中央観閲式

中央観閲式

中央観閲式は、陸上自衛隊が原則として3年に一度、埼玉県南部の朝霞訓練場で実施する観閲式の通称です。自衛隊の創設を記念する自衛隊記念日行事の一環として行われ、陸上自衛隊では「自衛隊記念日観閲式」と呼称しています。

目的

陸上自衛隊は、観閲式の開催目的を「自衛隊の最高指揮官である内閣総理大臣（観閲官）の観閲を受けることにより、隊員の使命の自覚及び士気の高揚を図るとともに、防衛力の主力を展示し、自衛隊に対する国民の理解と信頼を深める」こととしています。

歴史

観閲式の歴史は、警察予備隊が発足した翌年の1951年に、東京都江東区の越中島駐屯地で初めて行われたことに始まります。

1952年に保安隊が発足し、1953年には第一回保安隊創立記念観閲式が実施されました。1954年に自衛隊が発足すると、1955年には防衛庁創立一周年記念式典が行われ、1972年まで神宮外苑絵画館前で開催されました。

1973年からは、交通事情などの理由により、現在の朝霞訓練場（朝霞[[駐屯地]]に隣接）に会場を移し、大規模災害が発生した年度や昭和天皇の体調不良により中止された1988年を除いて、ほぼ毎年開催されました。

1996年以降は、アメリカ同時多発テロ事件の影響で中止された2001年を除き、陸上自衛隊・海上自衛隊・航空自衛隊が持ち回りで実施しています。陸上自衛隊が担当するものが中央観閲式、海上自衛隊担当は自衛隊観艦式、航空自衛隊担当は航空観閲式と呼ばれ、回次はそれらの通算です。

2001年のテロ事件による中止の影響で、2004年まで6年間の間隔が生じました。以降、陸上自衛隊担当年度の前年には、東部方面隊が主力となり、同じ会場で「東部方面隊創立記念行事観閲式」が行われています。東部方面隊以外の各方面隊も、「方面隊創隊記念」として独自に観閲式や観閲行進を実施しています。

2018年度は、本来は自衛隊観艦式の実施予定でしたが、朝霞訓練場が2020年東京オリンピックの射撃競技会場となるため、2019年度に実施予定だった中央観閲式を前倒しして実施しました。

2021年度は、新型コロナウイルス感染症の流行により、朝霞訓練場ではなく朝霞[[駐屯地]]構内にて、同駐屯地所属部隊のみが参加する形で、一般公開を伴わずに実施されました。

2024年11月9日には、防衛省・自衛隊70周年記念観閲式が朝霞訓練場で行われる予定ですが、準備にかかる部隊の負担軽減のため、無観客で開催されることが発表されています。

主要出席者

観閲式には、以下の主要な関係者が出席します。

観閲官: 内閣総理大臣
主催者: 防衛大臣
実施責任者: 陸上幕僚長
執行者: 陸上総隊司令官
観閲部隊指揮官: 第1師団長
観閲飛行部隊指揮官: 第1ヘリコプター団長

その他、防衛大臣政務官、参議院議長、統合幕僚長（代行：統合幕僚副長）、海上幕僚長、航空幕僚長なども出席します。

参加部隊

参加部隊は年度によって異なりますが、2018年の中央観閲式を例に挙げると、以下のような部隊が参加しました。

特別儀仗

東部方面警務隊第302保安警務中隊

空挺降下展示

ヘリコプター：北部方面航空隊 北部方面ヘリコプター隊第2飛行隊 UH-1J
隊員：第1空挺団 本部中隊員 3名（自由降下落下傘 MC-4使用）

徒歩部隊

観閲部隊指揮官（第1師団司令部）
陸海空合同音楽隊
観閲部隊指揮官及び幕僚
部隊用国旗（旗手・旗衛手）
防衛大学校学生隊
防衛医科大学校学生隊
陸上自衛隊高等工科学校生徒隊
普通科部隊第1梯隊：通常装備（第1普通科連隊）
普通科部隊第2梯隊：対ゲリラ・コマンド対処装備（第32普通科連隊）
空挺部隊（第1空挺団特科大隊）
海上自衛隊部隊（海上自衛隊第3術科学校）
航空自衛隊部隊（航空教育隊第2教育群）
女性自衛官部隊

