マット・ボーン

マット・ボーン：道化師の仮面の下に隠された波乱万丈なプロレス人生

マット・ボーン（本名：マシュー・ウェイド・オズボーン、1957年7月27日 - 2013年6月28日）は、アメリカ合衆国ペンシルベニア州エルウッド・シティ出身のプロレスラーです。父は"タフ"トニー・ボーン。日本では「ゴリラ男」の異名で知られています。マット・ボーンは、特にWWEで初代ドインク・ザ・クラウンを演じたことで、世界中のプロレスファンに記憶されています。

プロレスラーとしてのキャリア

1978年、父トニー・ボーンも主戦場としていたパシフィック・ノースウエスト・レスリング（PNW）でデビュー。ロディ・パイパー、ヘクター・ゲレロ、ダッチ・サベージ、アドリアン・アドニス、リック・マーテル、ロン・バスらと対戦しキャリアを積みました。

1980年からはノースカロライナのジム・クロケット・プロモーションズに参戦。同年6月2日にはバズ・ソイヤーとのタッグでNWAミッドアトランティック・タッグ王座を獲得しました。
その後PNWに戻り、1981年4月29日にNWAパシフィック・ノースウエスト・ヘビー級王座を獲得。1982年からは"マニアック"マット・ボーン（"Maniac" Matt Borne）を名乗りヒールに転向。リップ・オリバーをパートナーに、ロッキー・ジョンソン&キング・パーソンズやラリー・ヘニング&カート・ヘニングとタッグ王座を争いました。

アメリカ南部を転戦し、ビル・ワットが主宰するMSWAでは、テッド・デビアスやジム・ドゥガンとラット・パック（The Rat Pack）なるユニットを結成。1982年10月27日にはテッド・デビアスとのコンビで、ジャンクヤード・ドッグ&ミスター・オリンピアからミッドサウス・タッグ王座を奪取しました。

1983年にはアーン・アンダーソンと新チーム、デストラクション・インク（Destruction Inc.）を結成。ジョージア・チャンピオンシップ・レスリングで活動しました。

1985年、ヒールのジョバーとしてWWFに登場。3月31日にMSGで開催された『レッスルマニア』の第1回大会にも出場し、リッキー・スティムボートの対戦相手を務めました。4月22日のMSG定期戦では、日本から遠征してきた藤波辰巳とも対戦。6月には新日本プロレスに初来日。ブルーザー・ブロディのパートナーにも起用され、アントニオ猪木ともタッグマッチで対戦しました。以降も中堅外国人のポジションで1980年代末まで新日本プロレスに度々来日しました。

1986年からはテキサス州ダラスのWCWA（旧WCCW）に参戦。9月1日には旧友バズ・ソイヤーとのコンビで、クリス・アダムス&ランス・フォン・エリックをトーナメントの決勝で破り、WCWA世界タッグ王座の初代チャンピオン・チームとなりました。WCWAがテネシー州メンフィスのCWAと合併して1989年よりUSWAが発足すると、後継タイトルのUSWA世界タッグ王座にもジェフ・ジャレットと組んで戴冠。シングルでは、USWAの認定王座となったテキサス・ヘビー級王座を1990年5月25日にケリー・フォン・エリックから奪取しました。

1991年には、ビッグ・ジョッシュ（Big Josh）なるランバージャック・ギミックのベビーフェイスとしてWCWに登場。同年8月5日には、ダスティン・ローデス&トム・ジンクとのトリオでファビュラス・フリーバーズ（マイケル・ヘイズ、ジミー・ガービン、バッドストリート）を破りWCW世界6人タッグ王座を獲得。1992年1月14日にはロン・シモンズと組んでUSタッグ王座にも戴冠しましたが、WCWでは目立った活躍をすることはできませんでした。

ドインク・ザ・クラウン

1992年末にWWFと再契約。翌1993年1月より、ピエロの扮装とフェイスペイントを施したヒール、ドインク・ザ・クラウン（Doink the Clown）に変身。「マンデー・ナイト・ロウ」に出現。登場当初はリングサイドや花道に現れて観客を相手に悪ふざけをするだけでしたが、次第にベビーフェイスの試合に干渉するようになり、子供に人気のあったクラッシュとの抗争が始まりました。

4月4日の『レッスルマニアIX』では、2人目のドインクに扮したスティーブ・カーンの介入でクラッシュから勝利。ジェリー・ローラーとも共闘し、8月30日の『サマースラム1993』では当時ローラーと抗争していたブレット・ハートと対戦。この試合での敗戦によりローラーと仲間割れしてベビーフェイスに転向するも、薬物（コカイン）の乱用が発覚し、1993年末にWWFを解雇されました。

1994年にはECWに参戦。WWF時代と同様にドインクのリングネームとギミックを用いて数試合を行った後、シェーン・ダグラスと結託し、"マニアック"マット・ボーンへの回帰とキリスト教の「新生」とのダブル・ミーニングであるボーン・アゲイン（Borne Again）に改名。コスチュームは変わらないものの、フェイス・ペイントは右眼の周囲だけに施して素顔を表し、サイコパス系のヒールに転じましたが短期間で離脱しています。

以降はリングネームをマット・ボーンに戻してインディー団体を転戦。1996年11月にはドインク・ザ・クラウンとしてWARに来日し、後楽園ホールにて怨霊とのペイントレスラー対決を行いました。

セミリタイア後は、2005年8月27日、地元のペンシルベニアで開催されたリユニオン・イベント"WrestleReunion"にオリジナル・イーヴィル・クラウン（The Original Evil Clown）を名乗って登場。スティーブ・コリノ、アンドリュー "テスト" マーチン、マスクド・スーパースターと組み、ダスティ・ローデス、トム・プリチャード、ディーロ・ブラウン、ブルー・ミーニーとの8人タッグマッチに出場しました。晩年もインディー団体にてドインクのギミックを復活させ、2010年5月8日にはラット・パック時代の盟友ジム・ドゥガンとのレジェンド対決がニューヨークのPWS（Pro Wrestling Syndicate）にて行われました。

2013年6月28日、テキサス州プラノの愛人宅にて遺体で発見されました（死因は不明）。55歳没。

晩年と死

波乱万丈なプロレスラー人生を送ったマット・ボーンは、2013年6月28日、テキサス州プラノの自宅で55歳で亡くなりました。死因は明らかにされていません。

道化師の仮面の下に隠された彼の苦悩や葛藤は、今もなお多くのプロレスファンの間で語り継がれています。

得意技

Stump Puller （スタンディング式変形リバース・ボストン・クラブ）
Whoopie Cushion （トップロープからのダイビング・ヒップドロップ）
ジャーマン・スープレックス
ベリー・トゥ・ベリー・スープレックス
DDT
V1アームロック

獲得タイトル

NWAミッドアトランティック・タッグ王座：1回（w / バズ・ソイヤー）
NWAパシフィック・ノースウエスト・ヘビー級王座：1回
NWAパシフィック・ノースウエスト・タッグ王座：4回（w / スティーブ・リーガル×2、リップ・オリバー×2）
ミッドサウス・タッグ王座：1回（w / テッド・デビアス）
WCWA世界タッグ王座：2回（w / バズ・ソイヤー、ジェフ・ジャレット）
USWA世界タッグ王座：2回（w / ジェフ・ジャレット）
テキサス・ヘビー級王座：2回
WCW世界6人タッグ王座：1回（w / ダスティン・ローデス&トム・ジンク）
* WCW USタッグ王座：1回（w / ロン・シモンズ）

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