リチャード3世 (イングランド王)

リチャード3世：波乱の生涯と謎に包まれた最期

リチャード3世（1452年10月2日 - 1485年8月22日）は、イングランドのヨーク朝最後の国王です。彼は、その短い治世の中で、数々の陰謀と策略、そして悲劇に見舞われました。ボズワースの戦いで戦死した最後のイングランド王であり、彼の死は薔薇戦争の終結を意味しました。

生い立ちと権力への道

リチャードは、ヨーク公リチャード・プランタジネットの八男として生まれました。幼少期に父を亡くし、兄エドワード（後のエドワード4世）や母方の従兄であるウォリック伯リチャード・ネヴィルの庇護のもとで育ちました。ウォリック伯の元で騎士としての訓練を受け、1461年に兄エドワードが王位に就くと、グロスター公に叙せられました。

政権内の争いの中で、リチャードは常にエドワード4世に忠誠を誓い、1470年にウォリック伯がランカスター派に寝返った際も、兄を支え続けました。1472年には、ウォリック伯の娘アン・ネヴィルと結婚し、さらに兄クラレンス公ジョージが処刑された後、広大なウォリック伯領を相続し、実力者としての地位を確立しました。

王位簒奪と謎の死

エドワード4世の死後、リチャードは甥のエドワード5世の摂政（護国卿）に就任します。しかし、まもなく王妃エリザベス・ウッドヴィル一派を粛清し、エドワード5世とその弟をロンドン塔に幽閉しました。この二人の王子は消息不明となり、殺害されたとされています。

1483年6月、リチャードは議会によって王位に推挙され、イングランド王リチャード3世として即位します。彼の治世は不安定で、バッキンガム公ヘンリー・スタッフォードの反乱を鎮圧する一方で、政情は安定しませんでした。1484年には息子エドワード・オブ・ミドルハムが夭折し、翌年には王妃アン・ネヴィルも病死します。

ボズワースの戦いと最期

1485年8月、リッチモンド伯ヘンリー・テューダー（後のヘンリー7世）が侵入し、ボズワースの戦いでリチャード3世は戦死しました。彼は味方の裏切りに遭いながらも、勇敢に戦いましたが、力尽きました。遺体は戦場で晒され、後に埋葬されました。

死後の評価と遺骨の発見

リチャード3世は、ウィリアム・シェイクスピアの戯曲『リチャード三世』で悪役として描かれ、後世にその悪名が伝わりました。しかし、近年ではテューダー朝による悪評を覆し、名誉回復を求める動きも出ています。

2012年、リチャード3世の遺骨がレスターの駐車場から発見されました。遺骨の分析から、彼が戦闘で受けた傷や脊柱側弯症を患っていたことが判明しました。また、DNA鑑定によって、遺骨がリチャード3世のものであることが確認されました。

2015年、遺骨はレスター大聖堂に再埋葬され、その際、多くの人々が彼を見送りました。この遺骨の発見は、歴史の新たな解釈や研究を促すきっかけとなりました。

リチャード3世の人物像

リチャード3世は、その生涯を通して権力と陰謀、そして悲劇に翻弄された人物です。彼は、騎士としての武勇を持ちながら、政治的な策略にも長けていました。その評価は、時代や視点によって大きく異なりますが、彼の人生は、イングランドの歴史における重要な一部として、今もなお語り継がれています。

関連作品

シェイクスピアの史劇『リチャード三世』
ジョセフィン・テイの小説『時の娘』
森川久美の漫画『天の戴冠』
菅野文の漫画『薔薇王の葬列』
映画『ロスト・キング 500年越しの運命』
テレビドラマ『ホワイト・クイーン 白薔薇の女王』

脚注

リチャード3世は、戦死した最後のイングランド王であり、その死は薔薇戦争の終結を意味しました。
彼の遺骨が発見されたことで、歴史の新たな解釈や研究が進んでいます。
リチャード3世の人物像は、シェイクスピアの戯曲や歴史的な記録によって、様々に描かれています。

関連項目

ハンプティ・ダンプティ
* リカーディアン

もう一度検索