亥鼻城

亥鼻城（いのはなじょう）とは

亥鼻城は、現在の千葉県千葉市中央区亥鼻にあった日本の城（平山城）です。別名、千葉城とも呼ばれています。亥鼻城跡周辺は、現在、亥鼻公園（歴史公園）として整備されており、土塁や堀切などの遺構が残っています。これらの遺構は、市の文化財に指定されています。

概要

猪鼻山は、北を都川、西を断崖に囲まれた天然の要害に位置する平山城です。平安時代の1126年（大治元年）に、千葉常胤の父である千葉常重が、上総国大椎城から拠点を移し、この地に居館を構えたとされています。以来、1455年（康正元年）に千葉胤直が原胤房に追われるまでの約330年間、千葉氏13代の本拠地として、この地は両総に覇を唱えた千葉氏の拠点となりました。亥鼻城は、千葉市の指定文化財（史跡）となっています。

しかし、近年の発掘調査では、鎌倉時代の千葉氏の館の痕跡は確認されていません。そのため、現在残っている土塁や空堀の特徴から、この城は戦国時代に築かれた可能性が高いと推測されています。1516年（永正13年）には、原胤隆の子である範覚の時代に、三上氏の攻撃を受けています。この時、原蔵人が討ち死にしているので、亥鼻城は原氏によって築城・維持されたという説もあります。

江戸時代に入ると、1861年（文久元年）には千葉八景の一つ「猪鼻山の望月」として選定され、古くから名所として親しまれていました。1909年（明治42年）以降、城跡は公園として開放され、1959年（昭和34年）には歴史公園「亥鼻公園」として整備されました。1967年（昭和42年）には、亥鼻山の中腹に千葉市立郷土博物館（模擬天守）といのはな亭（茶室及び庭園）が建設されました。

城域については、亥鼻公園（主郭）から千葉大学亥鼻キャンパス（外郭）を含む広大な範囲とする見解もありましたが、医学部構内での発掘調査の結果、七天王塚は古墳であることが判明し、中世の遺構もほとんど見つからなかったことから、城域は亥鼻公園周辺に限定される可能性が高くなっています。現在では、地名を取って「亥鼻城跡」と呼ばれています。主郭の先端には、かつての物見台跡とされる神明社があります。二の郭跡には、郷土博物館と千葉常胤の像が建てられています。

歴史

中世の千葉城に関する記述は、『相馬文書』にみられます。1335年（建武2年）に、千葉氏の内紛の際、千葉胤貞方が「千葉城」や「千葉楯」を攻撃したという記録があります。ただし、亥鼻城のような台地上の城郭が築かれるようになったのは15世紀以降であるため、この記述は低地にあった館が、戦闘時に楯などで防御を固めたものだと考えられています。

また、千葉氏の妙見信仰について書かれた『千学集抄』には、千葉氏の館の場所が「堀内」と記されています。近年では、千葉市街の低地に千葉館があったとする説が有力視されています。亥鼻城跡からは、鎌倉時代の蔵骨器が発掘されていますが、生活感のある出土品は少ないため、この地は千葉氏の時代には墓地として利用され、後に城郭化されたという説も提唱されています。

亥鼻の古城が千葉氏の城であるという記述が現れるのは、江戸時代になってからのことです。1858年（安政5年）に作成された『成田名所図会』には、千葉常胤に関する記述と共に「千葉氏古城址の図」が掲載されており、中央に亥鼻山が描かれています。また、近現代においても、亥鼻山を古城跡とした絵葉書が複数作成されています。1926年（昭和元年）には、亥鼻城跡に千葉開府800年記念碑が、1976年（昭和51年）には千葉開府850年記念碑が建立されています。

沿革

千葉氏は、桓武平氏の平忠常の子孫であり、千葉常胤の代に千葉氏を名乗るようになりました。常胤は、上総広常とともに源頼朝を助け、鎌倉幕府の樹立に尽力しました。しかし、広常が謀反の疑いで頼朝に誅殺されると、常胤は房総平氏の惣領として全盛期を迎えます。室町時代に入ると、鎌倉公方と古河公方が対立し、関東に騒乱が起こると、千葉氏も内紛に見舞われます。1455年（康正元年）には、千葉氏14代の千葉胤直が、一族の千葉康胤（馬加康胤）と原胤房によって亥鼻城を急襲され、千田庄（現在の千葉県香取郡多古町付近）へと追いやられます。その後、出家していた康胤もこれに加わり、千田庄の多古城・志摩城に立て籠る胤直父子や、援軍に駆けつけた大掾頼幹を攻め滅ぼしました。『日本城郭大系』によると、1457年（長禄元年）に康胤が宗家の名跡を継ぎ、その子の千葉輔胤は本拠を本佐倉城に移したとされています。

