BENIHANA創業者の青木廣彰氏や、物理学者のミチオ・カク教授（現職）などがいます。また、過去には哲学者バートランド・ラッセル、数学者ジェス・ダグラス、作家ベル・フックスといった著名な学者も教鞭をとっていました。
その他
キャンパスの北正門近くには、アメリカ建国の父の一人であるアレクサンダー・ハミルトンの邸宅があり、歴史的な雰囲気を共有しています。キャンパス内の歴史的建造物の設計には、ボザール様式で知られる建築家ジョージ・B・ポストが携わっています。体育会チームは「CCNYビーバーズ」と呼ばれ、マスコットはビーバーです。
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