ジャンクヤード・ドッグ

ザ・ジャンクヤード・ドッグ：伝説のブルファイター

ザ・ジャンクヤード・ドッグ（JYD）、本名シルベスター・リッターは、1952年12月13日生まれのアメリカ合衆国出身のプロレスラーです。ノースカロライナ州出身のアフリカ系アメリカ人で、1980年代にWWFを中心に活躍しました。愛称は「JYD」。子供たちにも大人気で、陽気なキャラクターとパワフルなファイトスタイルで多くのファンを魅了しました。

華麗なるキャリア：アメリカンフットボールからプロレスラーへ

JYDは、ファイエットビル州立大学でアメリカンフットボールの選手として活躍し、オールアメリカンに2度も選出されるほどの才能の持ち主でした。卒業後はNFLのグリーンベイ・パッカーズからドラフト指名を受けますが、トレーニングキャンプで膝を負傷。プロレスラーへの転身を決意します。

黒人レスラーのソニー・キングに師事し、1977年にテネシーのNWAミッドアメリカ地区でプロレスラーデビュー。当初は「リロイ・ロチェスター」のリングネームでヒールとして活動していました。その後、カナダのカルガリーに活躍の場を移し、「ビッグ・ダディ・リッター」と改名。1979年には国際プロレスに初来日し、大木金太郎を彷彿とさせる一本足頭突きを武器に、日本のファンを熱狂させました。

カルガリーでは、ジェイク・ロバーツらを破り、北米ヘビー級王座を2度獲得するなど、大きな成功を収めます。ダイナマイト・キッドとのタッグチームも人気を博しました。

JYDの誕生と南部マットでの活躍

1980年、ビル・ワットが主宰するMSWA（ミッドサウス・レスリング・アソシエーション）に所属。ここで、ワットのアイデアにより「ジャンクヤード・ドッグ（JYD）」というリングネームと、ブルーカラーを意識したキャラクターを与えられます。鎖つきの首輪を装着して登場するJYDは、観客から犬の吠え声で迎えられ、異色のベビーフェイスとして人気を確立しました。

アーニー・ラッド、ファビュラス・フリーバーズ、ブル・ラモス、ザ・グレート・カブキなど、多くの強豪レスラーと激闘を繰り広げ、数々のタイトルを獲得。南部マットを代表する黒人レスラーとして、その名を轟かせました。

WWFでの活躍と伝説のレッスルマニアIII

1984年、WWFと契約。ハルク・ホーガンと盟友関係を築き、グレッグ・バレンタイン、アドリアン・アドニス、テリー・ファンクといったヒールレスラーたちと抗争を展開。メキシコ系のティト・サンタナや東洋系のリッキー・スティムボートとのタッグチームも人気を博しました。

1985年の『ザ・レスリング・クラシック』ではワンナイト・トーナメントを制覇。1987年には、ハーリー・レイスとの「キング対ドッグ」の抗争が『レッスルマニアIII』で頂点を迎え、9万3173人の大観衆を沸かせました。

WCW、USWAを経て

1988年末にWWFを離れ、WCWに移籍。リック・フレアーのNWA世界ヘビー級王座にも挑戦。その後、USWAにも参戦し、1992年にはUSWA統一世界ヘビー級王座を獲得。各地のインディー団体にもゲストとして出演しました。

悲劇の死と不死身の伝説

1998年6月2日、交通事故により45歳で急逝。その功績を称え、2004年にWWE殿堂入りを果たしました。インダクターを務めたのは、かつてMSWAで黒人レスラー同士の抗争を繰り広げたアーニー・ラッド。殿堂入りセレモニーには娘のラトーヤ・リッターが出席し、『レッスルマニアXX』でも紹介された際、観客からJYD時代と同じく犬の吠え声が沸き起こりました。

得意技と獲得タイトル

JYDの得意技は、ドッグバット、ヘッドバット、パワースラムなど。ラフでパワフルなファイトスタイルで知られ、キングコング・バンディなどの巨漢レスラーをボディスラムで投げ飛ばすこともありました。「ゲットー・ストリート・ファイト」や「ドッグ・カラー・マッチ」など、現在のハードコア・レスリングに通じる荒っぽい試合にも定評がありました。

獲得タイトルは、NWAミッドアメリカ、スタンピード・レスリング、MSWA、WCW、USWA、そしてWWE殿堂など、数々の輝かしい功績を残しました。

ザ・ジャンクヤード・ドッグは、その類まれな才能とカリスマ性でプロレス界に不滅の足跡を残した、まさに伝説のレスラーと言えるでしょう。

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