その後、1861年（文久元年）には「猪鼻山の望月」が千葉八景に選ばれ、城跡は1909年（明治42年）以降公園として開放されました。1959年（昭和34年）には亥鼻公園として整備され、1967年（昭和42年）には千葉市立郷土博物館（模擬天守）といのはな亭（茶室及び庭園）が建設されました。

構造

亥鼻という名前は、突端の形状が猪の鼻に似ていること、または亥の方角を向いていることに由来すると言われています。突端部には、神明社と亥鼻城跡の碑があり、神明社のある郭は物見の跡と伝えられています。そこから郷土博物館の間には、ほぼ唯一の遺構として土塁が残っています。一説には、千葉大学医学部から中央博物館バス停付近までの広大な範囲が城域に含まれるとされていましたが、近年の発掘調査によって否定されています。中央博物館バス停付近には七天王塚があり、亥鼻城跡と共に市の文化財に指定されています。

城跡の北側の台地下には、「お茶の水」という井戸跡があります。この井戸の水で、千葉常胤がお茶を立て、源頼朝に献上したという伝説が残されています。城跡の東側の階段は、かつて池田坂と呼ばれ、城の搦手（裏門）にあたると言われています。

千葉市立郷土博物館

千葉市立郷土博物館は、千葉市中央区亥鼻にある博物館です。千葉市や千葉氏に関する常設展示のほか、企画展示も行っています。本館は中世城郭を模した模擬天守となっています。敷地面積は8,748.59平方メートル、建築面積は756.13平方メートル、建築延床面積は2,416.29平方メートル、展示延面積は1,230.86平方メートルです。

本館
1階：講義室、展示室、電気室、機械室（展示面積：376.24平方メートル）
2階：展示室、事務室（展示面積：360.38平方メートル）
3階：展示室、倉庫（展示面積：236.87平方メートル）
4階：展示室、倉庫（展示面積：157.14平方メートル）
5階：展望室（展示室）、倉庫（展示面積：100.23平方メートル）

本館玄関棟
1階：エントランスホール、受付
2階：事務室

収蔵庫棟
2階：エレベーター機械室
1階：第1収蔵庫、学芸室、荷解室
地下1階：第2収蔵庫、機械室
地下2階


沿革

1966年（昭和41年）3月24日：本館着工。
1967年（昭和42年）
3月31日：本館竣工。
4月9日：千葉市観光課の所管施設「千葉市郷土館」として開館。
1976年（昭和51年）7月：千葉市教育委員会社会教育課へ移管。
1979年（昭和54年）4月：千葉市文化課の設置に伴い、文化施設としての方向性が定められる。
1982年（昭和57年）6月24日：収蔵棟着工。
1983年（昭和58年）
3月31日：収蔵棟竣工。
4月：「千葉市立郷土博物館」と館名を改め、歴史・民俗系の博物館として再スタート。
2000年（平成12年）11月21日：耐震改修工事着工。
2001年（平成13年）12月：リニューアルオープン。
2007年（平成19年）
4月：千葉市文化課廃止。千葉市生涯学習振興課の所管となる。
7月31日：プラネタリウム投影および天文普及事業終了。
2009年（平成21年）10月：旧プラネタリウム室改修工事開始。
2010年（平成22年）4月：旧プラネタリウム室を4階近代・現代展示室としてリニューアルオープン。
2015年（平成27年）4月：千葉市文化財課の新設に伴い、千葉市文化財課の所管となる。
2024年（令和6年）9月30日：2026年の千葉開府900年に向けたリニューアル工事のため休館（2025年10月末までの予定）。

交通

公共交通機関
鉄道：千葉都市モノレール「県庁前駅」から徒歩約5分、JR東日本「本千葉駅」から徒歩約10分。
バス：京成バスおよびちばシティバスの各路線が利用可能。
自動車
高速道路：首都高速小松川線・京葉道路「松ヶ丘インターチェンジ」が最寄り。
駐車場：25台分の無料駐車場が利用可能。

参考文献

福田豊彦『千葉常胤』吉川弘文館、1973年。ISBN 978-4-642-05063-0

関連項目

日本の城一覧
亥鼻公園
大椎城
高品城
生実城
小弓城

外部リンク

千葉市立郷土博物館
* 千葉市立郷土博物館 (@chibashikyodo) - X（旧Twitter）

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