航空部隊

陸上自衛隊編隊群
第1編隊：指揮編隊（CH-47×3）
第2編隊：OH-6×3
第3編隊：AH-1S×5
第4編隊：UH-1×3
第5編隊：UH-60×5
第6編隊：CH-47×5
第7編隊：LR-2×2
海上自衛隊編隊
US-2
P-3C
P-1
航空自衛隊編隊
第1編隊：C-2×2
第2編隊：F-2×3
第3編隊：F-15×3
第4編隊：F-35A×2

車両部隊

国際平和協力活動派遣部隊（中央即応連隊）
即応予備自衛官部隊（東部方面混成団 第48普通科連隊）
予備自衛官部隊
陸上戦力を基幹とする横断的統合作戦の部隊
情報科部隊（東部方面情報処理隊）
航空自衛隊ペトリオット部隊（第1高射群 第3高射隊）
高射特科部隊（第1高射特科大隊）
地対艦ミサイル部隊（富士教導団 特科教導隊）
電子戦部隊（東部方面通信群 第304中枢交換通信中隊）
迅速に一次展開する部隊
偵察部隊（第1偵察隊）
水陸機動部隊（水陸機動団 第1水陸機動連隊）
即応機動連隊（第8師団 第42即応機動連隊）
事態の推移にあわせ二次展開する部隊
普通科車両部隊（東部方面混成団 第31普通科連隊）
施設科部隊（第1施設大隊）
通信科部隊（第1通信大隊）
化学科部隊（第1特殊武器防護隊）
衛生科部隊（第1後方支援連隊 衛生隊）
需品科部隊（第1後方支援連隊 補給隊）
野戦特科部隊（第1特科隊）
戦車部隊（第1戦車大隊）
米軍祝賀部隊
MV-22オスプレイ×2
米軍と陸上自衛隊の合同祝賀車両行進
米海兵隊 AAV7×5
陸上自衛隊 AAV7×5

2018年の変更点

2018年の中央観閲式では、以下の点が変更されました。

執行者が東部方面総監から陸上総隊司令官に変更。
観閲部隊指揮官の搭乗車両が82式指揮通信車から1/2tトラックに変更。
陸上自衛隊制服が16式常装（新制服）・新儀仗服で実施。
観閲飛行で航空機の役割を解説し、女性搭乗員を紹介。
車両行進曲が「祝典ギャロップ」から「陽光を背に」に変更。
車両行進が職種別から機能別に変更。
水陸機動部隊、即応機動連隊が新編。
予備自衛官部隊が「軽普通科連隊」として編成。
F-35A、P-1、C-2、16式機動戦闘車、AAV7が初参加。
訓練展示（F-35A、AAV-7）を実施。
ブルーインパルスの展示飛行は未実施。
予行等における住民招待は未実施。
公式配信映像で部隊指揮官・パイロットの顔写真などを掲載。

備考

観閲式には、自衛隊関係者、外国武官、周辺自治体住民などが招待されていました。以前は総合予行が一般公募されていましたが、2018年以降は実施されていません。

車両部隊の所属表記や部隊マークは消されています。また、テロ対策のため、会場内への飲食物の持ち込みは制限されています。

2010年以降は、Ustreamを通じて生中継映像の公式ライブ配信が行われています。

2010年には、日米安全保障条約改定50周年を記念して、米陸軍・空軍による観閲飛行が行われました。

2016年には、行事後に展示飛行が行われました。

車両行進曲「陽光を背に」

2018年からは、岩渕陽介三等陸曹が作曲した「陽光を背に」が車両行進曲として使用されています。この曲は、自衛隊の覚悟と即応機動する陸上防衛力を表現したものです。

関連項目

観兵式

外部リンク

* 防衛省・自衛隊

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